「私、元々男として生活していたんだ」

 

 早捗(さほ)からそんな話を聞いたのは、かつおやまぐろなど赤身の刺身をしょうゆだれに漬け込んで酢飯と合わせたお寿司である、手こね寿司を食べている時だった。

 

 ちなみにこの手こね寿司を作ったのは僕だ。たまには彼女に美味しい物を食べさせたいと思ったから。

 

 そんなことよりも早捗の話だ。僕は今まで早捗のことを純粋な女性、すなわち生まれつきの女性だと信じて疑ってこなかった。そこでいきなりこんなことを言われて動揺している。

 

「いきなり言ったって信じてもらえることくらい分かっている。ケイは今までそういった話と無縁で、そんな話今までしたことなかったから」

 

「そうだね。僕は今までそーいうなんだっけ、LGBT系の話題とは無縁だったし、これからも無縁でいるものだと思っていたよ。……それなのに早捗がそうだと知らなかった。一応付き合っているのに」