今年も気付けば残す所40日足らず(嘘だろ承太郎)。
毎年恒例の「このマンガがすごい!」の2020版発売・発表も近付いてきました。

そこで、オトコ編・オンナ編のベスト10を予想してみます。


個人的には「このマンガがすごい!」ではベスト10には入らないかもしれないけれど、このマンガも素敵なんだ! と心から叫びたい作品も軽く3桁はありますので、そちらもまた別途まとめたいと思います。

 

まずオトコ編のベスト10を。

 

 

SPY×FAMILY

 

10月に2巻が発売されたばかりですが、先日早くも100万部突破の報が出たジャンプ+の看板作品。

世界同時配信が始まっているお陰で、既に海外でも大人気だそう。基本的に海外ではアニメ人気から火が点くパターンばかりだったので、今後マンガ主導で人気の作品が増えていけば非常に良い流れですね。

互いの正体を知らないスパイの夫と暗殺者の妻、そしてすべてを知る相手の心を読める超能力者の娘という設定が紡ぎ出す物語の妙、それを支える安定した画力。

人気過ぎて投票時に敢えて外す人もいそうなレベルの、圧倒的キングオブエンターテインメント感があります。

「すごい!」に限らず各所で名前を見ることになるでしょうし(既に次にくるマンガ大賞1位も取っていますが)、今後のメディアミックスも盛り上がってそこで更に跳ねるでしょう。間違いなく今年を代表する一作。

 

 

僕の心のヤバイやつ

 

『五等分の花嫁』がアニメで大ブレイクし『進撃の巨人』より部数が出たり、アニメと実写で大盛り上がりの『かぐや様は告らせたい』であったり良質なラブコメが元気の良い昨今ですが、そんな中で大きく話題になって更新の度に盛り上がっているラブコメが『僕ヤバ』。

公式から「両片思い」と明言された市川と山田の甘酸っぱいにも程がある現代的なラブがコメる様子に、迸る感情を持て余す読者続出。

好意を時に婉曲的に時に積極的に、絶妙に表していくエピソードの数々に身悶えさせられること必至です。

時折Twitterで桜井のりおさんが投下する爆弾にも被害者続出。

どっちのラブコメショーで高木さん派と山田派を戦わせてみたい。

ラブコメって、いいものですね。

 

 

王様ランキング

 

一昨年に連載が開始され、各所で話題になった作品。大きく話題になったのは去年という印象ですが、単行本刊行は今回の集計期間内ですので、そうであるならば入るだろうと読みます。

多少絵が拙くとも、抜群に面白いマンガは成立するという優れた見本です。

特にキャラクターと世界設定、物語が非常に魅力的で、老若男女問わず楽しめるファンタジー。

人間に普遍のテーマが溢れており、海外でも受け入れられそうです。

上手いこと映像化も絡めて輸出すれば日本のハリーポッター的な存在にできるのではとすら思います。

 

 

それでも歩は寄せてくる

 

『からかい上手の高木さん』で一世を風靡した山本崇一朗さんが、マガジンで新しいラブコメの連載を始めると知った時は驚きました。

こちらは将棋部の先輩女子と後輩男子という関係性で織り成されるラブコメ。

1話1話は短い中に、身悶えするシーンが沢山ギュッと詰まっています。

とらやの羊羹、文明堂のカステラ、山本崇一朗さんのラブコメ。そんな信頼感と安定感。

こういうのが、良いんです。

山本崇一朗さんや工藤マコトさんなど片山ユキヲさんの下でアシスタントをされていた方々が6桁のフォロワーを持つようになりブレイクしていっているのをとても嬉しく思います。

 

 

潮が舞い子が舞い

 

『月曜日の友達』以来、1年半ぶりに出た阿部共実さんの最新作。

高校2年生の男女が日々繰り広げる他愛もないやり取りが、阿部共実さんらしい突出したセンスによって面白おかしく昇華させられています。

ページの半分くらいをセリフが埋め尽くしていても、一切苦もなく読めてしまう所に力量を感じます。

しかし『月曜日の友達』でもそうでしたが、阿部共実さんの作品はどこで暗黒面に堕ちるのかと警戒しながら読んでしまいます。

大丈夫なのか、この青春感を素直に楽しんでて良いのか、こんなに爽やかなままで本当に何もなく終わるのか……

そんなメタ的な部分も全部引っ括めて、阿部共実作品の味だと思います。

 

