『僕たちの町は1か月後ダムに沈む』閉幕!
舞台稽古の前、準備中のみんなや舞台空間や劇場全体を眺めながら、舞台監督にぼそっと
「なんかすごいねー。こんなになるんだねー」
と言ったら、舞台監督が「そうなんだよ。だいたい1人が口にしたらそうなるんだよ」みたいな、なんかそんなニュアンスのことを言ってて、なるほどなーと思いました。
上田と田村が「やるか」と口にしてスタートした僕ダム。たった2人の企てが、こんなにも大きなことになったこと。そうしたいと願って頑張ってはきたけれど、目の前に現れて、実感して、でもどこか夢のようで、だからちょっと他人事のように「なんかすごいねー」と。
たくさんの人を巻き込んで、巻き込むからには責任重大で、作品づくりと同時に公演づくりも頑張らなきゃで、えんぶる3人からするとかなり大きな風呂敷を広げた今公演でした。
それをカタチにしてくれたのは、夢のような時間と空間をつくってくれたのは、出演者の努力の積み重ね、スタッフの尽力、そしてみんなを送り出してくれたご家族のご協力あってのこと。
企画スタートからトラック返却後の帰宅まで、後悔も落胆も悔しさも腹立たしさも感嘆も驚嘆もツッコミも嫉妬も執念も応援も祈りも寂しさも笑いも涙もあってなんだかもうとてつもなく心が忙しかったですが、
ど真ん中に、いま、なによりも大きく、深く、感謝があります。
心から感謝しています。
本当にありがとうございました!!
はー、楽しかった。
幸せでした。
あの、えっと、いいおっさんがこんなこと言うのもどうかと思いますけど、たぶん一言でいうと、青春でした。
ありがとうございました!
僕ダム本番まであと3週間
こうやってたくさんの人が稽古場に集います。
当たり前といえば当たり前ですが、これ、地味に、マジで、すごいことだと僕は考えています。
仕事でもない。
契約書も取り交わしていない。
でも、みんなが、生活のあれやこれやに都合をつけて、稽古場にくる。
僕はこれを「小さな奇跡」と呼んでいます。
僕ダムは出演者14名。
全員揃うのは奇跡です。
当然、毎回奇跡は起きませんでした。
そんなとき、代役の存在が大きかったです。
浅葱ヒューマンというおもしろい響きの劇団からGill(ジル)と夜銀(やしろ)というこれまたおもしろい名前のお2人が稽古場代役として入ってくれました。
また、その日の出番の有無に関係なく稽古場に入り、状況に合わせて、いろんな役の代役をやってくれた出演者の面々。
なかでも等松くんとひかりちゃんにはもうほんとに何役もやっていただきました。
代役に入ってくれた面々には本当に感謝しかありません!
あ、いや、ダメ出しもありました!
(ダメ出しという言葉は最近叩かれ気味ですが、あの、いい意味のソレとご理解ください)
シーンを良くしたいのはもちろん、やってもらうからには演者としてその人のプラスになれば!という思いがありました。
代役の芝居もちゃんとジャッジする。
そんなこんなで、奇跡が起きなくてもしっかりと稽古を進めることができる。
代役の存在は、本当に本当に大きな推進力となりました。
あと、稽古場の居方。
これも大事だと考えているのですが、それが最近、みんな、すごいんです。
舞台上で起きてることへの視線の熱が。
視聴率の高さがハンパない!
