論文解説
オンライン版初出:2020年12月15日
COVID-19ワクチンは鼻からのSARS-CoV-2感染と無症候性感染を予防しないかもしれない

 

概要
現在のCOVID-19ワクチン候補は注射により投与され、IgG反応を生じさせ、ウイルス血症とCOVID-19症候群を予防するように設計されている。しかし、一般に全身性の呼吸器ワクチンでは、気道内でのウイルスの複製と排出に対する防御は限定的である。なぜなら、これには局所粘膜分泌性IgA反応が必要だからである。実際、アデノウイルスワクチンやmRNAワクチンの前臨床研究では、COVID-19を予防したにもかかわらず、鼻腔ぬぐい液中にウイルスが残存していることが示された。このことは、全身的にワクチン接種を受けた患者は、無症状ではあるが、それでも感染し、上気道から生きたウイルスを感染させる可能性があることを示唆している。COVID-19は呼吸器の飛沫やエアロゾルを介して伝播することが知られている。さらに、多くの診療および外科的鼻内処置がエアロゾルを発生させるという重要な証拠が示されている。全身性ワクチン接種後の粘膜免疫に関するさらなる知見が得られるまで、耳鼻咽喉科医療従事者は、ワクチン有効性が微妙な患者や免疫力が低下している患者、あるいはワクチン接種を延期している患者のうち、持続的に脆弱な患者の割合を保護するために、ウイルス伝播に対する予防措置を維持すべきである。
COVID-19ワクチンの進歩のペースは前例がなく、前臨床試験および臨床試験において160以上のプログラムが実施されている。第3相試験を完了した主要候補の臨床成果指標は、現在のところ安全性とCOVID-19症候群の予防に重点が置かれている。しかし、初期の有効性データが入手可能になるにつれ、これらの全身性ワクチンが「伝播阻止」、すなわち局所的なSARS-CoV-2感染や上気道内での排出を阻止することができるかどうかに注目が集まっている。
ウイルスワクチンは、ワクチン特異的なメモリーCD4+ Tヘルパー1細胞やCD8+ T細胞による細胞性免疫を産生しますが、注射ワクチン(例えば全身性)が呼吸器感染症を予防する主なメカニズムは、ワクチン特異的血清IgGによる体液性免疫の発達です。粘膜一次標的細胞内でのウイルス複製を効果的に防ぐには、分泌型IgA(SIgA)の十分な局所産生が必要であり、そのためには一般に粘膜経路でのワクチン接種が必要である。例えば、不活化ポリオの注射ワクチンと経口ポリオワクチンは、ともに神経学的後遺症を予防する全身性抗体を産生するが、経口ポリオワクチンは、ポリオウイルスが侵入しやすい腸管粘膜内で局所的なSIgA反応を産生する点ではるかに優れている2。同様に、経鼻インフルエンザワクチンFluMistは、気道SIgAをより多く産生する一方で、注射ワクチンと同等の総合的有効性を示すことが示されている3。
粘膜ワクチン接種と全身ワクチン接種の間の免疫反応の乖離は、ヒトの粘膜表面には、主に粘膜関連リンパ組織から構成される局所的免疫系が存在し、この組織が体内の全免疫細胞の80%に寄与しているという事実に由来する。高度に不均一で汚染された環境の中で活動することから、粘膜関連リンパ組織は高度にコンパートメント化され、ある程度まで全身免疫系とは独立して機能する傾向がある。その結果、局所抗原に暴露された後、活性化された粘膜由来のB細胞やT細胞は、免疫細胞や粘膜特異的レセプターとの相互作用を通してのみ、発生した粘膜に選択的に移入することができる。このような粘膜免疫応答の部位特異性は、鼻呼吸器粘膜局所免疫に対する全身性ワクチン接種の有効性を著しく阻害する。
これらの懸念は、特に鼻の嗅上皮がSARS-CoV-2の初期感染部位であることを示す複数の研究に照らして増幅される。嗅覚上皮感染は嗅覚と味覚の障害として現れることが多く、軽症のCOVID-19症例ではこれが唯一の症状かもしれない。分子生物学的および免疫組織化学的研究により、SARS-CoV-2侵入タンパク質であるACE2の発現レベルが、呼吸器上皮よりも嗅覚上皮細胞の方が有意に高いことが証明されている4。嗅覚上皮の免疫システムは不完全にしか解明されていないが、この一次神経組織もまた比較的免疫特権的であり、したがって他の気道粘膜表面よりも全身性ワクチン接種に対する反応からさらに離れている可能性が考えられる。全身の体液性免疫による防御を受けずに、鼻気道に侵入したSARS-CoV-2はそこで感染・増殖し、未知の期間無症候性に感染性ウイルスを排出する可能性がある。

