ども、唐十郎さんのご冥福をお祈りする岡田達也です。

 

 

 

 

今、鳥取砂丘で働いている。

 

高校時代の同級生がやっているアクティビティのお手伝いのため。

 

残念ながら本日(6日)は悪天候のため中止となったけど、昨日までは日本全国から……

 

いや、世界各国から観光客が訪れていた。

 

 

そんな中、インド人のツアー客(総勢30人)がやってきた。

 

一番若い方でも55歳、最年長は80歳とかなり年齢層高目な団体。

 

そしてみなさん、とんでもなく恰幅が良い。

 

聞けば、インドの富裕層の中には「太っていることがステータス」と考える方が多いらしい。

 

それはつまり「自分は動かないで身の回りのことはすべて使用人に任せている」ことに繋がるんだそうで。

 

 

想像してほしい。

 

鳥取砂丘とは広大な砂地である。

 

歩きにくさは折り紙付きだ。

 

オマケに太陽光で砂が焼ける。

 

地元民は「灼熱の砂丘に行くなんて自殺行為だ」と知っているので誰も近寄らないが、ツアー客はそうはいかない。

 

組み込まれてしまっている。

 

この、自殺行為というか、罰ゲームというか、試練というか、苦行が。

 

 

 *

 

 

ここで鳥取県民から貴重なアドバイスを一つ。

 

「体力に自信が無い」「自分は太っている」という自覚がある方

 

砂丘は入り口から眺めるだけにしておきなさい

 

歩いて海岸線まで行くと簡単には帰ってこられませんよ

 

 

 *

 

 

海まで行ってからの帰り道

 

案の定、みんなの足が止まった。

 

そんな中、74歳のマダムに声をかけられた。

 

「ヘイ、ボーイ!」

 

 

56歳の少年は近寄っていった。

 

ヒンディー語などまったくヒアリングできないが、そのしんどそうな動きと身振りとで、手を引いてほしいのだろうということが瞬時に理解できた。

 

手を差し出した。

 

マダムは握ってニッコリ笑った。

 

結局、僕の他にもツアーガイドの女性(日本人)が隣に立って、二人でマダムの手を引いた。

 

その間中、マダムは何事かおしゃべりを続けている。

 

黙っていればいいのに

 

しゃべると体力が失われるだけだから

 

だけど、何事か話したいらしく、亀のような足取りとは裏腹に、ガイドさんに向かって速射砲のように話しかけている。

 

そして足を止めて深呼吸を繰り返す。

 

僕もそのたびに足を止め「スロー、スロー」と意味があるのかないのかわからない言葉をかけ続けた。

 

 

15分ほどかけて、ようやく入り口に帰ってきた。

 

マダムが僕に向かって話しかけてきた。

 

ガイドさんが通訳してくれた。

 

「あなたのおかげで帰ってこられた、と言ってますよ」

 

「良かったです」

 

「あなたはとても優しい」

 

「ありがとうございます」

 

「ナイスガイだ」

 

「ありがとうございます」

 

「死んだ息子によく似ている」

 

「……え?」

 

「本当に瓜二つだ」

 

「……」

 

「できることならあなたをインドに連れて帰りたい」

 

「……」

 

「インドに来る?」

 

「あ、いや、このあとも仕事が残ってるんで遠慮しておきます」

 

「そう、それは残念ね」

 

「すみません」

 

 

 *

 

 

もしもあのとき「喜んで付いて行きます」と答えていたら、

 

僕にはとんでもない富裕層の暮らしが待っていたのだろうか?

 

ひょっとして僕は選択を誤ったのだろうか?

 

 

人生の分岐点はいろんな場面でやってくるようだ。

 

 

 

 

では、また。