ミニシアター開設プロジェクト | 目隠しされた馬 撮影師・辻智彦のブログ

目隠しされた馬 撮影師・辻智彦のブログ

キャメラマンは目隠しされた馬か?

新宿区に提案したミニシアター計画。
以下は提案書の大枠。
添付していた具体的な予算、立地などは省略。

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~21世紀の映像文化創造のために~
歌舞伎町におけるミニシアター開設プロジェクトの提案

 デジタルテクノロジー全盛の今、映像表現の可能性は飛躍的に広がっています。しかし残念ながら、現代日本はまだまだその可能性が全面的に開花する時代状況になっているとは言えません。
 私たちシネマチックネオは、マスメディアやシネマコンプレックス全盛の映像界の現状に飽き足らず、時代を切り拓くような新しい映像クリエーションシーンを創造していきたいと考えています。


もう1つの映画館のかたち
歌舞伎町にミニシアターを創る!


 私たちシネマチックネオは、映像文化の更なる広がりを支え、発展していくための足がかりとして、ミニシアター(映画館)を開設することを提案します。私たちの考える新しい形の映画館では、従来の単館系ミニシアターの機能に加え、映像に関するワークショップを常設開講します。それによって、映画を観ることと同時に、近年急速に広がっている個人をベースにした映像作品の制作をバックアップしていける環境も造り出していきたいと思っているのです。


観ることと創ることがイコールのアートスペース
映像を観るのみならず、発信していく基地を創る!


 「映画館」としては、国内外の先鋭的な新作を上映。現代日本に生きる私たちにとって、最も興味があり、必要とされるテーマを扱った映画を上映します。メジャーの映画館ではかかりにくい内容の映画も、作品の質によって積極的に扱っていきます。また、過去の優れた作品についても、テーマ別の特集上映などのかたちで上映します。さらに、撮影機材の発達により多様な表現の広がりを見せている自主制作やネットシネマなど、小規模の映像作品の為に、劇場スペースのレンタルや招待上映などを行います。これらの作品にも優れたものは多くありますが、上映する機会や場所が少ないため、日の目を見られないものがほとんどです。こういった作品たちに光を当てていくことも、私たちの使命だと考えています。
 また「映像ワークショップ」は、社会人、学生を問わず、映像制作の実践を通じて映像表現の可能性を再認識してもらう場とします。ワークショップ受講者には各自映像制作をしてもらい、完成した作品を当劇場で上映するまでを体験してもらいます。
 映画を観る行為と創る行為を同じ場所で実践することによって、「映画」を一方的に観るだけではなく、観る=創るのダイナミックな関係として再認識していきたいのです。それこそ、普段は映像制作を仕事としている私たちシネマチック・ネオが、今回映画館を造ろうと考えた、最も本質的な動機です。
 私たちシネマチックネオは、この映画館を『観る人と創る人が同じ場に集う映像文化発信基地』にすることを目指します。


概要

① 新宿区歌舞伎町にミニシアターを開設。客席数60(可動式)
② フィルム、ビデオ(ハイビジョン含)DVD何れも上映可能
③ 洞窟を思わせるような映画館
④ 10時から14時までは国内外の過去の名作を上映
⑤ 14時から19時はレンタルスペース&スクリーン
⑥ 19時から23時にかけて国内外の新作を上映
⑦ 毎週水曜日(仮)を劇場休館日とする
⑧ 休館日に、映像ワークショップを開講する


