殺気を感じるセンサーがあると相手の力量がわかります。


ある日、道場に入るとすぐに、いつもと異なる気配が場内に漂っていました。


普段は存在しないバイオレンスの圧力です。しかも張り付くような粘度がある。


気配のする方向を見るとずんぐりした大柄な男が座って、こちらを見ています。


一瞬、頭をよぎったのは

 

「もしかしたら、時代錯誤の道場破りか?


しかし、それにしては殺気がない」


あるのは、かなり強いバイオレンスの世界の圧力。


体型や筋肉から見て、こういうタイプはルールなしの喧嘩がかなり強い。 


格闘技や武道などで鍛えたタイプではない。


生来のファイター体質…



もし、暴れ出したら、どう料理するかと全身にその男の視線を感じながら考えていると…


一人の先輩が道場に入って来ました。


なんと!


そこに座っていたのは、その方の息子さんでした。


お父様は小柄な方なので、何回か見比べてしまいました。


先輩が語るには、以前、息子さんは暴走族のヘッドだったそうです。


なるほど。


彼からの気配のバイオレンスの濃さがわかりました。


前から合気道S.A.の話をして、入門を勧めていたが、武道なんて実戦では役に立たないと言って相手にされていなかったそうです。


武道や格闘技経験者との喧嘩の経験から、そう思っているのでしょう。


そうだろうなと思いました。


筋力や技だけで喧嘩には勝てませんから。

 

道場内の稽古や試合の経験だけでは、あのバイオレンスの圧力を真っ向から浴びせられたら、身体がすくんでいつもの動きが出来ないでしょう。


新撰組の近藤勇は、道場の中の稽古では、それほど強くなかったが、刀で斬り合う真剣勝負では、めっぽう強かったそうです。


それと同じでしょう。


稽古が始まると、背後から私の動きを凝視しているのが肌でピリピリしてわかります。


まあ、道場破りではないとわかったので、稽古に心を向けました。


途中、気配が無くなりましたので、座っていた方を見ると彼は姿を消していました。


あとはいつも通りの稽古となりました。



翌週、その先輩が私に嬉しそうに話し出しました。


あの日、帰宅すると息子さんから言われたそうです。


「合気道にも強い奴がいるじゃないか」


入門はしないが、認めてもらって嬉しかったそうです。


合気道を稽古することをバカにされていたので、鼻が高かったというのです。


まあ、あれ以上強くなったら、昔の私のように、思わぬ事故になる危険性が高まるだけです。



気配を感じ取ると護身に役立ちます。


というかリアル護身には、必要な能力ではないでしょうか?


私の気配サンサーは強弱だけでなく、質もわかります。


そして、人混みもコンクリートの壁も無関係に感知します。


目の前で、いきなり襲われるよりも、離れた場所で感知が出来れば、回避の確率がさらに高くなります。


私の生徒さん達も殺気を感じる稽古をしていますから、有段者の生徒さん達は、皆さん、数メートル離れた背後からの殺気を感じられます。

  


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