安倍内閣は、もともとJR東海が民間資金で行うとしていたリニア中央新幹線の事業に、約3兆円の「財政投融資」を投入すると言いだしました。公的資金ですから、十分な理由説明がなされるべきでしょう。今国会に注目したいところです。
一方、この事業には、たくさんの問題点が指摘されてきました。
その一つが、南アルプス国立公園を、長大な山岳トンネル(25km)が貫くことです。
山登りの大好きな私にはとうてい許されませんが、個人的な感情論だけではありません。
地質学者や山岳団体の意見を調べてみると、次のような問題が指摘されています。
①この地域には、日本最大の中央構造線と、糸魚川ー静岡構造線が通っていること
②高圧の地下水が流出するであろうこと
③トンネル掘削に伴う残土による二次災害の可能性が高いこと
④南アルプスの生態系が崩れてしまうこと
構造線が集中する危険
あの「熊本地震」は、中央構造線に沿った地域に起きました。
中央構造線は、日本列島が誕生するときに、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの働きでできた、大断層帯です。
今、リニアの工事が始まろうとしている長野県大鹿村には「中央構造線博物館」があります。
そこのHPから、中央構造線の地図を転載しましょう。
大鹿村中央構造線博物館HP http://www.osk.janis.or.jp/~mtl-muse/
この中央構造線は、長野県で糸魚川ー静岡構造線と交錯して見えにくくなりますが、埼玉県まで続いています。
今、JR東海が進めようとしている25kmの山岳トンネルは、この中央構造線と糸魚川ー静岡構造線が交錯する地域を通ることになるのです。
この大断層とそれを産み出したプレートの活動が、この地域の山や谷や渓流を造りだしてきました。そして、今でも盛んに活動を続けているのです。
例えば、南アルプスは年間4mm~6mmの隆起を続けています。
南にあるフィリピン海プレートが、南海トラフから南アルプスを押し上げているからです。
ですから、仮にここにトンネルを掘ったとしても、それが何年維持できるのか保証はありません。
また、この山岳地帯は、東海地震の「地震防災対策地域」に含まれています。
この地域の谷は、こうした断層帯にできているため、大変弱くもろいのです。
リニアのトンネルは、断層が揺れ動くときに発生する強い揺れに耐えられるのでしょうか?
地震で断層の「食い違い」が起きた時、どんな事態になるのでしょうか?
地震の時だけでなく、絶えず起きうる地すべりには、どう対処するのでしょうか?
過去にも、大規模な地すべりが何度か起きているのです。
(下の写真は、1961年に中央構造線に面した山腹が崩落したもの)
日経コンストラクション「リニア新幹線の南アルプスルートは安全か」より転載
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/knp/column/20090701/533704/
地下水や掘削残土の危険性
個人的なことですが、私の父は、旧国鉄(現・JR)で保線関係の仕事を続けてきた人でした。
勤務地は故郷でもある山梨県が中心で、多くのトンネル工事にも関わってきました。
父の口癖の一つが「トンネル工事は、水との勝負だ」でした。
ちょっとしたトンネルでも、噴き出してくる地下水をどうやってコントロールするのか、その苦労は、よく聞かされたものです。(勿論、昔の話ですから、今の技術と同じではありませんが。)
山を支えるのは山を造る岩石と、その岩石と共存する高圧地下水です。
リニア中央新幹線は、高圧地下水の湧出をどのように想定しているのでしょうか?
更に、トンネルによって、この地下水は永久に流出を続けることになり、それは様々な自然の異変をともなう筈です。
地下水の流れが変わることで、今までの水源が枯れてしまったり、動植物にも影響がでたりします。
南アルプスには、豊かで雄大な自然があります。キタダケソウ、ハクサンイチゲなどの高山植物にも影響がでないでしょうか?
植物と動物たちの環境は、どのように変わってしまうのでしょうか?
貴重な生物多様性は、一度破壊されると、簡単には元にもどせません。
更に、トンネルを掘った時に出る、掘削残土はどこに置くのでしょうか?
さもなくても、崩れやすい谷でできている地域です。
積み置かれた大量残土が、土砂災害を引き起こす可能性も大きいと思われます。
「南アルプスを25kmのトンネルが貫通する」ことの危険性はあまりにも大きいと言えます。
せめて、いったん事業を凍結して、多くの場で議論されるべきではないでしょうか。
今国会で、有効な議論がされることを切望しています。
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