このような粘膜免疫の特異的な特徴は、現在の第一世代COVID-19ワクチンにとって非常に重要である。ジョンソン・エンド・ジョンソンの有力候補のひとつは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現させるAd26ベクター(アデノウイルス血清型26)ベースのワクチンである。この戦略は、前臨床の非ヒト霊長類モデル(NHP)において、1回の注射で気管支肺胞洗浄液サンプル内に強固な中和抗体を示した。これらの結果は、強固な全身的有効性をもたらすと解釈されたが、鼻腔スワブサンプル内では低レベルのウイルスが検出されるものもあった。同様に、Moderna mRNA-1273ワクチンのNHPモデルでは、SARS-CoV-2チャレンジ後、数名の参加者の鼻腔スワブで、気管支肺胞洗浄サンプルを上回るウイルスRNAが検出された6。
COVID-19による効果的な予防にもかかわらず鼻腔内ウイルス力価が上昇したという知見は、ワクチン接種患者からの持続感染の可能性について重要な意味を持つ。疾病対策予防センターと世界保健機関は、疫学的データの優位性に基づき、SARS-CoV-2が呼吸飛沫や空気中のエアロゾルを介して無症状の人から伝播する可能性があることを認めている。耳鼻咽喉科の観点からは、軟性・硬性経鼻内視鏡検査、鼻のデブリードマン、鼻内手術がエアロゾルの大量発生に関連する可能性があることが、複数の研究によって証明されている7-10。これらの結果は、外来耳鼻咽喉科クリニックを一変させ、院内感染を予防するために、N95の使用と長時間の安静が複数の社会的ガイドラインで推奨されている。ワクチン接種が普及すればこのような制約が緩和されると思いたいところだが、前臨床試験で得られたNHPの知見は、それが時期尚早である可能性を示唆している。
COVID-19の第一世代ワクチンが配布され、研究されるにつれて、COVID-19感染予防の全身的有効性の程度と期間についてよりよく理解できるようになるだろう。しかし、ウイルス力価のエンドポイントがワクチン臨床試験に組み込まれるか、あるいは粘膜ワクチンが開発されるまでは、全身ワクチンを接種した人から無症候性の鼻腔ウイルスが排出される可能性を考慮すべきである。ワクチンの有効性が十分でないこと、接種をためらう人が多いこと、免疫動態が衰えていることを考慮すると、COVID-19に対して脆弱な患者集団が常に相当数存在することは明らかである。間近に迫ったCOVID-19ワクチン接種プログラムの普及を熱狂的に歓迎しながらも、耳鼻咽喉科医としては、当面の間、診療所での無症候性SARS-CoV-2感染に警戒し続けなければならない。

開示事項
競合利益: ベンジャミン・S・ブライエは、オリンパス、メドトロニック、カール・ストルツ、シノプシス、バクスター、インキメディカル、3Dマトリックスとコンサルタント関係にあり、Theime社からロイヤルティを受け取っている。細胞膜ポンプの調節による副鼻腔炎の治療」(Massachusetts Eye and Ear Infirmaryに譲渡された米国非仮特許)、「慢性鼻副鼻腔炎の治療のためのシスタチンの阻害」(米国非仮特許)、「医薬剤の送達方法」(US 13/561,998)の特許を保有。アンドリュー・P・レーンはサノフィ・レジェネロンの諮問委員を務めている。

 

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0194599820982633

 

1918年のパンデミック時に「母親の胎内にいた子ども」たちが

数十年におよぶ「心不全の嵐」に襲われた状況から見る

今後の50年、あるいは数年

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「この影響は100年続く」

興味深い論文を知りました。

もともとは、米国メディアの最近の「心臓病が大流行することになったのは新型コロナの影響なのだろうか? それは過去にもあった」というタイトルの記事に載せられていたリンクから知りました。

この記事そのものは、「現在、アメリカで心臓疾患が劇的に増加している」ということから、それが 2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミックによるものなら(記事には、ワクチンのワの字も出ません)、それは「ひとつの世代全体」に影響を与える可能性があるというものでした。

そして、「その影響は数十年以上続く」という可能性を述べたものでしたが、その根拠として示されていた研究のひとつが、2010年の以下の論文でした。

大変に興味深い研究です。

1918年のインフルエンザのパンデミックが心血管疾患に及ぼした残存する出生前影響
Lingering prenatal effects of the 1918 influenza pandemic on cardiovascular disease

 

1918年のパンデミックは、一般的に「スペインかぜ」と呼ばれるインフルエンザの大流行でしたが、ここで調査したのは、一般の人々の感染率や死亡率などの追跡調査ではなく、