誰も観てない稽古と、誰かが観ている稽古。
この違いはなかなか大きいです。
演るほうの意識が多少なりとも変わります。
でもそれより喜ばしいことは、みんなの見る目のレベルが格段に上がるということです。
稽古はそのシーンを繰り返します。
ダメ出し(いい意味の笑)もあります。
一回限りで本番を見るのとは訳が違います。
いま何が起きているのか。
うまくいってるのかいっていないのか。
どうすれば良くなるか。
どうしたって考えます。
自分の役へのフィードバックだってするでしょう。
そのセリフそのシーンその作品のチェックは、別のセリフ別のシーン別の作品にも生きてくるのです。
なので、いまの稽古場は、まずまずいい稽古場だと思っています。
残念ながら100%のパフォーマンスはなかなかできません。
それは日々研鑽しているようなプロの方でも同じ。
また集団創作なのでバイオリズムもバラバラだから尚更難しい。
そこにきて僕らはアマチュアで、週に1回の稽古ではなかなか積み上げるのが難しくて、1歩進んで2歩下がることもありました。
でも、だんだんと、とにかくやってみて、無鉄砲に探り、調子のいい者が引っ張り、ひとりひとりが踏ん張り、代役が下支えし、見る目が人を育てて、いい刺激がいい結果に繋がり、信頼やチームワークが生まれ、いい稽古場になってきました。
「いい稽古場にしようとしたからそうなった」よりも、「いい芝居にしたいから頑張ってたらいつの間にかいい稽古場になってた」の割合が高め。
いい稽古場はいい結果を生みやすくなると思います。
その意味では、まずまずの位置につけた感じがしています。
小さな奇跡を積み重ねながら、奇跡が起きる確率をすこしでも上げる。
稽古にはそんな側面があるように思います。
たくさんの方にご来場いただきたい!
との思いから、すこし長い投稿をしてしまいました。
表現ユニットえんぶる
第2回公演
『僕たちの町は一か月後ダムに沈む』
9/2(土),3(日)
大胡シャンテマルエホール
是非ぜひ観に来てください!
よろしくお願いいたします。
公演情報
https://enble.jimdofree.com/次回公演/
ご予約
https://ticket.corich.jp/apply/245484/
表現ユニットえんぶる第2回公演 『僕たちの町は一か月後ダムに沈む』
表現ユニットえんぶる 第2回公演
『僕たちの町は一か月後ダムに沈む』
⬛︎あらすじ
「同窓会を行います。タイムカプセルの鍵もお忘れなく」
ある日、そんなハガキが僕たちの元に届いた。
集まったのは、もうすぐ水の底に沈んでしまう中学校。
僕たちがダム建設に反対して立てこもった思い出の教室だ。
あれから20年――。僕たちは、大人になった。
⬛︎公演日時
2023年9月2日(土)、3日(日) 〈全3公演〉
▶︎2日(土) 13:00~/18:00~
▶︎3日(日) 12:00~
⬛︎会場
大胡シャンテ マルエホール
〒371-0223 群馬県前橋市大胡町15-1
⬛︎入場料金(日時指定・全席自由)
一 般:【前売】2,000円/【当日】2,500円
中高生:1,000円(前売・当日共に同料金)
小学生:500円(前売・当日共に同料金)
⬛︎チケット予約
CoRich舞台芸術
https://ticket.corich.jp/apply/245484/
⬛︎出演
前山圭右
上田裕之(表現ユニットえんぶる)
今泉奈穂(あちゃらかきっず)
鈴木ひかり(劇団ザ・マルク・シアター)
七五三木貴宏
郡司厚太(a/r/t/s Lab)
大沼ゆい
栗田綾菜(演劇の会2nd.ぺんぎん)
雨宮潤
佐藤駿((a)float)
田村花恋(表現ユニットえんぶる)
等松弘基((a)float)
星野ひかり
やよ(CSproject)
⬛︎声の出演
久保田雅彦(劇団ブナの木)
安田学文(劇団ブナの木)
かとうじん(劇団だんでらいおん)
深町容子
雨宮友美
⬛︎スタッフ
作:佐藤秀一(アンドリーム)
脚色:表現ユニットえんぶる
演出:上田裕之
演出補・選曲:田村花恋
音響:早川知雪(Multi Arts)
照明:青木萌(Multi Arts)
舞台美術:七五三木貴宏
舞台監督:夕起ゆきお
演出部: Gill(浅葱ヒューマン)、夜銀(浅葱ヒューマン)
宣伝美術・制作:シモヤマアキコ
協力:ハーモニー、浅葱ヒューマン
企画・製作:表現ユニットえんぶる
僕ダムと八ッ場
「僕たちの町は一か月後ダムに沈む」
