ミヤコ婆様 (加筆修正) | ぽっぽのブログ

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綴ることなく綴りゆき、やがて想う果て、彼方へ消えゆく定めの声か


(加筆修正しました)


先月、AKIRAも読みなおしたんですよ。


あの漫画、劇中でも2020年に東京オリンピック開催予定なんですよね。結局、物語の中では中止というか、それどころじゃない国家崩壊の事態になるわけですが。


オリンピックが決まった時期に一時、AKIRAが話題になっていましたね。


で、どうも最近、現実においてもオリンピックは厳しそうな感じになってきておると。元々、利権まみれの大層薄ら暗い式典だったので、中止でもいいんじゃないかと思う。


コンパクトなオリンピックとはなんだったんだというくらいに膨大な血税が浪費され、挙句出来たものを見てみると、段ボールのベッドとか板っぺらの観客席とかで、あの大金は何処に消えたんですか?みたいな。


実際、本当に行方がわからなくなった経費とかニュースになっていた気がする。結構な金額で。その後どうなったかわからないけど。


お金の面で語るにしても、損切りせんといかんとこまで来てるというか。一部の人々は既に甘い汁吸ったんだろうし、もう諦めとけやと思う。


選手の人達は残念だけどな。


選手達を尻目にその裏では悪魔のパレードみたいなイベントだったわけだし、中止になってもそれもまた因果応報というところか。まぁ、せめて延期の検討くらいすべきだよなと素人目にも思うわ。


ハイ、で、AKIRA


アキラには「カッコいいババァ」が二人出てくる。


一人はチヨコおばさん。反政府ゲリラの一員で銃火器の扱いに長け、肉弾戦もこなし、ぶっきらぼうながら根はとても優しいオバサン。


そしてもう一人はミヤコ様と呼ばれる霊能超能力ババァ。両目を失明しているけど霊眼によってあらゆるものを見通す婆様。


この婆様がカッコいいんだわ。



「つくづく人間という物は目先が効かぬもの。地表にへばりついて己の足元しか見ておらぬ。たまにゆすられればたちまち大騒ぎ。神や仏の大安売りじゃ」


このセリフ、現実の私達にも当てはまるよな。特に今の時節にはな。神や仏の大安売りも、妙ちくりんなスピリチュアルそのものだ。



「自分達が大きな流れの中に居るという事に気がついておらんのじゃ。学者達が数知れぬほどの計算をする。


途方もない数果てしない時間想像も出来ないエネルギーそれをどうする。学会に発表して発見者の名前が残るそれだけだ。


しかしその流れは目の前にもある。遠方を見るとき人間はどうする。目を細めるではないかもっと大きなものを見るときはどうする。目を開いておっては見えはせぬ。


宇宙はその究極の状態を目指して流れておる。高きより低きへ、密より疎へ拡散し均一へとその方向は一定であり、不可逆である。


その中にあって人間あるいは生物は一見それと反するがごとくに集合された個であるがしかしそれとてやはり大局的には流れの中にあるのじゃ


「今迄閉じ込められていた記憶や感情がいっせいにときはなたれたのじゃ。今お前はその中に居るのじゃ。肉体という枷から脱した精神の世界とでも言おうか。更にその奥の生命の記憶


進化を繰り返してきた生命だ環境の変化に対応して来たと言うだけではこの長く大きな進化は説明がつかぬとは思わぬか


細胞その核を構成している分子の記憶そして宇宙の記憶。


一つの大きな力が解放されたそれが究極の状態を目指して宇宙の大きな流れとなったのだ。


力は分散されたが個々はその種を遠い記憶の中に孕んでいるのじゃ。アキラは人類の進化に曲折をもたらそうとしたのかもしれん


我々の意志が選択できる流れもあるとは思わんか?その結果はお前の子供達が見ることになるじゃろう



アキラはいい漫画だなぁと思う。宇宙とか生命。扱う題材のスケールがデカイわけだが、きちんと描ききれている。


久しぶりに読んで改めていいなと思った。


大体、毎回読むたびにミヤコ様が死ぬシーンにグッとくるものがある。心の調子次第では泣く。



「わしは、まだ楽には死ねんのだ」


自我が崩壊して宇宙の力に飲み込まれ、人の形も失い暴走状態になった鉄雄。その鉄雄を食い止めんと戦うミヤコ婆。鉄雄の念波動を喰らって、遂にミヤコも死んだか!?と思われてからの「わしはまだ楽には死ねんのだ」。



そして鉄雄に最後の一発を見舞って高笑いしながらの絶命。


肉体が死んだ後、霊体からケイに語りかけ、遂には鉄雄をアキラの宇宙意識に吸収させることに成功する。そしてビッグバンの対消滅による世界の滅亡を回避し、物語はクライマックスへ。


ミヤコは鉄雄の走馬燈の中に迷い込んだ金田に語りかけ、宇宙と生命について先に記したセリフを問いかける。


消えゆく鉄雄の追憶の中「(この宇宙の超常性は)不仕合わせしか生まないのか?」と問う金田に今度はキヨコが語りかける。


「でも…仲間が出来たわ…言葉に頼らない心の話が出来る…本当に理解しあえる仲間…。ミヤコや神殿の人達…そしてケイや…チヨコおばさん。鉄雄くんや…金田くん…」


そして金田はケイに助けられて再びこの世に戻ってくる。


ラストの走馬燈内のシーンはなんともいえない切なさがある。


超常的な力を得て暴君となった鉄雄も元々は内気な少年であり、金田とも互いに親友同士。その二人が殺し合うことになるわけだけど、心の底では互いに親友のままだった。


戦いの中、衛星兵器からレーザーが撃たれると金田は思わず鉄雄に「逃げろぉ鉄雄!」と言ってしまうし、鉄雄も能力が暴走し始めると思わず「金田ぁ!助けてくれぇ!」と叫んでしまう。


そして鉄雄の個我意識が消滅してゆく際の走馬燈でも金田は幼少時代に戻り「あの時俺はただ、(鉄雄と)友達になりたかったんだ」と涙を流す。



現実世界でも私達は時に本当は仲が良いはずの相手と不和になってしまう時はある。


本当は誰も憎しみあいたいだなんて願ってないのだ。


本当は、ね。


そしてそれは仲の良い人に限定されたことでもない。全ての人同士だ。


だから私達は少しばかし、「正直」になる必要があるのだ。うわべのエゴの一過性に過ぎない感情ではなく、自分の真の本質に対して。単にエゴの感情に機械的に流されてるだけのことは、本当の意味での「自分に正直になる」こととは違う。


だから正直になるべきなのだ。


この宇宙において。地上での時間には限りがあるのだから。




↓個人的に好きなミヤコの一コマ。人生の問題の約十割がこの一言で片付く。


↓ネットで拾った画像。真の力とはなにか。



宇宙とか生命ってのは、はてしないもんだな。アキラはホントいい漫画だよ。