前回の投稿から早いもので1年となった。

この間、コロナの影響や筆者自身も体をこわしたこともあってプライベートの活動が極限まで低下し、同時にPCに向かう機会も激減していた。が、政府のコロナの5類への移行が近いこともあって久しぶりにページの更新を行うことにした。

 

まずは、先日同窓会である又信会の理事会に出席したことである。

その議題でもあった香川大学経済学部100周年のことについて述べたい。

 

香川大学経済学部と法学部の前身、旧制高松高等商業学校が設置されたのは大正12年12月10日である。

勅令502号により文部省直観諸学校の定員令が改正され、官立高松高商の官制が初めて追加された。

すでに建築に着手されていた高松高商の校舎竣工は年末も押し迫ったクリスマスイブの12月24日だという。

これをもって、香川大学は本年11月中旬に100周年の記念式典を行うという。

本来ならば、旧制高松高商時代に開校記念日とされていた11月3日にすべきものである。上記日程の根拠がよくわからない。

 

そのせいなのか、同窓会である又信会は、経済学部の100年を祝うとともに、これとは別に3年後に又信会の創立100年を祝う。

これはわかる。

同窓会である又信会は経済学部単独ではなく、経済学部と法学部の両方の卒業生で構成されている。そのことから、学部の創立を祝うとするより、同窓会の創立記念日のほうが双方にとってバランスがいいということなのだろう。高松高商の最初の卒業式は昭和2年3月11日に行われ、その年6月の第一回同窓会名簿作成にあわせて「又信会(ゆうしんかい)」という名称を初めて使ったことを起点とする。

法学部の源流は昭和51年に新設された経済学部「経済法学コース」であるというものの、法学部の卒業生にも、すんなり、ともに100年を祝ってもらうとすれば、経済学部の100年より同窓会の100年を祝うとしたほうが自然ということである。

近年データサイエンス学部を新設した滋賀大学が、「経済学部の100周年」ではなく共通の源流とされる「彦根高商」の「創立百周年記念事業」としたことに通じる。理由として、これはよくわかる。


筆者として奇異に思うのは、香川大学経済学部当局の運営センスである。

上述のように創立記念式典の日付の根拠が希薄であることはひとまずおいておくとして、まだ政府の言うように月に本当にコロナの影響が収束するかどうか全然未確定な今年の秋にわざわざ行う必要があるのか?

そもそも、大学の過去の記録を確認すれば、現「校友会館」を新築寄付した経済学部創立50周年の起点は一期生が入学した開校の年、大正13年とされている。唯一の正史である「又信回顧三十五年」を編み、記念事業として現「又信記念館」を新築寄付したその前の創立満35周年についても、起点は同じである。
いっぽう、香川大学の1年前に前身校が創立された滋賀大学経済学部の100年記念式典は令和5年の今年に行われる。

これは、旧制彦根高商の第一期生を大正12年に受け入れて開校したことに起因する。

これがため、滋賀大はギリギリコロナの自粛期間外に挙行することになるわけだが、それを本校に置き換えてみればどうだろう。

 

大正11年創立の滋賀大に比べ、さらに1年の余裕がある香川大ならば、本来それを利用してじっくりと準備を行い、コロナで痛めつけられた卒業生や企業側の経済状況が回復のするのを待って、相応の周知期間と寄付を集めて挙行するのが正道である。

それを、まずは日程ありきで窮屈な日程で大慌てで準備することの意図がわからない。

同じやる以上、最大限の効果を求めるのが企業家マインドであろう。

それを官僚的というべきか、考えがないというべきか・・・。

高松高商より先に開校しコロナ禍のさなかの令和4年に100周年記念式典を行った九州の大分大学経済学部では、すでに準備がコロナ期間前に始まっていたこともあったのか、令和4年春までに1億4千万円の寄付を集めた。滋賀大学経済学部では、募集期間を3年間と多めに取って2億の目標で寄付を募集するのだという。「減ることはあっても増えることのない」(と思われる)地方国立大学文系学部の貧弱な予算の支援としては億単位の資金は馬鹿にできない金額であるはずである。

 

大分大学経済学部100周年記念碑除幕式

 