私たちが提案する独創的なポイント

 「洞窟を思わせるような映画館」は、映像の始源としての洞窟の壁画をモチーフにしています。遠い原始の人類は、暗い洞窟の中に獲物の絵を描き、ゆらめくたき火の光でそれを見ていたといいます。その時彼らを震えさせていたに違いない感動は、まさに映画から現在私たちが受ける感動そのものではなかったでしょうか。
 「10時から14時までの旧作上映」は、名画座的な位置づけになります。定年退職を間近に控えた団塊の世代の方々には、熱かった時代を想起させ、若い世代には日本の近過去を再発見してもらえるような、その時々の時代の息づかいを感じられるような作品を選んで上映します。
 「14時から19時のレンタルスクリーン」は、現在映像製作に関わっている人や組織に貸し出します。映画の完成披露試写会や上映イベント開催など、自分たちで創った映像作品をなかなか上映できる場所や機会のない多くの人々に、思う存分利用してもらいます。
 また、使用予定が入っていない時は、オープンスペースとして一般開放。格安の入場料で人々に自由にくつろいでもらいます。照明はスクリーンの白い光のみ。太陽の光が差し込む昼間の洞窟の中のような癒し空間となります。
 さらにこの時間帯には、館内ライブラリーのDVD作品やネット配信の短編映画、来た人の持ち込みDVD作品などを安い利用料で上映するサービスを行います。いわば映像ジュークボックスです。当館所蔵の実験映像の名作上映や、個人的に大画面で楽しみたいプライベート映像作品の上映、覆面試写会など、多様な楽しみの出来る空間にします。
 「19時から23時の新作上映」は、いわばこの映画館のメインイベント。夜遅くても、充分に集客が見込める歌舞伎町ならではのプログラム編成です。
 ここでは、私たちシネマチックネオが世界中から厳選した、現代の社会状況と最も真摯に向き合い、人々の共感や問題意識を刺激してやまない先鋭的な作品を上映します。アジア、ラテンアメリカ諸国の映画を始めそういった作品は数多くあるにも関わらず、メジャーやシネコンでは配給網の関係などから上映が行われていないのが現状です。データによると、現在上映館が見つからず公開を待機している作品は、日本映画だけでも年間300本にも及ぶと言われています。その中には、正に今、上映しなければならない作品が多数あるのです。
 私たちはこの映像状況を変革していく為にも、このプログラムを核として展開していきます。無論上映だけでなく、監督の来場やトークイベント等、様々な仕掛けをしていく予定です。年配の方から若い人まで、時代の空気をびんびん感じてもらえる劇場空間にしていきます。
 そして、上映終了が遅い時間になっても、ここは新宿歌舞伎町。さめやらぬ興奮を抱えて街に繰り出すもよし、深夜であってもどの店に入るか迷うほどの賑わいです。あるいは家に直帰してもよし。新宿駅発の電車はまだまだ動いています。

*このようなプログラム編成によって、1日のうちに過去(旧作の上映)現在(参加型映画館)未来(最新作の上映)の流れを劇場内に作り出し、観客の方々にダイナミックな映像体験をしてもらいます。過去を学び、現在を実践し、未来を目指す。この映画館はそのための実験基地なのです。

 「映像ワークショップの開講」は、週1回、昼間部・夜間部の2部構成です。3ヶ月単位で10回程度の受講数、従って受講生募集は年4回になります。 
 ここでは映像教育の経験豊富な専任講師による丁寧な指導をはじめ、著名な映像クリエイターを特別講師として多数招聘する予定です。受講者の方々には、映像の制作と上映を通じて、従来とは違ったものの見方や、社会と映像との新しい関係を発見することを期待しています。それはまた私たちシネマチックネオ自身にとっても、ともに新しい時代を切り拓いていける同伴者たちを見つけていく作業になるのです。これは、映画館とともにあるワークショップだからこそ出来る、まさに「観る=創る」の相互作用による新しい映像文化発信基地の創出です。


映画館プログラム案

① モーニング&アフタヌーンショー 10:00~14:00
「あの時代の新宿」特集上映
 10:00~「新宿マッド」1967若松孝二監督作品
 12:00~「新宿泥棒日記」1968 大島渚監督作品
② レンタルスクリーン14:00~18:30
 14:00~オープンサロンwith映像ジュークボックス
16:00~レンタルスクリーン予約、自主制作映画上映会
 18:30 上映会終了
③ イブニング&レイトショー 19:00~23:00
 話題の最新作上映
19:00~「SMS SUGAR MAN」
   (全編携帯電話で撮影された南アフリカ発の劇映画)
21:00~「ニア・イコール」
   (アーティストの現在を追ったドキュメンタリー)
22:30~「ニア・イコール」ゲスト&監督トークショー 
23:00 終演


ワークショッププログラム案

毎週水曜昼間・夜間の2コース制。3ヶ月で1プログラム。
① 昼間コース 水曜14:00~17:30 10回 募集人員10名 
② 夜間コース 水曜19:00~22:30 10回 募集人員10名
講義内容例
第1回  映像制作についての概要説明   
第2回  撮影機材の説明と操作   
第3回  撮影テスト、指導  
第4回  撮影素材の編集実践、指導 
第5回  課題作品の企画立案
第6回  撮影準備、撮影
第7回  撮影過程報告、編集
第8回  編集過程報告、編集
第9回  編集、完成試写
第10回 完成試写、まとめ
 

歌舞伎町が映像文化の中心になる!

 このミニシアタープロジェクトを通じて、新宿歌舞伎町は、少しずつ、しかし確実に変わっていくはずです。
 創る人と観る人のクロスオーバーによるエネルギーの爆発によって、60~70年代数多くの映画、芸術が新宿を舞台に生まれ出たように、現代のデジタルテクノロジーを媒介とした「観る=創る」の相互作用の活性化は、新宿歌舞伎町に熱い創造の息吹を再び芽生えさせるに違いありません。
 私たちシネマチックネオは、このミニシアターの開設によって、新宿歌舞伎町が再び映像文化の中心地になることを確信しています。

シネマチックネオ 辻智彦