染織家 北川 陽子 FILE No.7 ART STYLE | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

「滋賀には魅力的なアーティストがたくさんいる。
この素敵な事実をみんなに伝えたい」、そんな想いで始めた"アートスタイル"。
ミュージシャンやモデル、俳優、お笑い芸人、芸術家、建築家など幅広いジャンルのアーティストをご紹介。

湖東の伝統技術を、

世界へと昇華する女性染織家。

 

 湖東地方は、古くから麻織物の産地として栄えてきた。琵琶湖の湿気が四方の山でほどよくこもり、乾燥に弱く切れやすい麻を織るのに最適な土地柄だったからと いう。この伝統産業を守り続ける染織家・北川陽子さんに会いに、能登川町の絣工房「Fabrica」を訪れた。

父・敬造さんが一代で築き上げた「北川織物 工場」の隣に、この工房はある。絣は経糸(たていと)や緯糸(よこいと)、あるいは両方の糸を染めて、色が徐々に薄くかすれていくような柄を作る技法のこと。幅90cmの織物を作るのに経糸だけでも3千本を用意し、出来上がりのデザインを計算して糸を束ね、染めて、織る。生地になるまで2〜3ヶ月を要する 仕事だ。父と娘でも、仕事の上では職人同士。敬造さんとは喧嘩ばかりだったと陽子さん。その敬造さんが2年前に急死。父が残した工場を、そして能登川の伝 統技術を守りたい……。陽子さんの使命感が一層強くなった出来事だった。

「絣工房Fabrica」は、能登川の伝統文化をもっと身近に感じてほしいという 思いから作られた。工房には陽子さんの絣を使って妹の順子さんが仕立てた服やストール、座布団カバー、組み紐のアクセサリーなどが並ぶ。どれも今の生活に なじみあるものばかりだ。また、陽子さんは制作の傍ら全国での催し物にも積極的に参加。いつしか北川さんの絣糸がトップデザイナーの間で注目されるように なり、最近ではシャネルの2004春夏コレクションにも採用されている。「今はモノがあふれる時代。

だからこそ、確実なモノづくりをしなくてはいけないと 思います。歴史的な時間をかけて成り立って来たものを一度消してしまうと、もう元には戻りません。もっとたくさんの方に織物の良さを知っていただき、能登 川の素晴らしい伝統を伝えていきたいと思います」。

『Fabrica』とはスペイン語で工場。父の残した工場を、そして能登川に残る伝統を残していきたいという北川さんの熱い思いが、ここに込められている。


【プロフィール】
昭和36年生まれ
染織家/絣工房 Fabrica
滋賀県神崎郡能登川町差の657
北川織物工場内
TEL 048-42-0380
http://www.biwa.ne.jp/~fabrica/