私の所属する衆議院内閣委員会で「孤独・孤立対策推進法」が審議され、先日、衆議院を賛成多数で通過しました。

 

 非常に気になったのが「孤独」と「孤立」を並べて大半の議員が「孤独・孤立」と繋げて議論していた事です。そうやってこの2つを括ってしまうのは事の本質を見誤ると思い、私はこの2つを明別して議論しました。私の質疑に対して、政府も孤独は感情、孤立は客観的状態だと答弁していました。そして、私の参考人質疑NPO法人「あなたのいばしょ」の大空理事長が喝破したように、今回、「孤独」にフォーカスを当てた事に意義があります。

 

 

(なお、大空理事長は本当に卓見の持ち主で、その一言一言に感銘しました。)

 

 これまで法令用語で「孤立」という言葉はそれなりにあったのですが、「孤独」という言葉は初出です。つまり、これまでの日本のアプローチはどちらかと言えば客観的状態である孤立にフォーカスしていたのが、そうではなくて感情である孤独に目を向けなくてはならないという事になったのが意味があるのだと思います。孤立していないのだけど孤独を感じている人への対応というのは難しいですが、それが現代的な課題のはずです。

 

 その観点から、逆に「孤立しているのだけど、孤独を感じていない方」への対応はどうあるべきか、という事が問題になります。この法律における「孤独・孤立の状態」とは、「日常生活若しくは社会生活において孤独を覚えることにより、又は社会から孤立していることにより心身に有害な影響を受けている状態」と定義されます。孤独を一切感じていない中、孤立している方で心身に有害な影響を受けている方というのは、居ないとまでは言いませんがかなり限定的であり、そもそも何処まで公権力の射程に置くべきなのかという事をかなりしつこく聞いています

 

 私の問題意識は、上記にも書いたように「結局、集中的に対応しなくてはならないのは『孤独』なのではないか。そういうふうに大きく問題意識を振ったのがこの法律ではなかったのか?」という事です。

 

 その後、行政改革を重視する私は「この法律で行われる孤独・孤立対策は屋上屋になりはしないか。」という点を聞いています。自殺、刑務所出所者支援、引きこもり、不登校等、既にやっている事がある中、その上に「屋上屋」にならないようにする仕掛けはこの法律に盛り込まれていません。また、孤独・孤立対策本部は内閣府に置かれますが、内閣府の中にもDV、就職氷河期等を担当する部局があります。これら部局との調整についても現時点では行われていません。こういう事を言うと、「緒方は孤独・孤立対策に後ろ向きなのか?」と言われそうなのですが、そうではありません。現在、政府の中、特に内閣府には「似たような事をやっている組織が複数ある」のが散見されます。それを厳しく見ていかないといけない、という意識があるのです。

 

 また、地方自治体の負担増についても聞いています。昨今、特に安倍政権以降、国から地方自治体に「計画作れ、計画作れ」と話が降りて来る事が増えました。新しいコンセプトで法律が出来て、その法律に基本計画を都道府県に求め、市町村にも努力義務を課すパターンが非常に増えました。全国知事会からの苦情を受けて、昨年度の骨太方針ではそれを抑制しようという事になっています。孤独・孤立対策推進法では、自治体に基本計画を求める事はしていませんが、地域協議会の立ち上げを努力義務として課しています。

 

 自治体の発案で地域協議会が立ち上がる事はとても良い事なのですが、同時に気になる事があります。去年の骨太方針以降、地域協議会の立ち上げを書き込んでいる法律が増えたような気がするのです。邪推の極みなのかもしれませんけど、基本計画が抑制される中、その代替物として地域協議会という手法が使われているのではないかという懸念を持ちました。「努力義務なんだからいいじゃないか」という声はあるでしょう。しかし、過去に基本計画策定を努力義務としていても、計画を作っている自治体を担当省庁が一覧で公開する、ましてや計画を作らないとその事業でカネが降りてこない、といった事例が散見されました。これだと半ば義務化してしまうのです。作らない事で中央省庁から睨まれるくらいなら、作っておこう、そういう意識になるのは当然です。

 

 あと、この手の話で一番難しいのは、孤独を感じておられる方に様々な支援メニューを用意しても表に出て来られない方です。これについても参考人質疑で提起しています。これは「支援メニューを知らない」ケースと「そもそも出たがらない」ケースがあります。どちらも対応が難しいです。私はよく地元の市民センターで「独居高齢者の中でこの市民センターに来て、活動している方は何の心配も要らない。課題は来ない方。」という話をします、まち協会長、市民センター館長、皆様が首肯されます。上記の2ケースそれぞれ対応は異なります。一歩踏み込んだ対策が必要だと思っています。

 

 採決前の討論では、国の行革の観点から「肥大化するなよ」と念押ししました。大英帝国の殖民地省が、領土が減っていたにもかかわらず拡大の一途を辿った事実を分析した「パーキンソンの法則」を引用しながらの話は与党議員にご好評でした。最後に1976年に出された内山田洋とクールファイブの「東京砂漠」にもあるように孤独という課題は昔からあるが、今問題となっている孤独には現代性がある。そこを透徹した目で見て、対策を充実させてほしいと訴えました。