サン・サーンスのバスーンソナタを紹介します。
この曲は彼の晩年の作品で、その頃彼はレパートリーに恵まれていない楽器をフィーチャーしたソナタを複数作曲することを計画していました。(完成したのは、オーボエ、クラリネット、バスーンそれぞれのためのソナタで、計画ではコーラングレ、フルートが続く予定でした)
残念ながらこの計画は、彼の死によって完結しませんでしたが、遺された3曲は、主要なレパートリーとして愛されています。
今回のバスーンソナタは、この3曲に共通することですが、極めて簡潔で美しく、魅力的な作品です。それは饒舌な人の言葉よりも寡黙な人の言葉の方が強く響くことがある、ということに似ていると勝手に思っています。また、これは、推測ですが、のちの同じフランスの作曲家プーランクの晩年のソナタは、この作品群に影響を受けたのではないかと思います。
また後日、サン・サーンスのほかのソナタやプーランクのソナタについて書きたいと考えています。

第一楽章は、さらさらと流れる水を思わせるピアノのアルペジオの上に、バスーンのメロディーが流れていきます。


第二楽章は、スケルツォで幾分荒々しいですが、抑制が効いたまとまりあるものになっています。


第三楽章は、ゆったりとした美しい部分と、元気に曲を締めくくるコーダが組み合わさった楽章です。
なお、このコーダの部分は、第四楽章とみなされることもあります。