 

 

水は海に向かって流れる

 

2014年に出た『子供はわかってあげない』が3位になった実績も持つ、田島列島さん待望の最新作。

本作もあらすじを説明することにあまり意味がない、田島列島ワールド全開な作品。

何よりセリフのセンスが図抜けすぎており、絵と言葉で重い話も軽やかに読ませつつしかし沁みる独特の読み味。

とりあえず何も言わずに読んでみて欲しいですし、同時にインタビューも読んで頂きたいです。

千の言葉を並べるより、その天才性を体感できるでしょう。

 

 

チェンソーマン

 

「最近のジャンプはつまらない」という声は割といつでも聞こえますが、ワンピース、ハイキュー、ヒロアカ、鬼滅の刃、Dr.STONE、約ネバ、ブラクロ、呪術廻戦、アクタージュ等々、そしてこのチェンソーマンがある今のジャンプはなかなか熱いと個人的には思っています。

『ファイアパンチ』でその名を世に知らしめた後、短編でも世間を騒がせつつ始まった藤本タツキさん待望の新連載。

元から画力とセンスの塊でしたが、本作ではそれらが更に洗練されつつゴリゴリに発揮されています。

話が進むに連れてますますエンジンも掛かってくるので、最新巻まで一気に読むことをお薦めしたいです。

 

 

雪女と蟹を食う

 

すれ違ったら振り向かれるような美女と出逢い、その美女のお金で各地で観光をして、美味しいものを食べ、酒を飲み、褥を共にする。

「欲望の総合商社みたいなマンガ」と私は評しています。

Gino0808さんの絵が非常に魅力的で、雪女のようなヒロインが儚い笑顔や憂い顔で佇んでいる姿だけでも成立してしまう感があります。

艶かしさが前面に出るシーンでもどこか品があり、それが作品全体に漂う叙情性にも繋がっています。

27歳で人生に行き詰まった主人公のダメっぷりも文学性を高めており、良い味を出しています。

果たして二人はどのような結末を迎えるのでしょうか。

 

 

見える子ちゃん

 

非常に新感覚のホラー作品。

通常、この世ならざる存在がいたとして主人公に特殊能力が持たせられるなら、それを退治できる能力です。

しかし、本作では主人公は「見える」だけ。脅威に対する何の対抗力も持たずただじっと堪えてやり過ごすだけ。

ただ、現実でも自分の力で全てを解決できる局面ばかりではない事を思うとある種の批評性すら感じます。

時折ハートフルな話も交えてきて心がぽかぽかするのも良いです。

1巻だけより、2巻まで一気に買って読むのをお薦めします。

 

 

ワンナイト・モーニング

 

とにかくTwitterで大いにバズって超人気となった本作。

男女のワンナイトラブと、その翌朝の朝ごはんを描いた連作短編となっています。

愛し合った翌朝の朝食にフィーチャーする着眼点もさることながら、その描き方のエモさがこの作品の最大の魅力です。

男性・女性それぞれの感情の機微の良さみが深く、様々な感覚が芽生えます。

一話完結型なので気軽に読めるのもいいです。

 

 

その他、次点の作品などについて。

 

 

プー●ン大統領的なサムバディのパワフル極まりない異世界転生。

コアな人気だけではないのは部数が証明しており、馬場さんの作品がブレイクして私は嬉しいです。

 

 

花沢健吾さん最新作『アンダーニンジャ』や

 

鳥飼茜さん最新作『サターンリターン』や

 

浦沢直樹さん最新作『あさドラ!』辺りはベスト10入りしていても全くおかしくない所。

 

異世界モノはちょっと……という人すらも楽しめてしまう『異世界おじさん』も有力候補。

 

 

対象期間中に4冊出た『バトゥーキ』は尻上がりにとても面白くなっているのですが、一番面白い最新5巻が対象期間外なのと、1巻だけで切ってしまった人もそれなりにいるのではないかという懸念が少々。

 

 

今年一番盛り上がっている、期間売上でも遂にワンピースを超えた鬼滅について。最高に盛り上がり始めたのはギリギリ集計期間の前後であろうこと、また有名すぎて敢えて外す人もいるタイトルであろうことからベスト10には入らないと予想。とはいえ、今の鬼滅ならそれすら突き破ってくる可能性も否めません。

