企業・大学内のスパイ抑止 自民が対策提言へ 中国想定、調査・分析の機能強化827日日本経済新聞電子版)

 

本文抄録

(1)企業や大学での従業員や研究者、教員、留学生によるスパイ活動

(2)中国への情報流出リスク

(3)公安庁や内閣情報調査室などインテリジェンス機関に新設

(4)企業のスパイ対策や情報対策部門の官民の人材交流

(5)米国での中国人のスパイ容疑

(6)中国の「国家情報法」

(7)「ファイブ・アイズ」はスパイ抑止などの情報漏洩対策が前提

 

 

<私見:受験生減少に悩む大学、危機意識のない大企業幹部の息子・娘、国会議員や皇族の息子や娘、企業で自分の評価が低すぎると不満を持つエンジニアなど、いくらでもいる>

 

 

記事

(1)企業や大学での従業員や研究者、教員、留学生によるスパイ活動

自民党は企業や大学での従業員や研究者らによるスパイ活動を抑えるため政府に対策拡充を促す提言を年内にまとめる。

調査・分析にあたる専門組織の創設などインテリジェンス機能の強化策を議論する。

米中対立を踏まえた経済安全保障の一環で、中国への情報流出を念頭に置く。

 

(2)中国への情報流出リスク

同党の新国際秩序創造戦略本部(岸田文雄本部長)で検討を始めた。

甘利明座長は中国への情報流出リスクに触れ「軍事に関わる機微な情報から幅広い市民情報までインテリジェンス機能の必要性が広がっている」と語った。

企業でのスパイ活動は他国に通じる人が社員として入り込み、安保上の機微情報などを得て本国に提供する行為だ。

大学など学術機関に教師や留学生として入り、国内外の政府や企業と取り組む共同研究の情報を抜き取るケースも想定する。

 

(3)公安庁や内閣情報調査室などインテリジェンス機関に新設

提言の柱になる新組織は公安調査庁などに設ける案が浮上している。

公安庁や内閣情報調査室など日本のインテリジェンス機関に経済安保に特化してスパイを調べる専門部署はないという。

経済安保に詳しい国分俊史多摩大大学院教授によると、米中央情報局(CIA)や英秘密情報部(MI6)は経済安保の専属班があり企業や大学と情報を交換している。

新組織の設置は米英の機関を参考にする。

安保関連の政府調達に関わる企業の契約や軍事転用できる技術を持つ学術機関の海外との共同研究を巡り政府が情報共有する。

 

(4)企業のスパイ対策や情報対策部門の官民の人材交流

提言では、重要な情報をもつ企業に対し政府が経済安保上の注意事項をまとめた経営指針をつくるよう促進する。

経営者らに順守を求め、社内にスパイ対策を専門とする役職や部署の設置を働きかける。

情報流出の懸念などを定期的に政府に報告するのも促す方向だ。

政府に公安庁などの予算と人員の拡充も要請する。

官民の人材交流も期待する。米国は米連邦捜査局(FBI)やCIA、国土安全保障省、企業が派遣し合う。

国分氏は「米国企業はFBIやCIAの元職員や元軍人を採る。日本でこうした実例は少ない」と話す。

 

(5)米国での中国人のスパイ容疑

米国では中国による民間人を使った産業スパイ活動が疑われる案件の逮捕例が目立ってきた。

近年は米国の航空関連メーカーの技術者に情報提供を迫った中国国家機関の諜報(ちょうほう)員とみられる人物が逮捕された。

中国の大学との雇用関係を隠して米航空宇宙局(NASA)の研究に携わり、政府に虚偽の説明をした疑いなどで米国の大学教授が逮捕された例もある。

 

(6)中国の「国家情報法」

市民や組織に国家の情報収集への協力を義務づける。政府の情報収集の権限は強まってきた。

日本の製造会社や金融機関が中国企業と提携し中国側の情報システムに移行する事例などがある。

「取引先や融資先が持つ重要な技術やデータ、財務や人事情報まで中国側に流出するリスクがある」と話す。

 

(7)「ファイブ・アイズ」はスパイ抑止などの情報漏洩対策が前提

機密情報を共有する米英など5カ国の枠組み「ファイブ・アイズ」はスパイ抑止などの情報漏洩対策の整備が前提とされる。

自民党の薗浦健太郎総裁外交特別補佐は「スパイ対策を強化しないとファイブ・アイズが持つ秘密性の高い情報に深く関われない」と語る。