みなさま、こんばんは。

 

ムンジェイン大統領の8月15日の演説について、そしてまた、ソウル市内バスに慰安婦像を載せるなど、さらに過激化する慰安婦問題について。それがまた、北朝鮮の核ミサイルの脅威が緊迫化する中で唯一ほぼ同等の安全保障上の利害関係を有する日韓の協力が何よりも必要とされているときにおこったことについて一言(結構長くなりますが)。

 
慰安婦問題だけでは飽き足らず徴用工までかと怒りを通り越してあきれ果ててしまいます。慰安婦問題が仮に収束したとしても、どうせまた違う歴史問題を持ち出して蒸し返しを継続してくることだろうと前から思っていましたが、予想通りというか予想以上です。

 

それは、韓国の対日歴史ハラスメントの動機は、大国に翻弄され続けた上ろくに抵抗もしなかった(できなかった)自国の悲惨な歴史を受け入れることができず自国の歴史を修正したいという欲求から来ているからです(ノムヒョン大統領自身が大統領になったときに、(正確な文言は忘れましたが)「わが国の歴史の悲惨さと情けなさには反吐がでる。わが国民に正しい歴史を与える」という趣旨のことを言っており、当時その表現の激しさに驚いた覚えがありますが、事実、安重根英雄化や「太平洋戦争において韓国は日本に対し実は戦っていた!(実際は「日本領土」の一部として日本と「共に」戦っていたのですが)」という方向の歴史修正が行われています。)。最初は意図的に修正したとしても時間がたつにつれ「真実」になるものです。

 

中国もロシアも米国も怖くて何も言えないが、何しても多めに見てくれて大した反撃もしてこず不利益も被らない日本は恰好のターゲットなのです。その上、韓国人は「日本よりも韓国の方が文化的に優れていたときもあったのに、なぜか一度も日本に勝ったことがないというより、同じ土俵にのったことすらない」という鬱屈した日本に対するトラウマ的感情が心の奥底にあるようです。(親日的な韓国人の友人に言われ深く考えさせられました。)。

 

結局、日本を歴史問題で攻撃して気持ちの上で「優位」に立つことにより、自国の歴史と日本に対する鬱屈した気持ちを発散させたい、カタルシスを得たいというのが(韓国人自身に自覚はないかもしれませんが)真の動機なのだと思います。また、「日本側の一員」ではなく「戦勝国側」と思われたい、思いたいということもあるでしょう。ですから、反日歴史戦はなかなか止まないでしょう。それどころか、北朝鮮や中国(別の戦略的思惑からですが)に利用されて益々困難な状況になっていくと思います。

 

韓国にとっての歴史問題は、中国と異なり(中国の場合は日本のパワーを貶めるための戦術)、精神分析学上の問題です。

 

慰安婦問題については、韓国政府は、日韓合意を再検討したり、ソウル市のバスに慰安婦像を載せるのを黙認したりと、46人残る慰安婦のうち36人が既に日韓合意を受け入れ見舞金を受け取っている中で、当事者を置き去りにして、合意を反故にしようとする無責任かつ日本を貶めようという悪意ある態度としか思えません。本当に年老いた元慰安婦の方々に寄り添っている態度とは到底思えません。

 
韓国のことなのでまたゴールポストを動かそうとするかもしれない疑念は当初からぬぐえなかったところであり、だからこそ、日韓合意において「最終的、不可逆的解決」を約束し、世界各国からもこれを審判よろしく見届けてもらったわけです。(仮に韓国がゴールポストを動かそうとしたら、韓国に責任と問題があることを世界に知らしめるため。)したがって、日韓合意を韓国政府は再検証していますが、本合意を再交渉しようとか破棄しようとか持ち掛けられても、日本政府は一顧だにしてはなりません。

 

慰安婦問題については、「慰安婦の強制連行は行っていない」ということ、日本が謝罪している対象は、「強制連行」ではなく、軍が慰安婦の募集に関与したせいで、(日本人及び)朝鮮人の含め多くの女性たち(多くは貧しく、親兄弟のためや貧困から逃れるために身売りした。この点、パク・ユハ女史の「帝国の慰安婦」が最も正鵠を得ている)が、戦場にて苦労することになってしまったことを現代的モラルの視点から謝罪しているものであることなど、国連の場で明確に主張すべきだとずっと思っておりました。

 

ですから、昨年2月の女子差別撤廃条約対日審査において慰安婦問題に関する解答を担当することとなったときには、これを明確に主張することだけは絶対にやり遂げねばならない、対日審査は、実は選挙の話についての決断を迫られたタイミングと重なっていましたが、これだけはやり遂げないと辞めることはできないと決意していました。いろいろ本当に大変でしたが、杉山外審(当時)の発言という形で実現できてほっとしました。そして、これが私にとって外務省における最後の仕事となりました。今でも、杉山発言は、国連において最も日本政府が明確かつ詳細に慰安婦の強制連行はなかったこと、慰安婦問題の背景などを説明したものであると思います。

 

私は、韓国に3年近く駐在していましたが、慰安婦像が大使館前に建てられたのは赴任してほんの数か月のことでした。日韓関係も日中関係もつるべ落としのように悪くなった時で、日々歴史問題について挑戦されているように感じましたし、そのおかげで日韓の歴史を白村江の戦いの遥か前からさかのぼって研究も致しました。この点について書くと半端なく長くなるので割愛します(別途ブログに書きたいと思います)が、ともかく、朝鮮半島というのは日本にとっては重要でありかつ常に頭の痛い場所なのです。