ちなみに、現在一部の巻以外Kindleで30%ポイント還元中のようなので(ジャンプ作品では割と珍しい)気になっていた方はこの機会にいかがでしょうか。

 

 

 

続いてはオンナ編。

 

 

さよならミニスカート

 

今年話題になった少女マンガと言えば、まずこれですね。

連載開始時のりぼん編集長による声明、そして特設サイトの作り込みが話題になりました。

その後も、りぼん作品が何とジャンプ+でも連載されるという正に異例中の異例扱い。

牧野あおいさんは前作『セカイの果て』も、少女マンガの骨格はしっかり保持しながらもりぼんでは相対的に少々ハードな内容でした。だがそれがいい、と個人的には思います。

りぼん、なかよし、ちゃお等でも昔から大人向けではないのかと思うような作品があり、そういったものに触れて様々な想いに駆られることもまた貴重な経験。

故に、こういう作品がりぼんに載っていることに意義があると思います。

 

 

 

君に届け 番外編~運命の人~

 

『君に届け』の正式なその後のお話。

爽子も登場しますが、本作の主役となるのは元々は同じ風早を好きだったくるみ。

『君に届け』は、そもそも矢野ちんやちづなどサブキャラの方の恋愛の方がエンターテインメント性に溢れている部分がありました。

そんな彼女たちの恋模様に負けず劣らず、くるみの物語も非常に上質です。

端的に言って面白く、当たり前過ぎますが椎名軽穂さんはマンガが上手いな、と語彙力の低い感想を抱いてしまいました。

本編を読んでからがベストではありますが、こちらから読み始めても十分楽しめるであろう良い王道恋愛マンガです。

 

 

海街diary

 

2008年2位、2012年7位。

2018年末に出た最終巻で三度ベスト10入りするかどうか、正直五分五分だとは思いますが、『7SEEDS』も16年の連載が終了した際にはベスト10入りしていました。

何よりあのラストを見せられては挙げずにはいられません。

今更解説するまでもない超名作ですが、終始「人間」を描くのに長けた吉田秋生さんの凄まじい力量を感じさせられた内容でした。

心の深い部分に浸透してきて、単純な悲しさなどではなく名状し難い複雑な感情からの涙が零れます。

鎌倉に行く度に思い出して聖地を巡りたくなる、宝物のような作品です。

 

 

グッド・バイ・プロミネンス

 

2019年で最も注目すべき新人作家の一人でしょう。

まず、端然とした絵が非常に魅力的。

そして、一冊の本としての満足感がとても強いストーリーテリング・構成力も煌めく才気を感じさせてくれます。

今日も回る世界の中で、奏でられ響き合う様々な感情と感情の綴織。

それぞれに切実さを持ちながら発露したり秘められたりしている想いたちが豊かに描かれた、非常に令和感のある鮮烈な一冊です。

 

 

絶対BLになる世界 VS 絶対BLになりたくない男

 

SNS上で大人気を博した、メタBLマンガ。

タイトル通り様々な事象がBL展開に収斂していく世界で、その流れに抗って平和(?)に暮らそうとするノンケの青年の物語です。

「ゴミ捨て場で倒れている男を不用意に助ける」

「男の幽霊がやってくる」

「めちゃくちゃ可愛い女子だと思ったら男の娘」

など、BL好きには「あるある!」と思えるイベントがガンガン起こり、アプローチされてはそれを頑張ってスルーしていく主人公。

果たして、主人公は最後まで回避し続けられるのか、それとも……

 

 

お兄ちゃんは今日も少し浮いてる

 

『緑の罪代』、『妖怪村の3つ子たち』と来て、この『お兄ちゃんは今日も少し浮いてる』。

作家買い大安定の梅サトさん最新作です。

今までの作品の中でも最も自然体で、良い意味での脱力感を覚えます。

しかし、それ故に逆説的に深部まで沁みる物語となっていました。

男性にもお薦めできる秀作です。

 

 

裸一貫!つづ井さん

 

つづ井さんが帰ってきた!

