愛すること、憎むこと、赦すこと、
そして――――闘うこと。

(帯にあった言葉です↑ )

日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作『海の星』を含め、6篇の作品集です。
舞台は、白綱島市。
では、いつものようにちょこっと…(と書きながらも長い…爆笑 )。

みかんの花
三十年前、父は同乗者の若い女性と交通事故で死んだ…。
三つ年上の姉は白綱島を離れ、作家「桂木笙子」として二十五年ぶりに島の式典に招待され、現れたわけですが…。
当時、ヒッチハイクで白綱島へやってきて母のミカン畑を手伝ってくれた健一と姿を消した姉。
母は音信不通だった姉を歓迎したのですが、妹は…。
姉が島を出た本当の理由とは?

海の星
母と二人の侘びしい食卓と、おっさんのだみ声…浜崎の脳裏に蘇った島での生活。
小六の秋に父が失踪。
一日中働く母の助けにと釣りをはじめ、小アジを釣るようになり…
そこに現れたおっさん。「こんなちっこい魚、何匹食っても腹にたまんねえだろ」と。
漁師だというおっさんがある日、イカをさばけるかと家にきたとき、ちょうど母が帰ってきたのです。
「大事な話がある」と言ったおっさんに勘違いをして…。

こちらが、日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作です。
選考委員の北村薫さんは「群を抜いていた。鮮やかな逆転、周到な伏線、ほとんど名人の技である」と絶賛されておりますし、佐々木譲さんも「なんとも巧緻なストーリーテリング。自分の周囲に題材を発見したことで、湊さんの筆力が最高に生きた!」と。


夢の国
窮屈な島での、窮屈な生活…どんなに願っても行けなかった場所…。
夢都子は今、ずっとあこがれだった東京ドリームランドに夫と娘と共に来ていたのです。
厳しかった祖母のことや、唯一行くチャンスのあった高校の修学旅行の行き先が変更になってしまい…やけっぱちになって夢都子が取った行動は…。


雲の糸
今やもっとも注目される若手アーティストとして数えられるようになった黒崎ヒロタカでしたが、島の学校ではいじめられていた過去があったのです。
そのいじめの中心になっていた的場から、故郷の親友だといわれ、自分の会社の創業パーティーにゲストとして来てくれと無理やり頼まれてしまい…。
 島になんか、帰ってくるんじゃなかった――
というのが、ヒロタカの本心だったのですが…。

石の十字架
一年中穏やかな気候の瀬戸内の島に、家の中まで浸水するような台風が襲ってくるとは…。
大きな窓には柵がついているため出ることはできなかったのです。
どんどん水かさが増してくる中、娘の志穂を台所のシンクの上に避難させた千晶は、石けんにナイフを入れ、十字架を掘りながら祈った…
志穂にその石けんを持たせ、千晶は十字架にまつわる子どもの頃の島での話をし始めます。
小五の春に転校してきた千晶に手をさしのべてくれた、めぐみのことを…。


光の航路
いじめの行きすぎた行為は、大人がやれば犯罪とされ、子ども同士なら誤魔化される――。
自分が小学生の頃、小さな田舎の島の小学校にいじめなどあっただろうか。
大崎航は異動願いを出し、生まれ故郷・白綱島の小学校に赴任することに…。
ところが、小学校にはいじめが存在し…航はいじめ問題と直面することになります。
故郷に戻ってきても、航には相談できる相手がいなかったのです。
こんなとき、中学の教師をやっていた亡き父ならどうしたのだろうと…。
父の教え子だったという男が航を訪ねてきたのですが。


※『望郷』の刊行を記念して川柳を募集しているそうです。お題はもちろん「望郷」。
優秀作品に選ばれた20名に湊かなえさんが選んだ「ウキウキ望郷セット」が送られるそう。
応募はメールがTwitterで。締め切りは6月28日(金)だそうです。
詳しくは、文藝春秋さんんの、湊かなえさん『望郷』の特設サイトで)


湊かなえさんからのメッセージとして「私にしか書けなかった、島の物語です」と特設サイトにありました。本当にまさにそう…。
狭い村社会…「村」ではないのですが、「島」は特に孤立しておりますし…。
閉塞感とか…そこはあたしのいた田舎も似ているところがありましたので、思わず共感してしまいました。
湊かなえさんの本は、残すところあと『サファイア』だけ未読であります。
この新刊までは完璧なんですけどね(笑)。