主に明治時代、鉄道と川や道路が交差する部分に築造された、レンガ積み拱渠。
その中で、鉄道が道路や河川と斜めに交差するために、トンネルのアーチ部が斜めに積まれている、斜拱渠。
それを、通称「ねじりまんぽ」と呼ばれている。海外では、「Skew Archi」と呼ばれるのが一般的である。
過去のねじりまんぽの解説はこちら→<ねじりまんぽの解説>
その、代表的なものと云えば、京都にある南禅寺近くの琵琶湖疏水インクライン直下の「蹴上トンネル」であろう。その螺旋構造の美しさは、筆舌に尽くしがたい。
日本では最古の”ねじりまんぽ”は、明治7年に完成した東海道本線大阪~神戸に現存している。全国的には、30箇所前後が造られたようだが、その詳細は文献に残されていないようである。
”ねじりまんぽ”は、煉瓦及び石造構造特有の技術である。コンクリート全盛期には、まったく必要が無い技術なので、その技術の伝承はされなかった。よって、幻の技術とも云われている。
その技術は、どこから伝わったのだろうか。調べてみると、東海道本線大阪~神戸間を造る時に、イギリスからの”お雇い外国人”からが有力な説なようである。
それなら、本場の技術を見てみたいと常に思っていた。しかし、日本にある”ねじりまんぽ”は、車や自転車が無ければ行けないなど、交通の便が悪いところが多い。実際にイギリスで見る事ができるのだろうか・・・
結論を言えばイギリスの”ねじりまんぽ”は、そこらじゅうにふれる普遍の技術であった。日本人が、イギリスの”ねじりまんぽ”を紹介した例は無いようなので、このブログで少しだけ紹介しようと思う。
(1)保存鉄道であるブルーベル鉄道路線
この路線には、全部で5本あった。すべて、跨線橋として使用されていた。ただし、車窓としてなので、撮影は困難だった。
その1
その2
(2)アイアンブリッジ鉄博物館の横にあった廃線跡とねじりまんぽ
イングランド中西部にあるアイアンブリッジ鉄博物館を見学中に、敷地外に鉄道由来のアーチ橋を発見したので、寄ってみる。近くによると、斜角のきつい通路をみつける。
感動の”ねじりまんぽ”との対面。見事なひねりっぷりであった。
ここを写真に掲載したのは日本人初か!?
とても、見ごたえのある完璧な”ねじりまんぽ”であった。
煉瓦を眺めていると、その力のかかり具合(圧縮応力の伝達)がよくわかる。
それ以外にも、ほれぼれするような煉瓦構造物が続く。
橋梁の上は廃線跡であった。しばし、廃線跡ウオーキングを楽しむ。
さきほどの”ねじりまんぽ”の上あたりを歩く。
(3)スランゴスレン(Llangollen Railway)保存鉄道のCarrog駅
跨道橋がねじりまんぽであった。
その端部処理が、凸凹でおもしろい。
ここでは、現役鉄道の為に、そばまで寄ることができない。写真技術が未熟なので、うまく撮影できなかった。
かろうじて、そのねじり具合がわかるであろうか。
(4)キースリー&ワースヴァレー鉄道にあった跨道橋
こちらは、鉄道の上を越える跨道橋であった。
アーチ構造の主要部材は、切石であった。角度の少ない斜角だったので、”ねじりまんぽ”としては迫力が無い。だが、貴重な切石部材なので価値がある。日本では、三岐鉄道の六把野井水に近い。
(5)リーズ・リバプール運河の整流トンネル
リーズ駅の下部にリーズ・リバプール運河が流れている。それは、見事なレンガトンネルがあった。また、同様な大断面の地下トンネルが数本ある。
そのトンネル同士を連絡するための、”ねじりまんぽ”が施工されていた。
45度くらいの斜角なので、捻り具合が気持ちいい。
覆工のギザギザ感も見ていて美しい。ただ、運河の流れる音が「ゴゴゴゴ・・・・」と強烈な轟音なので、じっくりと見る気がしない。物件は、多数ありそうであったが、早々と退散。
(6)スコットランドにあるヘイマーケット駅のホーム
スコットランドのエディンバラ駅の隣にある、ヘイマーケット(Heymarket)駅のホームの端部にある大断面の”ねじりまんぽ”。斜角のついた跨道橋である。
イギリスでは、非電化区間がたくさんある。よって、近郊電車を除いた遠距離列車はほとんどがディーゼルである。よって、すべてのトンネルは真っ黒に煤けているのが残念である。
イギリスには、相当多くの”ねじりまんぽ”が存在していると思われる。それも、現役で使用されている。しかし、現代では煉瓦は使用せずに、コンクリートでの施工が100%近いと思われる。
よって、イギリスも日本も、”ねじりまんぽ”は失われた技術なのであろう。
何故、イギリスには”ねじりまんぽ”が多いのだろうか。
それは、古い技術である煉瓦積みの施工期間の差であろう。イギリスでは古来から使われてきたが、日本で本格的に使われだしたのは明治維新後である。
失われた技術というのは、どうしてこんなにも美しいのであろうか。