うつ病性障害に対する「歩くこと」の重要性* | gcc01474のブログ

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うつ病性障害に対する「歩くこと」の重要性*


<抄録>
 うつ病性障害は最近、日本など先進諸国に著明に増加してきている疾患である。現代社会はストレスが多く、それ故に増加していると考えられている。しかし、過去にもストレスは多くあった。それは現代社会以上のストレスであったと思われる。原始社会は常に猛獣の出現を怖れなくてはならなかった。また毒ヘビも居た。原因不明の難病に対してしても神殿での祈祷が行われるだけであった。また、核家族化が進み、嫁姑の問題など明治・大正時代に比較するとかなり緩和されている。
 そして現代はクルマやバイクなどの普及・発達のため歩くことが極端に減って来ている。大正・明治、これらの時代にもストレスが強く有った。うつ病性障害の増加は人間が歩くことが少なくなった故と考える。

【key words】Depressive disorders,   Episodes,  Exersize,  Stress,   Walking

【始めに】
 現代社会でなく古代社会に於いてもストレスは多かったと思われる。常に野獣との抗争があった。また明治・大正時代を考えると、現代社会と明治・大正社会は徴兵制・貧困・女性の身売りなど、ストレスは現代以上に多かったと思われる。
 では現在、何故、うつ病性障害がこれほど増加してきたかを考えると「ウイルスの変化による」とも考えられる。現代の女性はクルマに乗って食料品などの買い物をする。エレベータやエスカレータが日常化している。それも家に大きな冷蔵庫がある。嫁姑の問題にしても最近は核家族化が進んでいる。 
 
【症例】
[症例] 43歳、女性、主婦。
[診断名]
(B総合病院精神科通院時)
軽症うつ病性障害(Major Depressive Episode, Single Episode, Mild)296.21,  DSM-Ⅳ-TR
アルコール依存(Alcohol Dependence)303.90,  DSM-Ⅳ-TR
原発性不眠症(Primary insomnia)307.42,   DSM-Ⅳ-TR

(本院来院時)   
中等症うつ病性障害(Major Depressive Episode, Single Episode, Moderate)  296.22,  DSM-Ⅳ-TR
アルコール依存(Alcohol Dependence)303.90,  DSM-Ⅳ-TR
原発性不眠症(Primary insomnia)307.42,   DSM-Ⅳ-TR
[家族歴] なし
[性格] 明るい、外向的、少し人見知りするところ有り。
[生育歴]
 鉄工所を経営する親の元に4人姉妹の長女として誕生。幼い頃より重病の経験無し。
 一家挙げてのW会の熱心な信者。
 23歳時、同棲を始めるも3ヶ月ほどで周囲の強い反対などで別れる。この頃より不眠症発症。
 35歳時、漠然とした不安に囚われるようになる。また、無気力感が現れる。この頃、友人の紹介で3歳年下の男性を紹介される。

[来院前処方] sulpiride 150mg/日、cloxazolam 6mg/日、bromazepam 12mg/日(以上の3剤は一日3回服用)。
 zolpidem 10mg/日、triazolam 0.5mg/日、rilmazafone 2mg/日、zopiclone 15mg/日(以上の4剤は眠前服用)。
[現病歴]