「パンデミック時にお母さんのお腹にいて、その後に生まれた赤ちゃんたちの成長と疾患の状況」

を調べたものでした。

その結果、1919年のパンデミック時に生まれた人たちに、

 

・数十年後の心臓病のリスクが著しく高いことが示された

・成長(身長など)の遅延が見られた

・脳の発達障害が原因であると見られる学力低下が見られた

 

などがあることが判明したのでした。

注意すべき点は、「赤ちゃんの時にウイルスに曝露した」のではなく、

「お腹の中にいるときに母親がウイルスに曝露した」

ということです。

生まれる前の母胎感染による影響です。

論文の「議論」から少し抜粋しようと思いますが、グラフを見ますと、あからさまで、以下のグラフは別の論文にあるもので、イギリスでの「心疾患による死亡数の分布」です。

英国の冠状動脈性心疾患による死亡数の推移

 

academic.oup.com

すごいですよね。

1940年くらいから 1980年くらいまで、「平時の数十倍、あるいは、それ以上」の心疾患による死亡が発生していたことがわかります。

知りませんでした、こんなことが起きていたなんてことは。

この原因が、1918年のパンデミック時に母胎での感染によりウイルスに曝露した赤ちゃんたちだったとした場合、注意すべきは、死亡数がピークに達したのが、それから約 50年後だということです。

つまり、

「胎児の時にウイルスに曝露して生まれた人たちは、その後の数十年以上影響を受け続けた」

可能性があるのです。

以下、先ほどのアメリカの論文のまずは、「結果」からの抜粋です。

 

論文「1918年のインフルエンザのパンデミックが心血管疾患に及ぼした残存する出生前影響」より

結果

1982年から 1996年の米国民健康面接調査 (NHIS) の 60歳から 82歳の個人 101,068人について、報告された心臓病の有病率 (1000 人当たり) を出生年別にプロットした。

 
 

1919年出生の心臓病率が隣接するコホートのレベルを超えて急増していることに注目してほしい。1

919年生まれのコホートは、そのほとんどが出生前にインフルエンザと同時の感染症にさらされており、

63歳から77歳(未調整)で心血管疾患が 5%過剰となり心血管老化が加速しており、誕生 4年間の減少傾向から逸脱している。

 

1919年に生まれた男性は、周囲の同世代と比べて約 0.05インチ (約 0.13センチ)背が低かった。この影響は小さいものではあるが、非常に重要であり、心臓病の増加期間と正確に一致している。

 

サンプル年齢 60~ 82歳全体について、1919年の第 1四半期に生まれた人たちは、妊娠第 2期にパンデミックにさらされた可能性が高く、10.9%が過剰な心臓病を患っていた。分析を 60歳から 75歳に限定すると、その数値は 12.6% に増加した。

疾患の種類別に分析すると、1919年第1四半期のコホートでは虚血性心疾患が 25.4%過剰だった。サンプルを60歳から75歳(25.2%過剰)に限定した場合でも同様の数字だ。また、1919年に生まれた人々には、過剰な糖尿病が見られ、第3四半期生まれ(14.9%過剰)、第2四半期(36.7%過剰)となった。

ncbi.nlm.nih.gov


 

ここまでです。

この部分がまとめられている記事のほうがわかりやすいかもしれません。

南カリフォルニア大学のニュースリリースより

…しかし、死者数の多さ以外にも、1918年から 1919年のパンデミックの完全な影響は 60年以上経たないと実感できなかった。

2009年、研究者たちは、パンデミックの最盛期に新生児または妊娠第 2期または第 3期の胎児だった 1919年生まれの人々に関する疫学データを調査した研究を発表した。

 

データによると、これらの人々は、パンデミック中に年長児だった人々を含む、1919年生まれ以外の同様の集団と比較して、60歳以降に心臓病を患う割合が約 25%高く、糖尿病のリスクも増加していることが明らかになった。

usc.edu

 

なお、「 60歳以上」のデータとなっているのですが、これはなぜかというと、基本的にこの研究で利用したデータベースである国民健康面接調査というのは、1982年からスタートしたもののようで、つまり、「1919年生まれ」の人は、調査開始の時には、全員 60歳以上になっていたわけで、

「 60歳以下の若い人たちがどうだったかのデータはない」

のでした。

しかし、論文には、以下のように書かれていました。

> 60歳未満の早発性心疾患による死亡率も高いと予想されるため、若年層へのこれらの影響は過小評価されている可能性がある。

これについては、先ほどのイギリスのデータからもわかります。心臓疾患による死亡数のピークこそパンデミックから 50年などが経過した頃でしたが、その間にも、グラフは急激に上昇していまして、60歳以下の年齢層でも、この数十年間、心臓疾患が多く発生していたことが想像できるからです。

