2021年4月3日(土)日経朝刊2面(総合1)に「OPECプラス、減産幅縮小 米、原油高をけん制」との記事あり。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は1日、協調減産を5~7月に段階的に縮小すると決めた。
市場では5月は現行の減産を据え置くとの見方が多かった。
米国が「手ごろな」原油価格を求め風向きを変えたとの観測がある。
新型コロナウイルスの感染拡大で原油需要は落ち込んだが、ワクチン接種が各国で始まっていることなどを受け、2021年後半にかけて需要の拡大が見込まれている。
ただ、OPECを主導するサウジアラビアは「回復は完全というにはほど遠い」(アブドルアジズ・エネルギー相)と慎重な立場だ。
欧州を中心に感染の「第3波」が広がり、行動制限の再強化が相次ぐ。
原油相場も3月初めに1年2カ月ぶり高値をつけてからいったん弱含んでいた。
市場で「減産据え置き」との見方が広がった背景だ。
ところが、OPECプラスの閣僚は1日のオンライン協議で、減産幅を7月までに日量110万バレル以上縮小すると決めた。
サウジも日量100万バレルという独自の大規模な追加減産を5~7月に段階的にゼロにすると表明した。
合計で世界の原油供給の2%が市場に戻る計算で、相場を押し下げる効果がある。
伏線とみられたのが、直前の3月31日のグランホルム米エネルギー長官とアブドルアジズ氏との電話協議だ。
グランホルム氏は協議後「消費者にとって手ごろで信頼できるエネルギー源の確保に向けた国際協力の重要性を再確認した」とツイッターに投稿し、原油高をけん制した。
国際指標の北海ブレント原油先物は年初より2割高い水準にある。
バイデン米政権は総額1.9兆ドル(約210兆円)の「米国救済計画」を成立させたばかりだ。
原油高でガソリン価格が上がれば、対策の効果を鈍らせかねない。
電話協議と減産緩和の因果関係について、アブドルアジズ氏は「原油価格に関する言及はなかった」と記者会見で述べ、米国の圧力との見方を全面否定した。
マイカー社会の米国で、ガソリン高は有権者の不満を招きやすい。
3月下旬のスエズ運河の座礁事故のような不意のトラブルで急騰するリスクもある。
トランプ前米大統領は原油高を抑えようと露骨な口先介入を重ね、サウジも協力姿勢を示していた経緯がある。
米国も主要産油国だが、OPECプラスの枠組みには加わっていない。
OPECプラス協議の当日には、サウジの実力者ムハンマド皇太子とロシアのプーチン大統領が電話協議した。
ロシアはかねて減産緩和を求めていた。
サウジが米国と同時にロシアにも貸しをつくる一手として、段階的な減産緩和を受け入れた可能性がある。