初演(2009年1月公演)の企画初期段階では長崎県の諫早干拓のお話でしたが、なんだかんだあってダムの話になりました。
初演執筆時。ダム建設事業の継続か凍結かで振りまわされていた川原湯温泉周辺へ取材に出掛けました。現地上空にはつくりかけの橋。
坂道を登って左側、町のとあるところに「ダムができると ここまで水に浸かります」的な看板がありました。
温泉街周辺を歩き回ったり、地元の方にお話伺ったり、車で付近をぐるぐる巡ったり。
たしか高田屋に宿泊しました。宿の温泉に浸かったり、公共浴場の王湯に浸かったり、脇道を登った無料混浴温泉に浸かったり。
その後、出演者陣でふたたび訪問。そのときは役場の方にご協力いただき、廃校になった小学校を見学しました。たしか、線路を越えて文化財の発掘調査がおこなわれている土地の横に、その小学校はありました。
頭と体にたくさん汗をかいて稽古。
公演は盛況のなか幕を閉じました。
楽屋の楽しさと、袖でのちょっぴり苦い思い出。
さて今回。
再演にあたり八ッ場ダム周辺に単独で2度(そのうち1度は栃木県鹿沼市にある建設中の南摩ダムとのハシゴ)、出演者有志で1度、取材に出掛けました。
あのときの小学校にみんなで行けたらと、記憶とGoogleマップと車を駆使して探してみましたが、あの小学校は見つかりませんでした。場所の記憶違いなのか、或いは水の中なのか。
ネット記事を読むなかで、当時お話を伺った方を見つけました。たまたま歩いてらっしゃるところに声を掛け立ち話でお話を伺った、お食事処 旬 のお方。現 川原湯温泉駅近くにあるキッチン赤いえんとつのご主人。このあいだテレビでも拝見。
取材中、こんな施設はないですか?こんな事を知りたいんですが、みたいなことを訊ねることもままありましたが、どなたも親身になって教えてくださいました。本当にありがたかったです。
町役場に併設されている町の図書館にダム関連の資料がありました。県立図書館にはない図書・入手できなかった図書がたくさんあったので、カードをつくって数冊借りてきました。
沈む前の町並みの写真が、川原湯温泉あそびの基地NOAにたくさん展示してありました。この景色がもうないのかと思うと・・・
八ッ場だけでなく、徳山村をはじめいくつかのダムについて、webサイトやYouTubeや本や写真集に目を通しました。
僕ダムはとある町のとある人々のお話。フィクションです。直接長野原を描いた作品ではありませんが、ほんとうに沢山のことを参考にさせていただきました。
今週末、もう一度八ッ場へ。
借りた本を返しに。
夜中に。。。
チープ
昔むかーし、大学を卒業してまもない頃。友人のお誘いでとあるワークショップに参加したときのお話。
ファシリテーターはたしか、イギリスからやってきたスペイン系ブラジル人、とか、なんかそんなお人。ロペス・ルイス・ラモスとか、そんなお名前のスキンヘッドのお兄さん。進行はすべて英語。僕以外の人は英語が話せて、進行はもちろん英語。通訳兼参加者がいて、序盤だけ、ざっくりとだけ訳してくれたけど、あとはほぼ放置。とにかく顔を見て、聞いて、まわりの反応を見て、推測して、一生懸命分かろうとして。そんなこんなでワークショップで楽しんで学び、たくさんの影響を受け、打ち上げの居酒屋。
イギリスのお人がはじめて覚えた日本語は「♪ちーんちーんぶーらぶーらソーセージ」だったとかそんな話のあと、「君はどんな活動をしてるんだい?」って訊いてきて、言ってることは分かるけど喋れなくて、がんばって、たぶんなんかこんなことを言った。「ストーレートプレイ、スモールシアター、チープ」なんとも残念な英語力。雑な表現。安いということなのか、価値がないということなのか、しょうもないということなのか、謙遜なのかなんなのか。彼は「チープ」という言葉についていくつか質問をした。そして「チープなんかじゃない。君はとても素敵なことをしているんだ。イギリスでは消防士が週末に芝居をしていると、なんて素晴らしいことをしているんだ!って賞賛されるんだ。」みたいな、もうてんで覚えてないけど、なんかそんなような事を伝えてくれた。気がする。仕事でちゃんと働いたうえに文化活動・芸術活動までやるなんてすごい事だよ。みたいな、なんか、そんな。芝居を仕事にしたかった僕は消防士とは違う。だから従順には受け入れられなかったけど、でも、チープなんかじゃなくて、なかなか素敵なことをやっている、かもしれないことは、心に残った。
いま。俳優でも消防士でもないけれど、ウィークデーは働き、土曜日は家族で過ごし、日曜日にはなかなか素敵なことをやっている。