消えていく中小企業診断士 | 猫好きのブログ

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資格試験とその応用

ある団体のアンケート調査によると会社員が取りたい資格第一位の中小企業診断士。この資格は5年毎に更新が必要だが、最初の更新をしないで資格が失効する人が合格者の1割もいるという。

 

あこがれの診断士になったのにこの多さはどういることだろうか。独立すると顧客からは先生と言われ、勤務先では優遇され、名刺を出すと取引先からも一目置かれる・・・・・はずだったのではないか。

 

という妄想を置いといて、士業の中でも高率な失効率の謎に迫ることにする。

 

合格者は実務補習という実際に企業診断を行う研修に参加する。研修終了条件として、3社の診断が必要で、5日×3社=15日間である。この後登録となるが、実際に診断士協会に入って活発な活動を行う人が1割(開業者に多い)、会社の片手間に参加するやや消極型が3割、全く活動をしない人が6割のようだ。

 

これは診断士が協会に加入する義務がないことに起因するのであろうが、当初から活動的でない人が多いことに注目すべきである。たしかに年会費が8万円と高いのであるが、資格取得自体を目的とする診断士が多いということではなかろうか。

 

別に診断協会に加入しなくても、会社において経営指導や診断に従事していれば、資格を生かしたことになるので問題はない。ところが色々な人のブログを見ると、企業内診断士といっても、大抵は普通のサラリーマンであって、合格したからといって仕事の内容が変わるわけではないことが分かる。

 

診断士協会に入ると研究会や先輩診断士の仕事に参加する機会が得られる。このような普通の会社員こそ、参加した方がいいのかもしれない。

 

ところがである。診断協会関連の活動といっても、仕事がらみだから参加者は真剣である。開業したばかりの新米診断士は先輩方の仕事を手つだうことで、顧客に名前が売れ、先輩に目を掛けてもらえ、ノウハウを吸収することもできる。要は生活が懸かっているわけだから、特に真剣にならざるをえない。この中に普通のサラリーマン生活を送っている企業内診断士が参加したとしても、真剣度が不足すると、やはりいずらくなるのではないのだろうか?

 

仕事の手伝いといっても、恐らく無償に近いボランティアだろうし、会社が休みの土日に参加するということは、よほど好きでないと疲れが来週に持ち越されてしまう。

 

合格後の1年間は、誰もがお国が認めた専門家になったという高揚感があり、まだやる気があるのだろうが、だんだん緊張感が失われ、最後は面倒になって、ただの資格持ちになるのではなかろうか?

 

5年後の更新の条件として、5回分の講義の受講と診断の実務従事証明書が必要である。普段実務従事していない人は知り合いの会社の社長に証明印をもらうようだ(内容的には厳しくないらしい)。講義の受講も年に1回のペースで出席すればよいので楽なはずであるが、全く出席せずに4年以上経過し、最後の年に慌てて参加する人もいるようだ。だが講義の回数もそれほど多いわけでないので、アウトになりやすい。

 

ただ救済制度もあり、最大15年間、診断士(休止中)と表示をすることを条件に失効をストップさせるという方法もある。結局、失効者、休止者、ぎりぎり更新出来た人を入れると、実質的に無活動の診断士は相当いるような気がする。

 

合格するのに平均3,4年かかるはずなのに、合格するとこの有様である。経理や法律のような知識、技術的な分野だと実務に就かなくても独学で実力を維持できるが、診断士のような総合力、応用力が問われる分野は使わないと確実に劣化する。

 

結局は経営診断というものは、必要性はそれほど高くないのであろうか。必要性はあるのだが、相手を満足させるだけの実力をつけるには資格の取得だけでは不十分で、多数派である自己啓発目的の人は、元々、プロのコンサルタントのレベルなぞ求めていないのであろう。

 

診断士はゼネラリストだが、コンサルタントとして生きていくには、スペシャリストとしての強み(マーケティングとか財務管理とかの各分野のプロのレベル)が要求される。そのため、一生研鑽を積む必要がある点は、弁護士、会計士たちと同じである。だが自己啓発型の人たちは、生活の基盤を持っているので、プロのコンサルタントのレベルを最初から求めていないのであろう。

 

診断士は高度な専門家であり、第一線で活躍するコンサルタントは事実その通りであろう。だが自己啓発型の割合が高いことから、弁護士、会計士などと比べ見劣りしてしまうような気がする。