2023年に通年で、1987〜1993年の間に運転開始されたドイツ・オーストリアを走るユーロシティの歴史を振り返りました。その参考にしたのが、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenというドイツ語本であり、この続編がDie EuroCity-Zuege: Teil 2: 1993 bis 2020 として出版されています。そのため、引き続き私の後学、備忘を兼ねて原文訳を補足しながらまとめていきます。位置づけは前回に続き第2編となります。

 

第2編の15回目は、ミュンヘン〜ストラスブール間で運行されたユーロシティ列車を取り上げます。

ミュンヘン〜ストラスブール間のユーロシティ列車

 

(この写真が参考文献に掲載されているわけではありません)

 

(以下本文を参照に日本語訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

 ケルン〜ライン=マイン高速新線(ケルン〜フランクフルト・マイン)の開通に伴い、ドイツ鉄道は2002年12月15日に長距離路線の大幅な再編成を実施する。この新しいコンセプトは、ミュンヘン〜シュトゥットガルト〜カールスルーエ間の長距離列車にも適用された。

 この改正では、従来のインターレギオ列車に代わって、ユーロシティ列車が2時間等間隔で運行されるようになった。同時に、ユーロシティーの運行がユーロシティ モーツァルト号にも影響し、同列車はミュンヘン中央駅~ウィーン西駅間に運転区間短縮が行われた(数年後には完全に廃止)。なお、ミュンヘン〜カールスルーエ間の新サービスには以下のユーロシティ列車が含まれる:

EC60/61、EC266/267 ミュンヘン中央駅〜ストラスブール(このセクションで詳しく説明)

EC64/65 ミュンヘン中央駅〜パリ駅間(別項で説明)

EC264/265 シュトゥットガルト中央駅〜ストラスブール(別項で説明)

以下、EC60/61、EC266/267について、この章で詳しく解説する。

これから紹介する4列車はすべてDBプッシュプル編成(内訳はAvmz, Apmz, WRmz, Bvmz, 4 Bpmz, Bpmbdzf)であり、カールスルーエ以東ではDB-101型電気機関車が牽引している。特に注目すべきは全列車にWRmz134の食堂車が連結されていることだ!

 

西行EC60は、パリからのEC65としてミュンヘン中央駅に15:14に到着後、ミュンヘン中央駅発16:44としてストラスブール方面へ折り返す。ミュンヘン〜シュトゥットガルト間のICE列車がアウグスブルク中央駅とウルム中央駅にしか途中停車しないのとは対照的に、EC60はミュンヘン・パーシング駅、ゲッピンゲン、プロヒンゲンにも途中停車した。その後シュトゥットガルト中央駅で方向転換後、ブルッフザール、カールスルーエ中央駅、バーデン・バーデン、ケールに途中停車し、終着ストラスブール着21:00。なお、シュトゥットガルトでの途中停車時間5分(19:06着/19:11発)は、DB-101形電気機関車と制御客車連結によるプッシュプル編成のたまものだったが、一方でカールスルーエでの機関車交換には13分要している(19:53着/20:06発)。

対向の東行EC61について、編成は大きく2つで構成されている。

:ストラスブール→カールスルーエ間のSNCF客車5両(B10tu×2、B9ux、A4B6u、A9u)

:ストラスブール→ミュンヘン間のDB編成(基本編成)

東行EC61はストラスブール発6:57で、EC61と同様にケール、バーデン・バーデン、カールスルーエ(7:53着/8:07発、ここでDB-181.2型からDB-101型電気機関車に交換)、ブルッフザール、シュトゥットガルト中央駅(8:49着/8:53発)、プロヒンゲン、ゲッピンゲン、ウルム中央駅、アウクスブルク中央駅、ミュンヘン・パーシング駅に途中停車し、ミュンヘン中央駅着11:14。EC60/61の所要時間はそれぞれ4時間16分、4時間17分で、表定速度は97km/hを下回らない。

 