アメリカの論文には、その後に以下のように書かれていました。

論文より

出産のタイミングがその後の人生の健康に及ぼす影響は、過小評価されている可能性がある。

パンデミックの影響が、最も弱い胎児の「淘汰」である場合、他のすべてが等しい場合(つまり、健康に対する曝露の影響がなかった場合)、平均的に生き残った新生児たちの健康状態は良くなり、健康状態が悪くなることはないため、生き残った胎児は、成人期における長期的な健康への悪影響を私たちが発見したことに反して作用する。

このことのいくつかの証拠は、1919年の乳児死亡率が 1917年と 1918年のそれを下回っていたという事実だ。

ncbi.nlm.nih.gov

この部分が述べているのは、お腹の中の胎児は、パンデミックのウイルスへの曝露でも(あるいは、ウイルスと同等の作用物に注射などによって曝露した場合なども)、赤ちゃん時代にはあまり影響せず、成長すればするほど、心臓疾患や糖尿病などによる死亡率の増加が見られるということです。

このようなことから、先ほどの南カリフォルニア大学の記事は、

「新型コロナウイルスによる被害は 1世紀続く可能性がある」

という科学者の言葉を引用しています。もちろん、この新型コロナウイルスという言葉を、ワクチンという言葉と置き換えることは合理的でしょう。

コロナは、自然感染者よりワクチン接種者のほうがはるかに多いのですから、影響の度合いが違います。

 

前回の記事にも「架空のグラフ」などを示させていただきましたが、先ほどのイギリスの論文のグラフから、

「 2020年からのパンデミック(および、2021年からの妊婦へのワクチン接種)後の経過が、1918年のパンデミックと同じような状況となった場合」

の架空のグラフは以下となります。

 
 

ただですね。

1918年のパンデミックの病原体は、あくまでもインフルエンザですから、どう考えてみても、新型コロナウイルス(あるいは、それと同等以上の作用を持つスパイクタンパク質を含むワクチン等)のほうが、心臓への悪影響は、より強く、影響への時間経過もより早いと見られます。

何しろ、まだ 2024年の現在までの時点で、すでに「心不全のパンデミック」というような言葉が使われているくらいですから、先ほどの架空のデータほど「ゆっくりと事態が進むということではない」と見られます。

もっと早いはずです。

 

しかし、この研究で最も感じたのは、「胎内の赤ちゃんへの曝露」というものは、

「それがどんなものであろうと、本当に気をつけないと、生まれてくる赤ちゃんの一生に影響を与えてしまう」

可能性があるということでした。

一般的に、妊娠中は、アルコールやさまざまな薬剤も決して飲まないというように注意深く生活している妊婦の方々が、

「スパイクタンパク質と脂質ナノ粒子を平気で体内に打ち込む」

という行動が当時理解できませんでした

どちらも強力な毒素です。

 

それはともかく、今回ご紹介した論文は、将来的に心疾患となってしまうリスクが飛躍的に上昇するというものでしたが、他にもあります。

1ヶ月くらい前だったか、

「生まれた赤ちゃんのガンのリスクが大幅に上昇する」

ことを示した文章もご紹介したことがありました。

妊娠中に接種したお母さんから生まれた赤ちゃんは、子宮内での遺伝子の突然変異により「将来的にガンに罹患する確率が非常に高い」ことを示した論説
 In Deep 2024年4月11日

後々の影響としては、ガンだけではないでしょう。

妊娠中のワクチン接種後に生まれる自閉症的行動を示す新生児に関する研究。その原因である「海馬と小脳の神経細胞の破壊」の影響は、大人にも適用されるはず
 In Deep 2024年1月14日

 

今後数十年の(実際にはそんなにかからない)社会の崩壊ぶりは、想像を絶したものとなるでしょうけれど、もし「反省」ということを考えるのなら、これから社会で起きていくことをきちんと見て、そして、「なぜ、こうなったのか」を考えることしかありません。

世論や周囲の同調に流されるままでは、次々と日本で新たな mRNA 製品が作られようとしている現在の非常に危うい状況の中では、人類というより日本人の存亡そのものにつながる可能性も、長い時間軸ではそれなりにあり得ます。

現時点で私たちはすでに、約三世代の多くの赤ちゃんたちの未来をつぶしているのですから。

 

 

 

 

 

要は地震でやるか、大規模火災でやるか、戦争でやるか、その他の方法でやるかであって、結果はスマートシティが目的なんですね。