【考察】
 結婚前は原発性不眠症および軽症のアルコール依存19)のみであったが、結婚後、うつ病性障害が加わっている。症例には人格的歪みは全く存在しない。
 うつ病性障害は姑との激しい諍いにより発症した。症例は非常に責任感強く、真面目であり、嫁ぎ先の姑と諍いあうことを大きな罪悪と考えていた。
 症例は極めて宗教心が篤く、結婚前は盛んに行っていた宗教活動を朝の起床困難、倦怠感故に、結婚後はほとんど行っていないという宗教的罪悪感を強く抱いていた。それは涜神恐怖というべきほど強いものであった。           
 症例は若い頃、S会の宗教活動を過度に行い「燃え尽き症候群」(「一生懸命、走り抜いて走り抜いて疲れ果てて走れなくなること」と症例は定義している。症例はこの「燃え尽き症候群」という言葉を非常に頻繁に使用する。)のような状態に何度も陥ったと言うことから、うつ病性障害に罹患しやすい性質であったと推測される。そして結婚後の姑との極めて激しい諍いが症例のうつ病性障害の発症要因で間違いないと推測される。姑は当時57歳。精神科受診を行ってなかったが、当時より統合失調症あるいは統合失調症に類する精神的疾患に罹患していたと推測される。少なくとも十年ほど前から、こういう状態であったことを考えると、遅発性統合失調症の可能性が高いと思われる。後に姑は統合失調症(疑)と診断され現在も通院中である。
 23歳の原発性不眠症発症時より症例は眠前に女性としては比較的多量のアルコール飲用を始めるが、これも症例のうつ病性障害発症および遷延化に関与したと考えられる。アルコールは気持ちを沈み込ませる薬理作用がある7,8,19)。
 症例は23歳から結婚する35歳までは眠前に約1合から2合の飲酒を続けていた。そして結婚後、姑との激しい諍いのため、軽症うつ病性障害を発症する。そして眠前に約3合飲酒しないと就眠困難となる。

