Fujinon 55mm F2.2 再考察 これはもしかすると・・・。 | シネレンズとオールドレンズで遊ぶ!

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カメラマンヨッピーのブログ。シネレンズやオールドレンズなどのマニュアルフォーカスレンズをミラーレスカメラに装着して遊び、試写を載せていきます。カメラ界でまことしやかに語られているうわさも再考察していきます。

以前書いたブログ「FUJICA用 FUJINON 55mm F2.2 フジノンお前もか!!」の内容に対しご指摘があり書き直したところ、また違う見解も出てきたので検証して行こうと思います。
そのために改めてレンズを購入しました。今回価格の関係でX-FUJINON 55mm F2.2になりました。

構成は同じです。

この構成図は実は左右逆でした。ここまでは前回通り。

これが正しい構成図です。このレンズ構成図からすると前玉より後玉の方が大きい感じですが、比べてみると

 

右が前玉、左が後玉。あまり差はないようです。

レンズの厚さ的には前玉が厚く後玉が薄いので上記構成図(2つめ)で間違いないようです。

ではこの構成の正体は一体何かということです。

まず構成図が逆さまだった時点でエルノスターは消えました!

上記候補の一つに「スピーディック」が浮上します。スピーディックはテイラー・ホブソンのリーが設計したトリプレットの進化版です。リーはオピックや初期のパンクロの設計で有名です。

トリプレットの3枚目のレンズを分割することにより強い正パワーを持ちながら曲率を緩やかに抑えて収差を抑える設計です。

前から+-++のパワーバランスを持ちます。

もう一つの候補がパオロ・ルドルフの「ウナー」です。

このレンズはパウル・ルドルフが1899年に発明したレンズで後にテッサーへと進化する。

レンズの持つパワーは+--+だ。

 

もう一度Fujinonを見てみると

レンズパワーは+-++に見える。三枚目のエレメントが正のパワーを持っていればスピーディック、不のパワーを持っていればウナーと同じパワー配置になる。

Fujinonの3枚目のレンズは?

取り外して細かい文字の上においてみると、僅かに文字が大きくなっているのが分かる。

これはすなわち正パワーを持っているということになる。

無限遠を見たときに景色が反転して見えたことからもこのレンズは凸レンズである。

つまりフジノンのレンズパワーは+-++となる。レンズパワーからするとスピーディックと言う事になる。

しかしスピーディックはトリプレットの派生型なので基本形は両凸、両凹、両凸。それが最後の一枚を2分割する形。3枚目と4枚目は収斂作用を担当している。フジノンの3枚目はごく弱い凸メニスカス。収斂作用は弱く基本的な設計理論が合っているとは言いがたい。

一方ウナーの3枚目はごく弱い凹メニスカス。このレンズは収差補正を受け持つ。後群の収斂作用は3枚目と4枚目の間の凹型の空気間隔と4枚目の凸レンズが担当する(凹型の空気間隔は収斂作用を持つ)。フジノンにおいても3枚目が収差補正を担当するなら弱い正や負のパワーはあまり意味を持たない。メニスカスを採用しているところから収差を補正していると想像できるが確証は無い。さらにウナー同様収斂作用は凹型の空気間隔と4枚目の両凸レンズが担当している。これらの状況から判断するとフジノンレンズは理論的にスピーディックよりはウナーに近いと言える。

正確には変形ウナータイプというべきか。今回の記事を書くにあたり相談に乗って頂いたM42マウントスパイラルのスパイラル氏もウナー説を主張している。

ここからは個人的な仮説になるが、3枚目のメニスカスが正のパワーを持っているのはバックフォーカスを長くする為ではないかと推測される。55mmという焦点距離からわかる通りこのレンズ構成にはフランジバックにウイークポイントがある。そこを少しでも埋める為の正パワーではないか?もちろんこれは推論の域を出ない。

ちなみに海外ではこの構成をフジノンのタイプとして独自構成と見ているようだ。

いずれにせよ非常に珍しい構成のレンズが国産レンズに採用されているのは喜ばしいことだ。