アラン・ホールズワース / アイバニーズAH-10 | おんがく・えとせとら

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vol15

 1月のアラン・ホールズワース来日公演が終わったばかりですが,昨年末発売のシンコー・ミュージック「Jazz Guitar Book Vol.15」で彼の特集が掲載されました。ホールズワース・ファンにはうれしい一品です。
 副題が「ジャズ・フュージョン技巧派の逆襲」。同社はムック「ジャバン・ヴィンテージ」で「アイバニーズの贅」「ヤマハの魁」など京極夏彦風の副題をつけたり,密かに凝ってるところを見せてます。

 同誌では,一部に漏れはあるものの,これまでのホールズワースの使用ギター・機材が結構詳しく紹介されています。で,「Metal Fatigue」発表頃に本人も使っていたイバニーズ(当時)AH-10を紹介しましょう。

FRONT
BACK

 イバニーズのストラト・タイプの主力機ロードスターをベースに開発され,1PU,トレモロブリッジ,赤のマッチングカラー・ヘッド,黒ピックガード,サイドジャック等,本人がそれまで使っていたシャーベルの赤いストラトの仕様を取り込んだ形です。85~87年頃まで発売,定価98,000円。2PU版のAH-20は110,000円でした。

 ボディ材は当時同社の低価格機で採用されつつあったバスウッド。カタログではピックガード下に大きな穴を開けた姿を堂々と公開しておりました。これもシャーベル・ストラトと同じとか。おかげで重量は3.5kgに。
 下の写真はカタログから。ちょっと見づらいけど、大きなPUキャビティは,PUネジがかかる部分が一段深くなっています。

CAVITY

 ボディが軽いと,立奏時にヘッドが下がったりバランスが悪くなるものですが,本機ではストラップ・ピンをネックプレート部分に取り付けることで改善しています。
 ホールズワースの使用機は,テンペスト時代のES-335から現在に至るまで,全てストラップ・ピンがネックエンド部に付けられています。ボディが体の前面に来るので,ハイポジションが弾きやすくなるというメリットもあります。
 ホールズワース・フリークの和田アキラ氏も同じ位置ですね。
 
NECKPLATE

 ネックプレートを貫通してストラッブ・ピンがつけられています。シャーベルのストラトも恐らく同仕様だったのでは。
 本機には,もともとストラップ脱落防止用にブーメラン形のピンがついてましたが,木部が柔らかい材質のため,ストラッブ脱着の繰り返しによりネジが緩んでおり,穴を埋め直して丸形鍔広のピンと交換しています。
 プレートにはホールズワースのサインとシリアルNOが。「D850503」は,85年製を表しているものと思われます。85年5月3日? 蜘蛛の絵は,ワイドストレッチでウネウネ動く彼の左手を模したもの。

BRIDGE1
BRIDGE2

 ブリッジは,バワーロッカー(Powerocker)・カスタム。ブリッジの前面2カ所にあるナイフエッジ状の突起を,支点となるパーツの溝に噛ませて支持している。トレモロ・ブロックはアルミ製だそう。

 PUはAHスペシャルという専用品。音は結構それっぽい音が出ます。サスティンも十分。割とパワーのあるPUなので,開放弦をうまくミュートしないと余分な音が一緒に鳴ってしまいます。少し歪みを絞ったくらいがいいかも。
 

 このギターは,数年前に,ハードオフでケース無し剥き出し状態で売られていたのを購入しました。長期間放置されていたものと見え,金属パーツは錆び,指板にカビが生えていたりと,メンテにかなり手間がかかりました。
 ネック,ボディとも塗装が薄いせいか,生音も結構良い音がするし,エボニー指板を採用するなどグレードの高い作りになっています。

SIGN



 さて,最後に音のサンプルです。アンプはいつものグヤトーン・FLIP300FC。セッティングは以下のとおり。エフェクター無しです。
 GAIN10,VOLUME1,BASS10,MIDDLE10,
 TREBLE7,PRESENCE5,REVERB2