逆に、香川大学と同時に大正12年12月に設立された旧制横浜高商、すなわち近年は設備的にも偏差値的にも旧二期校時代のそれを回復したと思われる横浜国立大学経済、経営学部では、同じく意外にも100周年の記念事業の目標募金額は3千万円でしかない。もっとも同校は、創立時から首都圏所在で所轄官庁までの交通費がほとんどかからないという地の利の良さを生かした陳情名人である。歴代文部省から予算を引っ張り出すのに長け、創立時の旧校舎は「関東大震災」を理由に旧制高校のデフォルト規格である木造二階建の校舎ではなく、例外として鉄筋の本館を認めさせた。現在の保土谷常盤台キャンパス移転時(元は戦前からあるゴルフ場の程ヶ谷カントリー倶楽部)には、狭くて劣悪な学習環境が横浜国大の学生運動の激化を招いたという論理で広大な高台のキャンパスを要求し、旧帝大である大阪大学吹田キャンパスの倍の土地購入予算を分捕ったという実績がある。無理をしなくても別段、手元不自由は感じていないということだろうか。

 

まあ、学部スタッフの明快な意思として、算術よりも学術を重視されるならばそれはそれで尊重すべきことなのだと思うが、文系学部と言ってもいまや昔のようにチョークと黒板だけで学部教育が運営できるというものではない。

先立つものがなければ、研究以外のことに多大なエネルギーを割かれることは文系・理系を問わず全国の多くの研究者が実感していることだと思う。

ならば、そこは創意と工夫の問題ではなかろうか。

その昔、高度経済成長期までは銀行には「預金獲得競争」なるものがあり、銀行の創立50周年、60周年、果てはマスコットキャラの制定記念や支店単位の30周年、40周年や店舗の改築記念といったものまで持ち出して取引先から預金をかき集めるネタとした。全国の銀行の預金商品の金利がほぼ同一の「護送船団方式」の時代ならでは話ではあるが、だからこそ大ネタから小ネタまでたんねんに拾って少しでも自分のところに有利になるよう工夫したものである。

ひるがえって、今の全国の地方国立大学文系学部の現状を見るに財務、予算から入試状況に至るまで、とても殿様商売を気取っていられる状況ではないはずである。国立大学の法人化以降、図書館の専門雑誌購入費用すらカットされ、研究者が自腹を切る風景は当たり前になった。すでに旧帝大に統合された大阪大学外国語学部でさえマイナー言語の学科では購読費の工面に苦慮しているというし、日本唯一の陣容を誇る東京芸術大学の音楽学部でさえ、老朽化した教室や楽器の整備に予算が出せず、悲鳴を上げているのはマスコミに何度も取り上げられている。

 

ならばこそ、とっくの昔に経済学部の看板をおろして過去とは一線を画し、「経済経営学類」に改組されてしまった福島大学でさえ、コロナ禍で祝賀会こそ自粛したが母校100年にあわせて2017年に創立95周年記念事業として立ち上げた「福大経済100周年基金」については看板架け換え前の古い経済学部卒業生たちに訴え、募集期限の令和4年までになんとか目標額の5千万円の寄付を達成した。戦時中に高岡経済専門学校から工業専門学校に転換され、母校が富山大学工学部になったあと、旧制富山高等学校の新制大学文理学部転換によりちゃっかり高岡市ではなく富山市の五福キャンパス内に経済学科として新発足した富山大学経済学部でさえ、一度廃校となり分断された高岡高商こそ前身校だとして持ち出し、富山大学経済学部(旧制高岡高商)創立100周年記念事業として1億円の募金活動を進めている。五福キャンパスの校舎のリニューアルや、寄附講座の創設などか目的だという。

せっかく「ネタ」があるのに、使わないというのはもったいない話ではなかろうか。

 

>J-CASTニュース 2016年04月26日13時37分

大阪大学図書館の「悲しすぎる台所事情」 
外国語学部なのに「中国語研究」「ロシア月報」など70冊購読中止


  大阪大学外国語学部に附属する外国学図書館(大阪府箕面市)が、70冊を超える雑誌の購読中止を決めた。キャンパス内の図書館に雑誌の購読中止を知らせる張り紙が掲示され、学生から「まともな研究が出来なくなるのは残念」と困惑の声が上がっている。
   背景にあったのは資料費の大幅な削減。同じような問題は他大学でも起きており、大学図書館の台所事情が急速に悪化している。