一方、EC266/267をめぐる運用は左右対称的なダイヤで運行されている。西行EC266はミュンヘン中央駅発6:44、ストラスブール着11:00で、ストラスブールではEC265として出発(ストラスブール発12:57、シュトゥットガルト着14:49)。

対向の東行について、まずEC264(シュトゥットガルト発13:11、ストラスブール着15:00)でストラスブールに到着後、折り返しEC267となりストラスブール発16:57で、ミュンヘン中央駅着21:14。つまり、EC60/61とEC266/267のダイヤの関係性は、EC60/61のちょうど10時間後にEC266/267が運行されるダイヤになっている!なお、以降これらの所要時間は分単位の軽微な変更が入っている。

 

しかし、2004年12月12日から使用される客車には大きな変更が加えられる。従来制御客車として連結されたBpmbdzfがSNCFネットワーク内で何度も混乱を引き起こし、プッシュプル列車として機能しなかったため、代わりに自転車搭載スペース付の旧型非冷房のインターレギオ用客車(Bimdz)に置き換えられたのだ。しかし、カールスルーエでのDB-181.2型からDB-101型電気機関車への交換は、シュトゥットガルト中央駅での入れ替え運用をよりスムースにするため(そして人員削減)に必要であるため、結局カールスルーエ〜ミュンヘン間では、先頭のDB-101型(時折DB-120型)電気機関車1両とは別に、同機関車1両が最後尾に配置される「サンドイッチ運転」を余儀なくされたのだ。それにしてもカールスルーエでの一連の機回し操作は複雑で、しばしば遅れにつながった。この列車について、21世紀最初の10年間にDBでよく聞かれた言葉が引用すれば「どんな犠牲を払っても、節約するのだ!」となる。

 

2005年12月11日以降、EC60/61とEC64/65との共通運用ローテーションは解消され、代わりにEC60/61は、EC56/57 フランクフルト中央駅〜パリ東駅間と、IC2054/2055 フランクフルト中央駅〜ザールブリュッケン中央駅間を含む、別の6日間ローテーションの共通運用に組み込まれた。

 

フランスの高速新線LGV東ヨーロッパ線の第1期開業(パリ~ボドルクール間)は、ここで取り上げた2組のユーロシティ列車に大きな影響を与えた。

2007年12月9日でEC266/267が廃止される一方、EC60/61の運行は継続されたものの、食堂車は1等・ビストロ合造車(ARkimbz)へ、編成最後部の車両がBimdからBpmbdzfに戻される変更があった。

 

2008年12月13日、EC60/61は列車番号EC360/361に変更される。なお従来のEC60/61の列車番号はミュンヘン中央駅〜ウィーン西駅間の列車に鞍替えされている。

EC360/361の運用について、ミュンヘン〜カールスルーエ間を他のインターシティ列車と共同運用するローテーションに組み込まれた。

1日目:

EC361 ストラスブール発6:53→ミュンヘン中央駅着11:17

IC2260 ミュンヘン中央駅発12:41→カールスルーエ中央駅着15:50

IC2267 カールスルーエ中央駅発18:06→ミュンヘン中央駅着21:06

 

2日目:

IC2266 ミュンヘン中央駅発6:41→カールスルーエ中央駅着9:53

IC2261 カールスルーエ中央駅発12:06→ミュンヘン中央駅着15:16

EC360 ミュンヘン中央駅発16:43→ストラスブール着21:01

 

2010年12月12日以降、EC360/361は列車番号と時刻表を維持したままインターシティに格下げされ、そのインターシティ列車も最終的に2014年12月15日から始まる2015年ダイヤ改正で廃止された。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

2002〜03年冬ダイヤ

コンパートメント客車(1等、2等、1・2等合造)、オープン座席車(1等、2等)、

食堂車、ドイツとフランスの客車、カールスルーエでフランス国鉄編成の増解結

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Züge: Teil 2 1994-2020 /Jean-Pierre Malaspina, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)