裏金議員を逮捕できない理由~法律の“抜け穴”。 | じろう丸の徒然日記

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私こと、じろう丸が、日常の出来事、思うことなどを、気まぐれに書き綴ります。

いささか今更の感があるが、例の自民党裏金問題についておさらいしてみよう。
資料は、月刊誌『紙の爆弾』2024年4月号に掲載された、ジャーナリスト・浅野健一さんの記事『郷原信郎弁護士が問う 自民党裏金事件 検察捜査の穴』

 
自民党主要5派閥(安倍派二階派など)は、しばしば資金集めのために、支持者が参加する政治資金パーティーを開催していたが、参加した議員には、パーティー券の販売ノルマが課せられていた。
議員たちは、ノルマを上回った分をピンハネ(中抜き)して自分の資金にした。さらに、派閥に納めた分でも余った資金は所属議員に還流(キックバック)させていた。

 
 それらの金は、収支報告書には記載されておらず、2022年11月「しんぶん赤旗日曜版」20万円を超えるパーティー券収入が不記載になっていることを報道、それを受けて、神戸学院大学上脇博之教授(憲法学)自民5派閥の代表会計責任者を告発、その捜査の過程で巨額の裏金問題が発覚したものである。
 
 (以下、浅野健一さんの記事から引用)
 自民党パーティー券裏金疑獄事件で、東京地検特捜部は1月19日、政治資金規正法違反(虚偽記載)で大野泰正参院議員を在宅起訴、谷川弥一衆院議員を略式起訴した。同時に両議員の各秘書と安倍派・二階派・岸田派の会計責任者6人を起訴。主要5派閥のうち3派閥で立件となった。
 
 続いて1月26日、池田佳隆衆院議員(1月7日逮捕、自民党除名)と政策秘書を起訴した。安倍派の裏金は約6億8千万円、不記載の総額は約13億5千万円となった(役職は当時)。
 
 一方、安倍派幹部の松野博一前官房長官、西村康稔前経産相、高木毅前党国対委員長、世耕弘成前党参院幹事長、萩生田光一前党政調会長、下村博文元文科相、塩屋立元文科相については、虚偽記載の共謀に問えないと判断して立件を見送り、1月26日に7人の不起訴処分を公表した。
(引用、終わり)
 
この問題では、昨年12月13日に、「検察庁法改正に反対する会」岩田薫早川芳夫両共同代表が、安倍派国会議員10人を告発していた。
だが、東京地検特捜部は、捜査が終わった1月19日に速達で告発状を返送してきた。そして同日、記者クラブに安倍派幹部らを立件しないと広報した。
これに怒った岩田さん早川さん浅野健一さん1月19日、新たに岸田首相ら3派閥の会長安倍派議員10人計14人所得税法違反(脱税)で特捜部に告発した。

 
だが東京地検1月26日に、安倍派幹部ら不起訴と広報した。
岩田さんら1月29日に、不起訴の安倍派7議員検察審査会に申し立てた。検審会不起訴不当の判断が2回なされ、強制起訴となれば、刑事責任を追及されるのだ。
すると2月6日に、第5東京検察審査会が、「1月29日に遡って受理した」と文書で連絡してきた。
一方、特捜部は、岩田さんらによる所得税法違反容疑での岸田ら議員14人の告発に対し、犯罪事実を証明する証拠を補うようにという通知を送ってきた。

 
 どうも東京地検特捜部は、自民党議員14人の逮捕に積極的ではないようだが‥‥。
 
2月13日浅野さんが主宰した学習会に講師として出席した元特捜検事郷原信郎弁護士は、裏金議員を逮捕できない理由を、次のように語った。
(以下、引用)
 私は広島・長崎地検時代、政治資金規正法を”武器”として使いました。02年には自民党長崎県連が1億8千万円のパー券売上から3千万円を裏金にしていたことを掴み、県議会会長を同法違反で略式起訴しています。
 
 しかし、政治資金規正法はザル法で”使えない武器”でもありました。政治家が作った法律だから、検察は自分たちがその“抜け穴”にはまらないように塞ぎながら捜査しなければならない。私はその経験から、同法の限界を知っています。その重大な欠陥は、著書『“歪んだ法”に壊される日本』(KADOKAWA)でも解説していますが、直接現金で受け取る「裏金」は、政治家個人宛のお金か、資金管理団体宛てかなどを明確にしないので、どの団体の政治資金収支報告書に記載すべきかが特定できない限り、刑事責任が問えないのです。
 
 派閥のパー券で、ノルマ超過分のお金が還流されても、この“大穴”のため立件が難しい。国会議員は二つ以上の財布、つまり政党支部や資金管理団体等を必ず持っているからです。
(引用、ここまで)
 