【考察】
 現代社会でなく古代社会に於いてもストレスが多かったと思われる。常に野獣との抗争があった。また明治・大正時代を考えると、現代社会と明治・大正社会は徴兵制・貧困・女性の身売りなど、ストレスは現代以上に多かったと思われる。
 では何故、うつ病性障害がこれほど増加してきたかを考えると「ウイルスの変化による」という学説も存在する。現代の女性はクルマに乗って食料品などの買い物をする。エレベータやエスカレータが日常化している。それも家に大きな冷蔵庫がある。嫁姑の問題にしても最近は核家族化が進んでいる。 
 太古の原始時代の生活に戻ると不安障害など精神的疾患が激減することは確実なことである。
 走れば軽症化する。また治癒することも有り得る。これは西洋医学的には自律神経が整うためと説明される。東洋医学的には全身の“気の流れ”が円滑化するためと説明される。
 運動療法にも限界があり、脊椎の強い歪みなど原因が他に依るものならば、効果は弱い。しかし運動不足が大きな原因を占める不安障害は治癒しやすい。
 20分程度の走ることでは交感神経過緊張の平常化作用は弱く、50分以上の走ることでは交感神経過緊張の平常化作用が強い。歩いて良いからできるだけ長時間を心懸ける。
 走る(歩く)ことには交感神経過緊張を平常状態へ導く作用が存在する。
 そして運動、および玄米自然食を心掛けることにより、中国医学的に言う全身の“気の流れ”の円滑化が起こり、自律神経が安定化してゆく。
 今までレセプターの過剰によると推定されてきた病態も、また中国医学的に“気の上衝”として捉えられてきたものも、単なる運動不足および不健康な食生活に由来することであることが判明する。
 ほとんどの精神的疾患は不安障害のみでなく感情障害・精神統合失調症をも“気の流れ”の円滑化を図ることにより治癒または軽快に向かってゆく。
 必要とする緩和精神安定剤の量は次第に減って行き、最後には必要でないようになる。世の中には様々な健康法がある。しかし最高の健康法は“歩くこと走ること”である。そしてまた玄米自然食を心掛けることが第二に必要である。
 精神科の病気は治らない、一生付き合ってゆく覚悟が必要だ、と一般に言われている。しかしそれは“歩くこと走ること”により寛解する。また玄米自然食を行うと更に寛解しやすくなる。それは全身の“気の流れ”の円滑化によるものと信じる。
 以上の6症例のうち、1症例も玄米自然食を行おうとはしなかった。玄米自然食を行うことにより、それのみでも血糖値は大幅に安定化し、『反応性低血糖』によると想定される自律神経および精神状態への悪影響を避けることができる。『反応性低血糖』と呼ばれる症候群が存在するはずである。それは精製された白米・小麦を摂取することにより起こる現代病である。しかし玄米自然食より“走ること歩くこと”の方が自律神経の安定化への寄与は大きいと思われる。
 太古の原始時代の生活に戻ると不安障害は激減することは確実なことである。しかし精神統合失調症はあまり減少することはない、と考える。それは精神統合失調症は大脳基底核の先天的な病変に由来するものがほとんどであると筆者は推測しているからである。
 整体療法を併用した。急性期の精神疾患の患者には後頚部の激しい凝りが非常に頻繁に見られ、その患者は頚部だけでなく胸椎部もまた石のように固くなっている、よって整体療法を行った。この整体療法には大部分の患者が従った。この整体は肘による圧迫を用いる。カイロプラクテック的手法は用いない。日本古来の指圧に則って行う。患者は始め(初回)は強い痛みを訴えるが、凝りが解れてゆくと痛みはほとんど訴えなくなる。しかし凝りが極めて強い患者(特に精神統合失調症急性期に多い)は初回は痛みを訴えず、2回目以降より筋肉が解れてゆくとともに痛みを訴えるようになることが頻繁にある。
 不安障害などが治癒するのは東洋医学的には全身の“気の流れ”が円滑化するためと説明される。
 1回の走る時間はできる限り30分以上が望ましい。短時間で終わらせる者は治癒することは少ない。そのため、30分以上走る(歩く)ように指導している。
 毎日行う必要はない。週に2回から4回で充分と思われる。週に1回でも効果は強い。若く体力の有る患者以外、毎日のように行うと疲弊し、1回の走る時間歩く時間が短くなる傾向がある。1回の走る(歩く)時間が長いことが重要である。週に何回走る(歩く)かは年齢などの要素のよって決めて良い。
 早く走る(歩く)と交感神経が過度に緊張し、ゆっくり走る(歩く)と交感神経が適度に緊張する故と思われる。ゆっくり走る(歩く)ことにより交感神経過緊張が解消して行き、病気が治癒して行くと考えられる。
 1回に1時間以上走る(歩く)者は驚くほど早く治癒してゆく。小さい頃からの頑固な不安障害さえ、1回1時間以上のジョギングにより治癒した例も存在する。
 そのときの状況、状態などにかなり左右されるが、一般に走り(歩き)始めて20分を経過するとランナーズ・ハイの状態になってくる。様々な過去のことが思い浮かんできたりする。そしてそれは何故かその不安障害を起こす直前の出来事が非常に多い。
 走る。その途中で脱落して行く者は多い。それは長距離走(マラソン)のようなものである。走り抜いて病気を克服する者は確かに少ない。筆者の指導に従順に従う者はやがて治癒してゆくことが多い。しかし筆者の指導に従わず、走ることを怠り、不安障害が慢性化する者は非常に多い。走る(歩く)ことは全身の“気の流れ”を円滑化し、精神統合失調症にも効果があると確信する。
 寒い季節になると室外を歩く(走る)のが非常に億劫になる。そのときは防寒着を着るなど耐寒対策を充分にして歩く(走る)方法がある(特に手先が冷たくなる。他の部分は走るにつれて次第に暖かくなってゆく。自動二輪車を運転するときの長いグローブを着用して走ると非常に効果的である。)。また室内施設のあるところでは室内施設を積極的に利用するのも良い。その他にも寒い季節には自宅で自転車漕ぎをするのも1つの方法である。また喉頭や気管支などの弱い人では寒い季節に室外を走ると喉頭や気管支の炎症を起こしてしまうことが非常に頻繁にある。
 自宅でのトレーニングは気分転換が不充分になりやすい欠点がある。また室内での運動ではランナーズ・ハイの状態に成り難い。しかし防寒着を着て走る方法を用いても寒さに億劫になる場合、および室内施設も無い場合、自宅での自転車漕ぎを行うことなどは仕方のないことと思われる。その自転車漕ぎも長時間行うことが重要である。3日に1度、4日に1度でも良い。不安障害、感情障害、精神統合失調症の患者の交感神経過緊張状態を改善するためには緩やかに長時間行うことである。
 運動療法は太古の自然に還ることを目標とする治療法であり、強い克己心(あるいは家族の協力)が必要であるかもしれない。しかし、習慣性など副作用のない自律神経の平衡を整える最良の治療法と思われる。
 現在は、心疾患患者など走ることを避けなければならない患者および40歳以上の患者には丹田呼吸法を勧めている。丹田呼吸法も自律神経の安定化に非常に効果が高い。それは“走る”以上の効果を持っていると言っても過言ではない。丹田呼吸法の効果は別稿をもって報告する。 