 

徴用工については65年の日韓基本条約及び請求権協定で解決済みと韓国政府自身が認めていたにもかかわらずその認識をあっさり覆すとすれば、まともな法治国家とはいえない態度です。仮に、本当に徴用工裁判で韓国国内で敗訴したら(情治国家なのでその可能性は高いと思いますが)ICJに提訴するなど断固とした措置をとるべきであり、一社でも支払いに応じたりすれば、本問題は燎原の火のごとく広がり、日本企業と日本経済に多大な損害を与えることでしょう。


韓国に対し、「反日」は高くつくというコストを与えなければ絶対にこの悪循環は断ち切れません。口頭で抗議するだけでは馬耳東風ですから、本来は、目には目を式のレシプロカルな対応が必要なのです(例えば、ライダハンの像が韓国大使館前に建つとか、日本企業が韓国への資本投下や工場建設を止めるとか。)。

 

ムンジェイン大統領がツートラックアプローチなどと言っていますが、冗談も休み休みに言ってもらいたい。歴史問題を蒸し返して難癖をつけておきながら一方で北朝鮮や経済では仲良くしてね、なんて虫の良いことはありえません。といっても、日本ならきっということ聞いてくれるよね、と思っているのでしょうね。実際、今は北朝鮮情勢が緊迫しており、日韓関係を悪くすることは日本としては避けたいところです。北朝鮮に対処する上で日米韓の連携が極めて重要だからです。本来は韓国もそのように考えて歴史問題については慎重な配慮をすべきところなのですが、そうなっていないのは残念です。

 

しかし、遡って原因を考えてみると、歴史問題を一番最初に作り出したのは実は日本の一部勢力です。日本人自身なのです。慰安婦問題も南京大虐殺も全部日本人がわざわざ韓国や中国や国連に出かけて行って火をつけて回った問題です。ですから、結局、我々日本人自身がしっかりした歴史観を持つことが長期的には最も重要なことだと思います。歴史を支配されれば結局、独立を失ってしまうものです。

 
残念なことに、我々日本人はまともに近現代史(特に太平洋戦争に至る過程から戦後まで)を勉強する機会がないまま半世紀以上過ごしてしまいました。少なくとも私は学校教育の中で日清、日露戦争あたりまではともかく、およそ太平洋戦争については殆どまともに習ったおぼえがありません(教科書をなぞりあとはプリント読んどいて、みたいな対応)。大学と留学中にやっとまともな知識と理解を得ることができました。今は多少まともになったのでしょうか。それは、太平洋戦争について教えることはとても難しいからでしょう。先生を責めるのは酷というもので、国家としての統一的総括がなされていないから難しいのは当然です。だから、中韓から歴史攻撃されても、そうかなと信じてしまったり、違うと感じてもまともな反論ができない日本人が多いと思います。
 
もう一方において、これは韓国人や中国人だけではなく、東南アジアの人にも言われたことがあるのですが、確かに何度も謝罪してもらったけれど、日本人は、太平洋戦争についてアジア諸国に多大な被害を及ぼしたことについて心底反省しているように「感じられない」、という意見には虚心坦懐に耳を傾けるべきだと思います。太平洋戦争について深く勉強する機会がないわけですから、日本人が表層的な理解しかできない状況であることはそのとおりでしょう。
 
自身勉強して思いましたが、太平洋戦争は、日本にとっては複雑骨折のような戦争だったと思いますし、だから総括が難しいのは確かです。ですが、日本人自身が、悪いことも全部含め、先の大戦に関する歴史についてきちんと学校教育できちんとした知識と様々な見解があるにせよ一定の見方というものを学んでいかねばならないと思います。そして、それは、先の大戦だけでなく、日本という国についての歴史についてどう学ぶかについても思うところが多くあります。が、この点書き出すと長くなるのでまた別途。

 

さて、随分厳しいことを書きましたが、私は、韓国がただ嫌いなわけではありません。というか、嫌いとか好きとかそういう風に単純に割り切れるような話ではないのです。懐かしい思い出もあり、韓国で友人もできましたし、温かい気持ちでいたいのです。こういうニュースが出ると本当にがっくりくるというか脱力してしまいます。韓国は隣国であり、日韓関係が安定して友好的であることは、朝鮮半島情勢や大陸の戦略図を考えてみても、日本にとって極めて重要です。日韓関係が歴史問題に支配されるような状況は本当はお互い不幸です。歴史問題をできるだけマージナライズするしかないのですが、Two to tango、日本が一人で頑張っても仕方ない。「反日」がなかったらどんなに良い国なんだろうと何度思ったかしれませんし、人同士として会えば韓国人と意気投合する日本人は多いでしょう(とても情のあつい人が多い)。韓国のおかれた歴史的地政学的状況には深く同情しますし、日本が植民地支配するに至ったことも申し訳なく思います。それでも、韓国は、事実のまま受け止め、日本に対するねじれた感情を克服したときに、真に自由になれるのではないか、と思うのです。韓国にこそ、ぜひ「勇気をもって歴史に取り組」んで頂きたい。