以前から、私は憲法改正について以下のように考えています(その旨は当ブログやSNSでも書いてきました。なお、以下に書くのは基本的に私個人の見解です。)。

 

● 憲法89条(公の財産の支出又は利用の制限):私学助成やNPOに対する助成が違憲に読めるおそれがあり、改正すべき。

● 参議院の合区:早急に解消すべき。現在、合区となっている鳥取、島根、徳島、高知の4県の国政における代表性は確保しなくてはならない。そのためには参議院を一票の格差から解放する必要がある。一案として、参議院議員は「国民」の代表ではなく、「国土」、「自治体」といったものを代表するとの位置づけがあり得る。その観点から、現在自民党が出しているたたき台はダメ。

● 緊急事態:(以下の記載参照)
● 9条:現行憲法の「平和主義」の理念は揺るがせてはならない。その上で、日本の平和主義の理念を体現するための改正はあり得る(なお、私は自衛隊等の具体的なオペレーションに憲法を直接適用しようとするのは違和感を持っています。憲法はそういうものではありません。)。ただ、現在の自民党が出しているたたき台は何がしたいのか意味不明であり、論理的な整合性も取れていない。

 

 上記は自由民主党が出しているたたき台についてコメントしたものですが、その他にも、憲法第8章の地方自治の規定の充実化、環境、財政についての規定創設、個人の人格権(例:プライバシー)の更なる確立、衆議院の解散規定の具体化、天皇陛下の国事行為の明確化、といった点は改正の議論をすべきだと思っています。逆に2012年の(恐らくもはや有効ではない)自民党の憲法改正案にあるような、内心の自由を国家が保障すると規定する改正案については断固として反対です(私が頭の中で何を考えるかは、国家に保障してもらうようなものではありません)。

 

 その上で、今国会、我々の会派「有志の会」は日本維新の会、国民民主党と緊急時の議員の任期延長に関する憲法改正案に合意しました。当会派きってのインテリ、北神圭朗議員が非常に重要な役割を果たした事は強調しておきます。これは要するに、東日本大震災の際、関連地方自治体の長や議員の選挙期日を延期した法律の国会議員版です。地方自治体の長や議員については法律で選挙期日の延期をする事が出来ますが、国会議員は憲法に身分の規定がありますので、そのような事態に対応するには予め憲法改正をしなくてはならないという事です。地方自治体で具体的事例がある以上、国でも制度を整えておくべき、ただそれだけの事なんです。

 

 懸念されるのは、時の政権・与党が恣意的にこの条項を使って選挙をどんどん後ろに倒し、結果として独裁のツールにならないかという事です。ナチス・ドイツの例がありますので、そこは我々としても慎重にやっています。我々の歯止めでは不十分だという議論はあり得るでしょう。そこは真摯な議論に応じたいと思っています。

 

 一方、「緊急事態」というと、まず思い浮かぶのは「緊急政令」です。法律によらず、政府が出す政令で人権制限をする事が出来るというものです。私はフランスでのこの手の緊急政令の歴史と運用を知っていますので、その便利さと危険性はよく分かっています。2015年のフランス・テロ事件を受けた緊急事態は何度も更新され、例えば、令状なしの捜査がかなり行われました(EUからかなり問題視されていました)。緊急事態は権力側にとって、とても使いやすいツールなのだという事を痛感しました。

 

 その上で、私は「徹底して法律で規律を作っていくべき。それでも対応できないものがあるとするなら、そこで憲法改正による緊急政令の議論が出て来る。」というのを基本的な視座としています。例えば、現在の原子力災害対策特別措置法における原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)の権限は広範かつ強力です。様々な歯止めを入れつつ、機動的に対応する事が出来る仕組みを作っています。有事、テロ、災害、大規模感染症等の様々な緊急事態を想定しながら、同種の検討を法的に積み上げていく事で相当な対応が可能だと思います。そして、そこまでやっても対応出来ないのは「ムチャクチャ重大なもの」か「カスカスの残り」かだろうと思います。前者は「政体」そのものに関わるようなものであり、そもそも憲法での規定に馴染まないと思いますし、後者は本当にカスカスで憲法に書くようなものにならないはずです。ただ、これは具体的な検討をしてみないと確定的な事は言えません。

 

 そもそも、緊急政令というのは「いざという時、議会を経由した対応は時間が掛かる上に邪魔だ」という認識がベースにあります。フランスで何故緊急事態的な法整備が充実しているかというと、議会不信、司法不信を持っていたシャルル・ド・ゴールが議会や司法の権限を抑え込むような第五共和制憲法を作ったからです。上記のような邪魔者扱いに対して、我々議会人は「迅速に的確に対応するよう、私達が法律できちっと準備してみせる」という姿勢で臨むのが筋でしょう。議会側から軽々に「いざという時、我々は邪魔なので飛ばせるよう憲法改正しよう」と提起するような事は、私は福岡9区の皆様に送り出していただいている衆議院議員としてやりたくありません。ただ、それでも任期の問題だけは如何ともしがたい所があるので、上記のような改正案を作ったわけです。

 

 大体、これが憲法改正に対する私の意見です。徹底的に「立憲主義」を貫いているつもりです。国会議員たるもの、自分の憲法観を提示する事は大切だと思い、あえて踏み込んで書きました。異論、反論あるでしょう。それが大切な事です(ただ、議論の範疇を超えた罵倒はご遠慮します)。