甘い実は猛毒・死亡
ドクウツギ
ドクウツギ科ドクウツギ属の落葉低木。
崩壊地に侵入するパイオニア植物。
葉は濃緑で羽状複葉的。
毒木
夏に実が熟すがあか赤より紫黒色に変わる。
赤い皮は甘い汁で満ちている。
赤皮は毒がないが、
赤皮の下の果実が猛毒で、
激しいケイレンを起こし、
呼吸が停止して死ぬ。
有毒成分は全株。
特に果実に多い。
毒成分 コリアミルチン。
全口方言はイチロベゴロン、ウシコロシ、
サルコロシ、ネズミコロシ、
ウジコロシ。
ドクウツギの赤い甘い実を食べての中毒死は、
戦前かなり多かった。
統計によれば中毒死は年間300件、
そのうち60%は毒キノコ、
10%はドクウツギの中毒死であった。
『金泉村郷土史』(1937)にも、
村内の毒草28種をあげ、
特にドクウツギについては、
村の少年が食べ100時間もがき苦しみ死亡した例をあげ注意を喚起している。
佐渡でも海岸から山頂まで分布し、
陽当りのよい河原、
原野、道ばた、
林の縁によくみられる。
戦前は村々でドクウツギ狩りが行われたので、
人里にはほとんどみられない。
羽状複葉的な濃緑な葉。
花は淡い黄緑色で目立たないが、
7月にはいると鮮やかな赤い実が目立ってくる。
花どきの小さな花弁が、
花の後大きくなって子房をとりかこみ、
鮮やかな赤にかわり、
やがて紫黒色になる。
この赤い皮(花弁の変わった物)が甘い汁で満ちている。
この赤実の甘い味が子供を誘い幾人もの子供の命をうばったことか。
全株が有毒であるが、
特に果実が猛毒。
厳密にいえば赤い皮は毒がないが、
赤い皮の下の果実が猛毒なのである。
猛毒成分はコリアミルチンとツチン。
激しい腹痛と大吐血、
激烈なけいれんを起こし、
呼吸を停止して死に至る植物毒物として最強の一つである。
雌花は花の後、
5枚の花弁は肥大して多肉となり、
内部の5個の果実をつつむ。
赤い皮で5稜の果実はフロシキで包まれた状態となりフロシキヅツミの名で呼ばれる。
鍋が割れる時、
鍋底の中心から放射状に割れ目ができる。
ドクウツギの果実も五稜をもち、
5つの割れ目をもちナベワリウツギともよぶ。
慢性的飢饉のつづいた江戸時代、
佐渡の子供たちもドクウツギで多くの命を失った。
佐渡奉公所はドクウツギ、ヒョウタンボク、
ツタウルシの3つの毒木について、
植物図を付してあやまりのないよう注意を喚起している。
「民間フロシキヅツミととなえ、
方言ナベワリウツギというもの。
これもその毒酷烈畏るべきものなり。
この国の山民、
たやすくもすれば、
小児あやまつことをあるをもって、
ここにかいて出す」と
『佐渡志』に述べている。
「ドクウツギを腹いっぱい食うて助かったのは俺一人か」
というのは、
真野町笹川の和泉秀雄さん(昭和8年生まれ)である。
「小学校にあがらない子供の頃、
赤い実をいっぱい食べた。
甘いのでいくらでも食える。
どんどん食べて腹いっぱい。
ウマーイといって走って家に帰ったが家の前で気分が悪くなり母親に抱きつきながら、
全部吐き出した。
そのあとは覚えていない」。
全部吐き出したので助かったのである。
現在ドクウツギ狩りは行われていないため、山野に多く自生してます。絶対に食べないように‼️
「佐渡薬草風土記:伊藤邦男」
(1993)
引用させていただきました