大人のエロス満載、ドロンジョ最高。映画「ヤッターマン」 | 忍之閻魔帳

忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

★元記事はこちら。

ヤッターマン 深田恭子 ドロンジョ

深田恭子というのは不思議な女優だ。
演技が取り立てて上手いわけではない、どちらかと言えば下手ですらあるのに、
「阿修羅のごとく」「下妻物語」「富豪刑事」「山おんな壁おんな」など、
定期的に「この役は深田恭子しか出来ない」と思わせるほど
奇跡的なキャスティングと巡り会ってきた。
今回のドロンジョ役も、原作のイメージからはかけ離れているものの、
原作にはない、「乙女なドロンジョ」像を見事に作り上げている。

この世に4つ存在し、全て集めると願いが叶うと言われているドクロストーンを求めて、
今日もドロンボー一味(深田恭子、生瀬勝久、ケンドーコバヤシ)は
悪徳商売に精を出してメカ作をり、ヤッターマン(櫻井翔、福田沙紀)は
この世に悪が栄えないよう、正義のために活動を続けていた。
ある日、ドクロストーンの在処が判明し、現場に急行したヤッターマン。
案の定そこにはドロンボー一味が待ち伏せていた。
激しい闘いを繰り広げるヤッターマン達。
その時、ふとしたきっかけでドロンジョとガンちゃんの唇が重なってしまった!
慌てて離れるふたりだが、既にドロンジョの心には恋が芽生えていた。

ヤッターマン1号には嵐の櫻井翔、2号には「櫻の園」の福田沙紀、
ドロンジョには「下妻物語」の深田恭子、ボヤッキーには「トリック」の生瀬勝久、
トンズラーには吉本興業のケンドーコバヤシ。
登場するメカやキャラクターデザインのリファインは寺田克也が担当。
監督は、「殺し屋1」「クローズZERO」のようなハードボイルドから、
ファミリー向けの「妖怪大戦争」、「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」
「神様のパズル」のような怪作まで様々なジャンルの作品を手掛ける奇才・三池崇史。


マーベラス。

やはり、明後日の方向に全力疾走した時の三池崇史は凄い。
原作の雰囲気に近いからと、ダメ元でアンジェリーナ・ジョリーに
出演を依頼したというエピソードから一転、
ドロンジョの雰囲気から最も遠い、ベビーフェイスの深田恭子を使って、
セクシーさと可憐さを併せ持つ、新しいドロンジョ像を作り上げてしまった。
ストーリー展開も、ドクロストーンを追うエピソードと
ドロンジョの恋を描いたエピソードがほぼ同等の配分で描かれており、
さながらドロンジョ主演のスピンオフといったところ。
これなら、ヤッターマン側を印象の薄い(失礼)キャスティングにしたのも頷ける。

当の深田恭子本人も、ボンデージファッションに身を包み、
「天才ドロンボー」を振り付きで披露したり、
「スカポンタン!」「やっておしまい!」といったお馴染みの名台詞を連発したりと
かつてないほどの大サービス。
生瀬勝久とケンドーコバヤシ演じるボヤッキーとトンズラーも
文句なしのハマり役で、若返ったドロンジョの魅力をさらに倍増させている。
ヤッターマン1号へのほのかな恋心と、泥棒の神に身を捧げた己の運命との間で揺れ動く
少女のようなドロンジョは、原作至上主義の方には複雑なところもあろうが、
70年代版も現代版も見ている私でも、このドロンジョは大いに「アリ」だ。

本作で見逃せないのが、子供が見逃し(聞き逃し)てしまいそうな
「大人のエロス」がふんだんに盛り込まれていること。
具体的にどこと書くとネタバレになってつまらないので1点だけ紹介すると

「ヤッターマン2号さん、ありがとう」
「私は確かに2号だけど”二号さん”じゃないから”さん”は要らないわ」

ううむ深過ぎる。
こんな粋な台詞を「少林少女」の十川誠志が書けるとは驚きだ。
この他にも、子供が観るにはエロス過剰ではと
心配してしまうシーンもちょこちょこと挿入されているので、
子供が観たがった場合はお父さんの大チャンスである。

勝利のポーズやびっくりどっきりメカ、ドロンボーのマシンに必ず搭載されている
「ブタもおだてりゃ木に登る」もしっかり登場。
竜の子プロダクションが監修しているだけあり
ちょっとした仕草や小物に至るまで、ほぼ完璧に網羅されている。
音楽は、現代版アニメの放送開始前にファンからクレームが寄せられるほど
熱烈な支持のある山本正之大先生が直々に手掛け、主題歌もセルフリメイク。
「ヤッターキング」を歌うのは、「ヤッターマン」の熱烈なファンだという
ザ・クロマニヨンズ。(これがまたえらく上手い)

「ヤッターマンを映画化するまで死ねない」と言い切る
三池監督のヤッターマン愛とエロスがふんだんに盛り込まれた娯楽大作。
シリーズ化希望!

最後にもうひとつだけネタバレ。

アニメ版ドロンボー一味の小原乃梨子氏(ドロンジョ)と
たてかべ和也(トンズラー)がカメオ出演したのは非常に嬉しかったのだが
八奈見乗児氏(ボヤッキー)だけいなかったのが残念でならない。
体調でも悪かったのであろうか。ご高齢なだけに心配。


▼関連作品

■DVD:「ゼブラーマン」
■DVD:「妖怪大戦争 DTSスペシャル・エディション」

「ヤッターマン」の下敷きになっていると思われる三池作品を2本。
「ゼブラーマン」は、哀川翔の主演100本目の記念作品として製作されたヒーロー物で、
脚本は「少年メリケンサック」の宮藤官九郎。
哀川翔の情けなさと、鈴木京香演じるゼブラナースのセクシーさが味わい深い。
「妖怪大戦争」は、 水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆきの4人から成る
プロデュースチーム「怪」が原案を手掛けた往年の大映妖怪映画のリメイク。
主演は、まだ変声期前の神木隆之介。
ファミリー向けの娯楽作品なので、設定の甘さを突っ込むような
無粋な真似はせず、さらっと楽しみたい。

■DVD:「鉄人28号 デラックス版」
■DVD:「ゲゲゲの鬼太郎 スタンダード・エディション」

【紹介記事】少年の成長物語としては秀逸。映画「鉄人28号」

松竹が手掛けたアニメの実写化作品はこちら。
「ヤッターマン」も含めた3作に共通しているのは、
原作に忠実な部分と映画オリジナルの部分をどちらも出しているところ。
原作に忠実であろうとし過ぎたあまりに、役者や監督の顔が全く見えない
「20世紀少年」とは、目指す方向が大きく異なっている。
この辺が、東宝と松竹の実写化における考え方の差なのかも知れない。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:ヤッターマン
    配給:松竹
   公開日:2009年3月7日
    監督:三池崇史
  キャスト:櫻井翔、成瀬勝久、ケンドーコバヤシ、深田恭子、他
 公式サイト:http://www.yatterman-movie.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★