 

予算激減で「新刊本が購入できなくなる」
   「決して独断と偏見で決めたわけじゃないんです」――外国学図書館の担当者はJ-CASTニュースの取材にこう答える。同図書館は、70冊にものぼる雑誌の購読契約を2016年度から打ち切った。購読中止が決まった雑誌の一覧は、貼り紙で館内に掲示。それを見ると、「AERA」「週刊東洋経済」など公立図書館でも読める一般誌だけでなく、「ロシア月報」や「英文學研究」「中国語研究」「フランス語学研究」といった外国語学部には必要と思われる学術雑誌も対象となっている。

   主な原因は、書籍をはじめとした学生用の資料に使える予算の激減だ。

「16年の1月に入って、16年度の学生用資料の予算が大幅に減らされることが分かりました。年々減ってはいたのですが、16年度の減り具合はかなり大きかったです」
   雑誌のほとんどは定期購読の契約で購入されている。予算の削減にともなってこうした購読料が財政を圧迫し、新刊本を購入する余裕がなくなった。「このままでは新刊本を購入できなくなる」―。そうしたやむを得ない事情もあり、雑誌の定期購読契約を更新する15年度末までに購読中止を決断した。

   図書館側は関係者らと対応を協議し、外国語学部の教員らにもアンケートをとった。そのうえで、購読を中止する雑誌をピックアップしたという。

「お金がないので、優先順位が高いものを残しました。公立図書館で読めるものや、特定分野にしか需要のないものは削らざるをえませんでした。どの専攻にも共通して必要と思われる雑誌を残すようにしています」
   現在、特定の専門分野でどうしても必要な雑誌は、個別の研究室などで購入してもらうよう教員に依頼しているという。とはいえ、同学部の言語専攻は全部で25を数える。これだけの雑誌を一度になくして、研究に支障は出ないのか。

「研究に支障が出ない、と言えば嘘になりますが、すべての雑誌を購入するのは予算の関係上とても無理です。今後も、ごく特定の分野に偏らない、共通に必要と思われる雑誌があれば契約を検討しますし、場合によっては今回購読中止となった雑誌の『復活』もありえます。ただ、いずれも予算次第ですね」
雑誌「Newton」を教員個人の「寄贈」で存続した大学も
   図書館側の決定を阪大外国語学部の学生はどう感じているのか。取材に応じた、ある学生は「せっかく阪大外国語学部に入ったのに、まともな研究が出来なくなるのはとても残念です」と複雑な心境を明かす。

   購読中止の影響について尋ねると、「専門の学術誌や、この図書館のみ所蔵の雑誌も多いので、影響はとても大きいと思います」と心配の声を寄せた。この学生は、図書館内に設置されている目安箱(投書箱)に意見書を投げ入れたという。

   大阪大と同じようなことは、他大学でも起こっている。関東の、ある理系の国立大学の附属図書館は35冊を超える雑誌の購読を2016年度から中止した。購読中止が決まった雑誌の一覧には、一般誌に混じり、やはり大学の専門分野であるエネルギーや情報技術に関係する学術雑誌も含まれている。

   J-CASTニュースが取材したこの大学担当者は「(35冊も購読を中止した例は)ありません」と答える。原因については、阪大と同じく「予算削減のため」だと明かした。

   ただ、こちらは教員による支援の動きが見られた。当初、購読中止が発表されていた科学雑誌「Newton」が教員の「寄贈申告」によって、一転、残される方針に改まった。

   教員個人の力も借りなければやっていけない――。大学図書館のそんな苦しい台所事情が日本のあちこちで露わになっている。

 

 

