文革四人組の香港版?中国メディアが香港四人組を批判 | 周来友 オフィシャルブログ

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中国出身のジャーナリスト、タレント。
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中国では1966年、毛沢東が権力を取り戻そうと文化大革命を発動しました。この文革により、中国には紅衛兵と呼ばれる若者が出現。教師や資産家、ひいては自分の親さえも吊るし上げるようになり、中国社会は大きく疲弊します。人々の心も荒み、文革の時代はまさに中国の暗黒時代と言って良いでしょう。そして毛沢東が死ぬと、この文革を主導したとして、“四人組”と呼ばれる主犯格4人に死刑判決や終身刑が言い渡さました。毛沢東の妻であった江青も4人組のメンバーとして死刑判決を受け、その後、死刑が執行されています。

なんと、今回、香港で起きた大規模デモを裏で主導したとされる4名が、この四人組になぞらえ「香港四人組」という名称で中国メディアの批判を受けています。では、この香港四人組とは一体、どんな人物たちなのでしょうか。

《中国国営メディアがこうした画像まで作成し厳しく非難する香港四人組とは一体?》

まず中国政府が香港四人組の主犯格であるとしているのが、黎智英(ジミー・ライ)氏(67)です。同氏は、中国共産党に批判的な論調で知られる香港メディア、「蘋果日報(アップル・デイリー)」の創設者です。中国国営メディア・新華社通信は同氏について、次のように手厳しいコメントを寄せています。「長期に渡り香港の動乱を煽ってきた売国奴である。メディアを利用し、中国と香港を分裂させようとするなど、公然と国家転覆を図っている。一方、自身はイギリス国籍を取得し、イギリスのほか、日本・アメリカ・台湾などに不動産を所有しているが、香港には住まいを持っていない。このことからも、この人間が香港に何の関心も持っていないことは明らかであり、恥知らずである」。尚、香港の大規模デモを支持する一方、香港当局や中国政府の対応を批判していたアップルデイリーは、中国政府の監視対象となっているのです。

そして香港四人組の2人目として名前が挙がっているのが、香港民主化の父と呼ばれている人権弁護士、李柱銘(マーティン・リー)氏(81)です。新華社通信の同氏に対するコメントは以下の通りです。「西洋諸国の奴隷である。法律家という仮面をかぶっているが、これまで香港市民に貢献などしたことがない。アメリカ訪問時には、香港はあと100年イギリスに統治されていた方が幸せだったなどと発言した。また、アメリカメディアなどで中国政府政府への批判を繰り返している」。同氏は、かつて香港政府内で中国政府とのパイプ役なども務めた人物でしたが、89年に発生した天安門事件で中国政府の対応を批判してからは、大陸への越境を禁止され、危険人物として目の敵にされてきました。また、今回の大規模デモ発生当初から、欧州議会のメンバーと密会する様子が中国メディアに報じられており、欧米諸国と結託しデモを支援していると批判されています。

香港四人組の3人目は、陳方安生(アンソンー・チャン)氏(79)です。同氏は97年の香港返還時、香港政府のNo2だった人物で、清廉潔白な政治姿勢から“香港の良心”と呼ばれていました。市民目線での発言もあり、政界を引退した今も香港市民から高い人気を誇っています。同氏は、これまで海外メディアに対し、一国二制度の意義を語ると共に、今回の大規模デモへの支持と、自身のデモへの参加を公言してきました。また今回の逃亡犯条例についても、撤回すべきであると主張し、香港政府の対応を厳しく批判しているほか、林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官も厳しく非難しています。こうした行為が引き金となり、中国政府から危険な反乱分子とみなされてしまったのです。

香港四人組の4人目は、香港立法議会の議員であるとともに、民主活動家としての顔も持つ、何俊仁(アルバート・ホー)氏 (67)です。同氏も他の3人同様、今回の逃亡犯条例に反対するとともに、中国政府や香港政府の強権的なやり方を批判してきました。中国メディアは、「香港議会に出席中に、Padでこっそりアダルトビデオを見ていた人物」と過去のスキャンダルを持ち出し、同氏を批判しています。


かつての四人組に例え、香港四人組と呼んで、著名人四人を非難する中国メディア。「デモは“動乱”や“テロ”同様の犯罪行為である」という方向に世論を誘導し、その黒幕が上述した四人であるかのように思わせることで、中国政府の介入を正当化しようとしているのでしょう。