【おわりに】     
 現在、症例自ら「歩くこと」を雨の日以外は欠かさずに行っている。「雨の日、歩くことも多い」と言う。
 この症例のうつ病性障害、原発性不眠症、アルコール依存の寛解には「歩くこと」が極めて大きく寄与したと考えられる。            
 今、ここに症例から渡された一冊の本にも出来る日記形式のノートがある。症例の真面目さ、几帳面さ、信仰の篤さなどが凝縮されてある。これを見ると、症例は結婚して間もなく姑との激しい諍いにより「軽症うつ病性障害」を発症したことが記載されてある。
 
【文献】     
1) Dahlitz MJ、Alvalez B、Vignau J et al:Delayed sleep phase syndrome response to melatonin.Lancet 337:1121-1124、1991
2) 林公一:擬態うつ病.宝島社新書、東京、2001
3) 本間祥白:難経の研究.日本の医道社、東京、1997
4) 井上猛、小山司:難治性うつ病の治療.我が国における現状と治療アルゴリズム.
精神医学 39:6-14、1997
5) 井上猛、小山司:Augmentation の有効性のエビデンス.精神科 1:123-132、2002
6) 笠原嘉:軽症うつ病.講談社現代新書、東京、1996
7) 加藤信勝:アルコール依存症と感情障害.日本臨床:1350-1354(vol.52)、1994
8) Keeler M:Are all recently detoxified alcoholics depressed?  Am. J. Psychiatry 136:586-588、1979
9) 松橋俊夫:漢方による精神科治療.金剛出版、東京、1988
10) 松橋俊夫:一般外来診療のためのうつ状態の漢方治療.医歯薬出版、東京、1994
11) 松橋俊夫:サフランの入眠効果について.新薬と臨床:123-125(vol.48)、1995
12) 大野裕:「うつ」を治す.PHP研究所、東京、2000
13) 洲脇寛:うつ病とアルコール依存を合併する症例の治療.精神科治療学 7(1):35-40、1992
14) 洲脇寛:アルコール依存、ライフ・サイエンス、東京、1995
15) 高見敏郎:走る---太古の自然に還れ---.治療の声 5(1):77-83、2003
16) Thase ME、Rush AJ:Treatment-resistant depression.In: Psychopharmacology
 : The Fourth Generation of Progress, ed by Bloom FE, Kupfer DJ.Raven Press、New York、1995
17) 山寺博史、本間房恵、石橋恵理、遠藤俊吉:心理検査による睡眠後退症候群患者の心理特性についての研究.臨床精神医学 32(3):305-310、2003
18) Thorpy MJ、Korman E、Spielman AJ et al:Delayed sleep phase syndrome in adolescents.J Adolesc Health Care 9:22-27、1988
19) Weismann MM、Meyers JK:Clinical depression in alcoholism.Am. J. Psychiatry 137:372-373、1980

A case of "Depressive Episode", the Prolongation is caused by "Religious Guilt",  and obteined the Remission has been acquired by Walking and taking Herbal Medicine.