【ふてぶてしい裏金議員】

(人物素材:nakadakanさん https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=23770388&area=1
(背景:https://www.beiz.jp/からのフリー画像)
 
 もう少し郷原さんのお話を聞いてみよう。
(再び引用)
 もう少し詳しく説明すると、政治資金規正法は、「政治献金は浄財」という考え方がベースにあります。その上で、政治献金は腐敗に繋がるとして、寄附に量的・質的制限が設けられている。もっとも、政治献金が即、腐敗などではなく、法の健付けとしては、政治のために政治団体に寄附する浄財行為だから、誰からいつもらい、何に使ったのか報告せよというのがこの法律です。いずれかの収支報告書に書くべきところを書かなかったとか、ウソを書いたら不記載や虚偽記載となります。
 
 それゆえ、裏金を収支報告書に書かず、事務所に隠してあったとしても、政治家個人のところに留まるかぎり、資金管理団体などに書くべき義務が生じない。どの団体にも入らない(記載されない)から裏金なのに、もらったお金をそのまま持っていれば、政治資金規正法で処罰できないという、とんでもない大穴があいているのです。
(引用、ここまで)
 
 しかし、これに疑問を投げかける人もいる。立憲民主党小西洋之議員である。
(再び引用)
 しかし、そうじゃないと言ったのが小西洋之参院議員(立憲民主党)でした。収支報告書に書かないお金は、政治家個人に入っているではないか。だから、政治家個人は寄附を受けてはならないと定めた政治資金規正法21条に違反するはずだ。会計責任者が在宅起訴された「虚偽記載」は隠蔽工作にすぎず、政治家個人を違法寄附で処罰すべきとの主張を続けています。
 
 小西氏は総務官僚出身で、政治資金課にいた経験を持つだけに、法律的にはまったく正しい。政治家個人が政治資金の寄附を受けるのは違法です。
 
 ただし、その違法性を認定するためには「政治家個人宛の政治資金の寄附」だという証拠が必要です。政治家が「資金管理団体に記載するつもりで忘れていた」と言えば、個人で受け取ったことにならず違法にならないのです。でも、検察が「収支報告書に記載しない前提でもらった金だから個人宛の政治献金だ」と認めさせればいい。
 
 それでも、もう一つ問題があります。第21条違反は罰則が軽いということです。虚偽記載は禁錮5年以下、時効5年なのに対し、禁錮1年以下、違法寄附は自公が3年です。
(引用、終わり)
 
 かなり長い引用になってしまったが、上記の事情から郷原さんは、政治資金収支報告書だけを問題にすると政治家を処罰できないと指摘してきた。
関西のテレビ局は軒並みこの問題を採り上げてくれたが、在京の地上波まったく採り上げないという。
郷原さんは精力的にラジオネットテレビ、BS局に出演したり、昨年末には朝日新聞のインタビューを受けたりしたが、他の全国紙ほぼ書かない。

 
それというのも、検察が捜査において、この問題を無視しているからなのだ。
検察は最初から収支報告書の虚偽記入の事件にすることしか考えておらず、法律の大穴を無視して捜査してきたのである。
検察問題点がわからなかったのか、わからないふりをしたのか、どっちなのだろう。

 
上の引用文にもあるように、検察「収支報告書に記載しない前提でもらった金だから個人宛の政治献金だ」と、議員たちに認めさせれば、逮捕は可能なのだろう。
郷原さんによれば、検事は地方から応援が入り50人もいたそうな。だから、約100人の裏金議員に対して検事1人が2人に張り付き、議員の事務所に乗り込み、資料を出させ、その場で取調べをするなど徹底捜査して、議員秘書「個人宛の政治献金」だと認めさせるべきだった。

 
また、キックバックされた金パーティー券を売ったお駄賃なのだから、政治資金とはいえない。
したがって個人所得として修正申告させ、追徴税、重加算税をとるべきであると、郷原さんは言う。

 
そういえば私が郷原さんを初めて知ったのは、2021年11月に、衆議院議員泉田裕彦さん自民党、元新潟県知事)新潟県議(当時)星野伊佐夫から裏金を要求されたとき、この問題の調査を郷原さんに依頼したのがきっかけだった。
泉田さん星野刑事告発していたが、結局のところ、新潟地検昨年の5月24日星野不起訴処分にしてしまった。理由は明らかにしていない。
証拠の音声データまで公表されていたのに、どうも釈然としない。

 
裏金の受け渡し】

(人物素材:ゆんまママさん https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=WwSoZrPm&area=1
(背景素材:SHIMESABA0808さん https://www.photo-ac.com/profile/3651950
  
何はともあれ、こうなったら裏金議員を全員、6月の総選挙で退場させるしかないだろう。