エリック・クラプトン・ストラトキャスター開発ストーリー(その12) | John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies!

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大分、間が空きましたが、フェンダー社初のシグネチャー・モデルである、エリック・クラプトン・ストラトキャスター開発の裏舞台についての話の続きです。今回は、その第十二回目です。

前回は、マスタービルダー、マーク・ケンドリックがクラプトンのために特別に作った、金箔を貼った贅沢なゴールドリーフ・ストラトキャスターのお話をしました。今日はその続きです。
1998年、マーク・ケンドリックに代わって、トッド・クラウスがエリック・クラプトン担当になります。クラウスは、その時期すでにベテランのビルダーで、1981年からギター製作に関わっていました。彼がそのキャリアをスタートさせたのは、当時のギター新興勢力の中心的メーカー、シャーベル/ジャクソンに於いてでした。クラウスは、当時から多くのアーティストとの関わりを持っており、ジェフ・ベック、ジェイク・E・リー、ジーン・シモンズなど非常に多数にのぼります。
1991年、クラウスはフェンダーに移籍し、R&D部門(リサーチ&デベロップメント=新規開発部門)でアーティスト担当のギター・ビルダーとして、多くのアーティスト・モデルの開発に関わってきました。その後、そのアーティスト担当兼任のまま、その実力を認められ、マスタービルダーに昇進しています。

クラプトン担当になったトッド・クラウスが最初に手掛けたのが、エリック・クラプトン・ストラトキャスターのモデル・チェンジでした。その主な理由が、ピックアップの交換にありました。
従来までこのモデルに使用されていたピックアップは、ドン・レースが開発したノイズを軽減するために開発されたレースセンサー・ピックアップでした。このピックアップは、グミ磁石を利用することで磁力を弱め、磁界を通常のものよりも狭くしてノイズを拾うリスクを軽減させたのですが、実はその機能が仇となったのです。

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(クラプトン・ストラトに搭載されていたGoldのLace Sensorピックアップ)

通常ギターの場合、6弦など太い弦では大きなエネルギーが出力されますが、1弦の様に細い弦ですと、エネルギーの量は少なくなります。その補正のために、ピックアップをセッティングする場合、1弦側を高く、6弦側を低くするのです。レースセンサーの場合、その磁界の幅が狭いために、個体のセッティングにより1弦の音量がやや低い場合があったのです。(これはすべてのレースセンサーを搭載するギターに当てはまるものではなく、あくまでも個体ごとのセッティングによってですので悪しからず。)
フェンダーではこれを考慮して新たなピックアップの開発を急いでいたのですが、その結果として完成したのが、フェンダー・ノイズレス・ピックアップでした。クラプトン・ストラトキャスターには新たにこのピックアップが搭載されることになるのでした。

この続きはまた明日。