尖閣・船長釈放、政治判断について検察は否定
産経新聞2011年9月26日(月)08:00
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20110926091.html
尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件での中国人船長釈放の経緯について、内閣官房参与を務めた松本健一氏が「菅首相が判断した」と説明したことに関して、多くの検察幹部は「釈放は検察の判断だった」と否定した。一方、「当時のことは細かくは記憶していない」と口を閉ざす幹部もいた。
当時の検察幹部は「菅首相の指示があったという話は検察内部では出ていない。釈放は検察内の会議で決まったことだと理解している」と語った。
検察では昨年9月24日午前、那覇地検と福岡高検、最高検の幹部が会議を開いて釈放の方針を決定。同日午後、那覇地検の次席検事が「国民への影響や日中関係などを考慮した」と会見で説明した。
当時、最高検にいた幹部は、ビデオテープの証拠能力に問題があったという指摘についても「全く聞いていない」と全面的に否定。その上で「会議では船長を起訴したときの影響と、起訴しなかったときの影響や批判について話し合われた。起訴すれば中国との貿易が途絶えて経済に影響するし、中国が強硬策に出て尖閣を占領するかもしれない。日本のことを考えて、検察が決定したことだ」と、検察が独自に検討した上で、釈放の結論に至ったと説明。官邸からの指示については全面的に否定した。
別の幹部は「当時は(9月21日に逮捕した)大阪地検特捜部検事の証拠改竄(かいざん)事件の直後で、そちらのことで頭がいっぱいだった。尖閣事件については細かくは記憶していない」と多くを語らなかった。
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■尖閣、中国人船長釈放で松本前参与「官邸側が判断した」
産経新聞 2011年9月26日(月)08:00
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/snk20110926075.html
--船長はなぜ釈放されたのか
「那覇地検が大きなミスをしていたから。地検から首相官邸に証拠となるコピーのビデオテープが届いたが、重大な瑕疵(かし)があり、(起訴しても)公判がたえられない、有罪にもならないと官邸側が判断した」
--重大な瑕疵とは
「それはあまり明かしてはまずいので…。仙谷由人官房長官が検察担当者に質問をして、瑕疵があると分かった」
--政治判断があったというわけか
「誰がミスをしたか責任追及をしないために高度な政治判断があった。仙谷氏は菅直人首相が(釈放の)指示をしたというのではなくて、地検が(釈放という)判断をして釈放することにしたという報告がきたので、(首相官邸は)それを了としたという言い方にした」
--事件発生後の経緯は
「閣内では事件発生当初、菅氏や前原誠司国土交通相のように『証拠もあるわけで、国内法にのっとり断固として裁くべきだ』との考え方と、『釈放すべきだ』との立場に立つ仙谷氏の2つの意見があった」
--最終的に釈放という判断に至ったのは
「それは裁判が維持できないから。最終的には菅首相が判断したわけだ」
--菅氏が指示を出したのは事実か
「そうでなきゃ、釈放なんかできないでしょ、最終的に。あれだけの外交問題になっていたわけだから。菅氏は国連総会の最中に仙谷氏に電話をかけて、釈放するかしないかでやり合っていた。仙谷氏は官邸から一歩も出ずに夜中に首相と話し合っていた」
--菅氏が仙谷氏に押し切られたということか
「仙谷氏の方に正当性があると。(菅氏も)裁判が維持できないと納得した。電話のやりとりの中で(釈放するとの)2人の合意がなされた。それは船長が釈放される2、3日前だ」
--なぜそうしたのか
「菅さんは自分に責任がかかってくる問題は避けたがっていた」
--釈放は菅氏と仙谷氏の2人で決めたのか
「少なくとも官房副長官くらいはいるかもしれないが、政治家が決めた」
--官邸側の誰が法務省・地検側に釈放しろと命令をしたのか
「少なくとも菅氏はしていないでしょう。仙谷氏の可能性が高い」
--官邸側の指示で検察が動いたといえるか
「それはそうですね」
--事件について菅、仙谷両氏のやりとりをどのように聞いていたか
「当時はまだ内閣官房参与ではなく(翌月の)10月15日に任命された。だが、事件の最中も、こういう電話が首相からあったとか、中国とのホットラインはあるかとか、なぜ中国側はああも強固なのかとか(仙谷氏から)相談を受けていた」
--仙谷氏にはどんな意見を伝えたのか
「(検察側の準備した)証拠に瑕疵があるなら裁判は戦えないとか、釈放するなら勾留延長する前にしておけばよかったとかは言った」
--菅政権の対応が迷走したのは
「菅氏だって前原氏だって法律的なことをちゃんと知らないわけでしょ。実は政府ではこうした事件が起きた場合のマニュアルが平成20年に作られたが、それは起訴までで、起訴後のマニュアルは今もない」(村上智博)
=肩書は当時
【プロフィル】松本健一(まつもと・けんいち)昭和21年、群馬県生まれ。東大卒。京都精華大、麗沢大教授などを歴任し、評論、評伝などで活躍。日本近代精神史やアジア文化論が専門。仙谷由人元官房長官とは東大の同期生。仙谷氏の誘いで昨年10月、内閣官房参与に就任したが今年9月に退任した。「評伝
北一輝」「泥の文明」「三島由紀夫の二・二六事件」など著書多数。