8月25日の投稿で、短距離の着地について考えてみました。私自身の結論としては速く走れる人は接地時間が短く、接地時間を短くしたからといって必ずしも早く走れるとは限らないということです。

 

 

 

長距離の接地ついても、考察をしてみたいと思います。前回の投稿では接地の定義は明確ではありませんでした。着地と混同する可能性がありますので、定義をしておきたいと思います。話しを進める前提になりますが、接地については地面に最初に足がついた時、着地については完全に足が地面に接した状態としたいと思います。

 

過去の投稿でも何度か触れていますが、接地については特に意識をすることは必要ないとしました。なぜなら、ランニング全体の動きの中で接地も変わるため、接地だけとらえても意味がないと考えているからです。

 

ただ、短距離の100mと長距離では、接地の位置づけは変わってくると思います。特に100mの場合は十数秒で走り終わってしまいますので、多少足に負荷がかかっても大きな問題はないといえます。実際のランナーを見ても、フォアフット以外の接地をしている選手はほぼ見当たりません

 

ただ、長距離になるとそうはいきません。着地の衝撃をできるだけ減らすとともにしっかりと接地をしないと、負荷がかかるだけでなくタイムにも影響することになります。

 

そうはいいながらも、走速度が速くなれば必然的に接地時間も短くなるはずなので、接地時間を短くするための条件を考えてみることは意味があるのではないかと思います。

 

前回の投稿で、ウサイン・ボルト選手、山縣亮太選手の接地のことに触れました。両選手とも100mのレースでは接地の際には踵を着くことはなく、完全なフォアフットで走っています。私自身もスピードを上げると前足部が先に、遅れて踵が着いていると認識をしています。

 

スピードが上がるにつれて、フォアフットの傾向が強くなることは事実だと思います。この点は考慮する必要があると感じています。逆説的な言い方になりますが、スピードが遅くなるほど踵からの接地になりやすいといえると思います。

 

長距離の場合は完全なフォアフォットのランナー(踵を全くつかない)は、ほぼいないといっていいと思います。ただ、接地と考えた場合には対象となるランナーはそれなりにいます。

 

 

 

2020年の東京マラソンの動画になります。先頭集団はアフリカ人ランナー、第2集団は日本人ランナー中心ですが接地について確認してみました。

 

一般的にはアフリカ人ランナーはフォアフット、日本人ランナはヒールストライクとなりますが、少なくともこの動画では結果は全く逆です。私が確認したのは12.5キロ地点になりますが、アフリカ人ランナーの16人のうちフォアフットは3人で約19%、日本人ランナーは34人のうち14人と約41%となります。補足になりますが、日本人ランナーのフォアフット接地は非常に確認しやすく、アフリカ人ランナーは限りなくミッドフットに近く判断が難しいです。

 

この結果からすると、アフリカ人ランナーが速く走れる秘訣はフォアフットにあるという定説は完全に崩れてしまいます。定説とは全く逆の結果といえますが、フォアフットの多い理由を考えてみたいと思います。

 

一つは厚底シューズの影響です。大前提になるといっていいと思います。過去の投稿でも何度も触れていますが、日本人ランナーの多くは脚を振出す動作が入ってしまい、通常では踵から着地することになります。ただ、厚底シューズを履いた場合には接地が安定しないため、着地脚を振り戻すことで前足部で接地するよう修正をしていると考えています。

 

厚底シューズでの踵接地はよりブレーキがかかり、着地時間が延びることが考えられます。冒頭の 『接地時間を短くする』 が妥当だといえるかもしれません。また、踵で着地すると重心が後ろに残るため、一気に身体を前に運ぶことができるというメリットもあると思います。

 

一般の市民ランナーに対しても地面を早く蹴ることを推賞しているケースがあり、そのためにはフォアフット着地が必要と解説してしている記事がありました。厚底シューズの場合は、有効だと考えて良いかもしれません。検証が必要ですが・・・

 

ただ、アフリカ人ランナーの大半がフォアフットではないとすると、接地時間を短くすることは果たして意味があるのか、疑問が残ります。

 

ケニア人長距離選手の生理学的・バイオメカニクス的特徴の究明 ~日本人長距離選手の強化方策を探る~ 榎本靖士

 

 

この論文のデータは長距離ランナーのものになります。ケニア人の方が日本人よりも、接地時間が明らかに長くなっています。走速度はアフリカ人の方が速いにもかかわらずです。

 

さらに注目したいのは、地面から足が離れている滞空時間です。ケニア人は滞空時間の割合が小さく、日本人は割合が大きくなってます。通常で考えれば、アフリカ人ランナーの方が滞空時間が長いように思いますが意外です。この点はあらためて考察したいと思います。

 

日本人の接地時間が短かいのは、ストライドが短くピッチで稼いでいることが原因ではないかと思います。実際この論文の中にもデータの記載があり、身長がほぼ一緒にもかかわらず、ストライドはケニア人平均の191㎝に対して、日本人平均は179㎝と約10センチほど短くなっています。

 

このことからいえることは、やみくもに接地時間を短くすることを考えるのではなく、自身の走法にあった接地をする必要があるといえます。速く走るためにピッチを上げる(接地時間を早める)のも一つの方法ですし、滞空時間を長くしてストライドを伸ばす選択も考えられます。

 

接地時間を短くするにしても、ランニングフォーム全体の動きを考慮しないとバランスが崩れるだけで、速く走ることはできないと思いますがいかがでしょうか?!