いつも通り、いえいつも以上に読むと沢山の元気を貰える一冊です。

推しがいる人間としてはつづ井さんの推し活に狂おしく同意したり祝福したりせずにはいられません。

周囲の理解のあり過ぎる友人たちもまた素敵ですし、振り切れた熱量には笑いが止まらない所も。

作者のつづ井さんがどのような想いでこちらを上梓したかということを記したnoteがまた名文ですので、ぜひご一緒に。

「裸一貫!つづ井さん」についてちょっと真面目に話させてくんちぇ〜

 

 

新しい上司はど天然

 

2019WEBマンガ総選挙で1位に輝き、Amazonでは136個のレビューが付いて★5が94%、★3以下は何と0という超高評価。

とにもかくにも30超えの上司が可愛いコメディです。

そう、齢30を超えた男性が、そこらのゆるキャラが裸足で逃げ出すほど可愛いのです。

「可愛いは最強なんです!かっこいいの場合、かっこ悪いところを見ると幻滅するかもしれない。でも、可愛いの場合は、何をしても可愛い!可愛いの前では服従!全面降伏なんです!」

という、『逃げ恥』のみくりの言葉がそのまま当てはまるような上司に萌え狂って下さい。

 

 

ゲイ風俗のもちぎさん

 

今やTwitterでのフォロワー数が50万人を超える人気者・もちぎさんによる、主にゲイ風俗で働いていた時の体験などの半生を綴ったエッセイマンガです。

当時19歳のものとは思えない透徹した思考と言動が人間の本質を突いていて魅力的です。

もちぎさんよりも更にある意味上手なボネ姉の「付き合ってなくても向き合ってはいるの」といった名言の数々も忘れられません。

毒親から理不尽な扱いを受け、死にたいという想いを抱きながらも乗り越え、逆に数々の人を救う存在となったもちぎさん。

そんなもちぎさんも今現在は田舎で穏やかに暮らしているということが個人的にはとても救いになります。

人生を生きる上で大事なことが詰まっている一冊です。

 

 

東京タラレバ娘 シーズン2

 

このマンガがすごいオンナ編は結構男性選者も多く、それ故に男性でも読み易い少女・女性マンガというのが一つのポイントになります。

その点で、東村アキコさんの作品はその筆頭。

すごい!だけでも『きせかえユカちゃん』『ママはテンパリスト』『海月姫』、そして『かくかくしかじか』に至っては4年連続で10位以内に入り、最終巻の際は1位となりました。

もちろん、『東京タラレバ娘』も2016年に2位。

その続編ということで文句なく筆頭候補に挙げられます。

少々毛色が変わった部分で賛否はありますが、今回もランクインしている方にベットします。

 

 

 

そして、オンナ編次点。

 

 

村井の恋

 

今年、次にくるマンガ大賞webマンガ部門でSPY×FAMILYに次いで2位となった新星。

昨年、トリガーで行われたマンガプレゼン大会優勝者が推していた作品でもあります。

男女問わず読んで楽しい作品であり、ベスト5入り位していても驚きません。

 

 

ポーの一族 ユニコーン

 

長く生きていると、「エディス」のその後をご本人が描いた物語が読めてしまう……人生って凄い(※凄いのは御年70歳で描いて下さっている萩尾望都さんです)。

『春の夢』から続いてやはり変化した部分で賛否両論はありますが、個人的には読めて嬉しいです。

『春の夢』が2018で2位だったのでベスト10入りはしない読みですが、していても全くおかしくありません。

 

 

恋と弾丸

 

オトコ編に分類される作品を含めても、2019年上半期に1巻が発売された作品の中の売上では圧倒的1位だった『恋と弾丸』。

どちらかと言えば、普段あまりマンガを読まないという方も含めたライト層に大きな支持を得ている作品です。

故に、「すごい!」での順位がどうなるかはなかなか読み辛い所ではあります。

 

写楽心中 少女の春画は江戸に咲く

 

集計期間ギリギリの発売日でなければ、ベスト10入り予想に入れていたであろう作品。

男性でも読み易い作品ですので、春画に興味のある方もない方も読んで欲しいです。

今年は秋田書店の女性向けに良い作品が多かったですね。

 

 

かげきしょうじょ!!

 

シーズンゼロ発売に伴ってベスト10入りしていたら嬉しいですねえ。

 

 

 

番外

 

夢中さ、きみに。

 

何なら俺マン2019などでも非常に高確率でベスト10入りしてくるであろう作品ですが、オトコ編なのかオンナ編なのか判別できなかったので一旦省きました。

面白さは折り紙付きなので、未読の方はぜひ。