まだ高校を卒業して3ヶ月。
名残惜しさもあって、静岡の県立プールへ寄って後輩の水泳部の試合を観戦してから帰ることにした。
静岡駅には、この春就職した2番目の兄が新車で迎えに来てくれた。
「大変だったな・・・。」と兄。
2人とも無口なので、会話は空回りで途切れっぱなし。なんとも微妙な空気とともに実家へ帰った。
トライアスロンの記録が出ていたので、正式に失格だったことを父に報告。
その晩は久しぶりに家族全員そろって食事。父はもう、布団から起き上がれなかったので、
兄はビールを、僕はジュースを父の枕元まで持っていって乾杯した。
翌朝、午後からの化学実験の授業へ向けて玄関で靴を履いていると
「また来いよー。」
と父。その瞬間、
ー 次に来るのは葬式 ー
脳裏をよぎった言葉に、声が出ず、
黙って玄関の戸を閉めた、19歳の誕生日。