>財政危機に瀕する東京藝大、学長の「経費節減」メールを入手「毎年4500万円も交付金が減る!」


2023/2/16(木) 11:02配信


 国内唯一の国立総合芸術大学である東京藝術大学が、運営費不足により危機的な状況にあることがわかった。きっかけは、2月2日に同大学の学生が投稿したツイートだ。《藝大、本当にやばいかもしれない、、、、》とのつぶやきとともに、1つの画像が張りつけられていた。

 その画像は、学校から学生に送られてきたメッセージで、【練習室ピアノ撤去について】と題し、「大学の予算削減のため、(中略)2部屋のピアノを撤去することとなりました」との告知文があった。

 同大総務課は、本誌取材に《「練習室ピアノ撤去について」というお知らせを行ったのは事実です》とツイートの内容を事実だと認めている。

 藝大関係者が、大学の苦境を明かす。

「今回撤去されるのは、音楽学部のピアノ専攻ではなく、弦楽専攻の練習室のものです。ですから、ピアノ専攻の学生に影響はありません。

 しかし、音楽学部では、専門の楽器のほかに副科として別の楽器を履修することになっていて、弦楽専攻の学生はそこでピアノを選ぶことがほとんどです。2台減れば、副科の練習時間が削られることは避けられないでしょうね」

 国立大学は2004年の大学法人化以降、運営費交付金を毎年1%ずつ削減されており、2022年度、藝大の運営費交付金は50億円弱までに減った。857億円(2022年度)もの支給を受けた東大は別格としても、これは全国の国立大学中でも下位レベルになる。

 もっとも、今回の財政危機の要因はほかにもあった。

 2022年11月に日比野克彦学長から教職員らに送られたメールを本誌は入手。「本学の財政状況について」というタイトルに続く文面にはこう綴られている。

《今年度の電気代について、当初の予算計画では約1千万円/月だったところ、現時点では約3千万円/月となる見込みです。今後もエネルギー価格が高騰することが予想され、来年度の電気代は約4千万円/月に上ることが試算されており、ガス代についても、今年度から年間で約2千万円増加しています。

 光熱費以外にも、インボイス制度への対応に伴う支出増や、社会保険料の負担増、人件費・資材費の高騰、基盤的な運営費交付金の削減(毎年度4,500万円減)等も重なり、来年度以降の本学の財政状況はさらに厳しくなる見通しです》

 こうした収支の悪化に対し、緊急措置としてさまざまな財源を取り崩して対応してきたが、これ以上は困難のため、大学全体であらゆる経費節減と、外部資金や収入の獲得に協力してほしいと日比野学長は呼びかけた。

 先の関係者が続ける。

「格安電力会社の電気料金が、円安による石油価格等の高騰のため、大幅に値上がりしていることはご承知のとおりです。藝大も同じで、契約した電力会社からの請求が、当初の予想を大きく上回る金額になったのです。

 日比野学長も『とにかく節約できるところはしてほしい』と教授会などに出向いて話しています。『この歳になってカネのことで頭を下げることになるとは思わなかった』と、ボヤいているそうです」

 そもそも藝大は、他大学のような産学共同研究など外部資金を導入する “ネタ” が少ない。これまでも、交付金以外の資金はほぼOBや芸術に理解がある企業や個人からの寄付金頼みだったという。

 すでに学費、学食の値上げや、藝大図書館の資料の買い入れ縮小の検討がおこなわれているが、小手先感は否めない。それだけ、藝大の置かれている状況が危機的ということだ。

「2015年に文科省が出した『国立大学経営力戦略』という通達以降、『競争的経費節減』という名目で、職員数も含めた数々の経費削減方針が各大学から打ち出されています。もちろん、国立大学も経営的な自立は必要ですが、研究教育機関にはそれぞれの事情があります。

 藝大美術館にはOBの作品が数多く収蔵されていて、国宝級の作品もあります。展示するには修復が必要ですが、現状では修復費用はほぼ出ない状況です。このまま展示できないなら売却しようといった話になりかねません。

 一方で、国際協力機構(JICA)は、たとえばモロッコの基礎教育のために220億円(2022年)も出しているんです。政府の教育行政の矛盾を感じます」

 非常時には文化予算は削られがちだ。脈々と続く文化の灯を絶やさぬよう、日比野学長には藝大存続のために手腕を発揮してほしい。