毎度、話が長い(くどい)このブログ。久々に書いたと思ったら、長編かよ、と思っていらっしゃる方も多いかと思いますが、私も思ってます。全然終わりが見えん・・・

 

まあ、薄毛対策、というのは、一大ジャンルですし、悩みが深いですからねえ。日本人男性は特に薄毛を気にしているようで、海外のデータとかをみると、そこまで気にしていない様子。ダイバーシティが進んで、そういうのを気にしなくなったら良いのに、と思いますが、そうなると我々の商売がなあ・・・・

 

とまあ、脱線はほどほどに。

 

前回まで、「化粧品」「医薬品」「医薬部外品」の違いとか、毛周期とは何か、など基本的な話(?)を書いてきたわけですが、ここから育毛剤(めんどくさいので、まとめてこう呼びます)の主たる機能性、というかメカニズムは大きく4種類に分かれるよ、という話。

主たるメカニズムとは以下の4つです。
1.血行促進
2.男性ホルモンの抑制
3.毛母へのエネルギーチャージ
4.毛母への刺激


ちなみに、この辺の話を理解するには、その1で書いた毛周期の話を理解しておく必要がありますので、ご存じない方は是非ご一読ください。まあ、ちょっと検索するとゴロゴロ情報が出てくるので、そちらでご覧いただいてもよいですが(むしろそのほうが図解して合ってわかりやすいかも)

ということで、相変わらず長い前置きを経て、各メカニズムの説明です。

1.血行促進
血管拡張作用などで、血流を増やす成分を配合するタイプです。

 

血行が滞ると、髪が弱くなる(未成熟になりやすい)、抜けやすくなるなどの理屈で、シンプルなメカニズムですが、わかりやすくて良いですね。ほとんどすべての育毛剤にこの成分は入っていると思います。血行を促進させると何が良いかというと、血液は細胞へ栄養を運び、酸素を運んで、働きをサポートするためのもので、これを増やすことで毛根の働きを増強させ、毛が生えやすい状態にするというものです。

 

血行促進作用は、様々な植物エキスでも見られる作用で、最も一般的なのはビタミンE(酢酸トコフェロール)ですが、植物エキスでオタネニンジン、センブリ、トウキなどの漢方成分や、ゲンチアナ、松樹皮エキスなどが知られていて、それぞれ育毛効果もあるとされています。唐辛子の成分で有名なカプサイシンとか、冷感作用で知られるメントールなんかも、作用が知られていて、育毛剤に入っているケースがありますが、こちらは別の話もあります(4で説明します)。

 

こちらは、成分のみならず、ジェットの刺激で血行促進という話も。メントール多めのタイプですね。

 

おなじみミノキシジル配合の医薬品。前回ご紹介したアンファーもそうですが、化粧品メーカー(ロートさんは、厳密には薬会社ですが)が発売するケースがちょっとずつ増えてきています。もっとも、医薬品なので、購入は若干めんどくさいんですけどね。


一説によると、血行促進は発毛にも効果があるとのこと。血行を増やすことで、毛母に刺激を与え、休止期から発毛へと促すというのです。まあ、要は刺激なわけですが・・

2.男性ホルモンの抑制
血行促進と真逆に説明がややこしいのがこちら。


よく、薄毛の原因として男性ホルモン過多とかを指摘されますが、実は男性ホルモンは直接影響しているわけではありません。実際に抜け毛に関係するのはDHT(ジヒドロテストステロン)という物質で、これは男性ホルモン(テストステロン)から5αーリダクターゼという酵素によって生み出されます。なので、男性ホルモンが多くても、この酵素があまり動かなかったり、DHTを感知して毛母細胞を退行期へと導くTGF-βという物質を生産する受容体の感度が低かったりすると、男性ホルモンがいくら多くても薄毛にはなりにくいのです。ややこしいですよね。すでに、理解しにくい専門用語多くて、拒否反応も出ているかと思います。これでも、かなりざっくりなんですけどねえ・・


ということで、「男性ホルモンの抑制」と不正確な書き方をしていますが、ここに注目しているメカニズムには

・男性ホルモンの分泌抑制:
割と知られているのは植物系エストロゲン(女性ホルモン)の成分。ヤム芋の成分や大豆イソフラボン、ザクロなどが有名です。

・5αーリダクターゼの活性阻害:
これによって、男性ホルモンをDHTに変えさせない。DHTにならなければ薄毛の原因にならないという理屈ですね。医薬品のプロペシアはここに効くと言われています。植物エキス系ではレッドクローバーという成分があり、こちらはイソフラボンの一種なのですが、データではかなり効果が高そうでした。

・DHT受容体の阻害:
こちらはあまり知られていませんが、西洋で前立腺肥大の予防として有名なノコギリヤシは、5αリダクターゼ阻害にも有効ですが、こちらのレセプターを阻害する作用もあるのだとか。

・TGF-βの活性阻害;
抜け毛の原因になる、退行期への移行を指示する物質を阻害することで、健全な髪の育成を守るというメカニズム。ここまで来ると、水際作戦という感がありますが、花王のT-フラバノンという成分は、ここに効果を発揮するのだとか。他にも、このTGF-βが毛母細胞に作用するための受容体(毛母細胞側。もうほんとに水際)をガードするペプチドなんてものもあります。

 

余計なお世話ですが、バイタルなんて名前、良く通ったなと。最近の申請ではまず通過しない名前だなあと←ほんとに余計な情報


実際には、間接的に効果のあることとして、頭皮を清潔に保ち、頭皮皮脂を酸化させないというのも非常に重要なポイント。頭皮皮脂が酸化されると、上記の薄毛(脱毛)のメカニズムに作用してしまうという研究結果があります。薄毛の人は、髪が抜けるのを怖がるあまり、頭皮をしっかり洗わないという人が、まあまあいらっしゃいます。頭皮が透けている男性で、見るからに脂でテカっている人を見かけることがありますが(最近はずいぶん少なくなりましたけれど)、話を聞くと、洗って流すときに毛が流れていくのがイヤだから、と聞いたことがあり、いやいや豪速で逆効果だから!と思った記憶があります。

 

という部分に着目して、一時はものすごい売り上げだったというスカルプD


ああ、予想通り、個々のパートがエライことに・・・

3.毛母へのエネルギーチャージ
ここは、2つのポイントがあって、「休止期の毛母細胞を目覚めさせる」というコンセプト(これは、実際には次の4になります)と「発毛から成長期のサポート」ですが、主力は後者です。


ここにターゲットを絞った成分となると、最も有名なのは資生堂のアデノシン。毛母細胞の活性化により成長期毛をサポートするのが主たるメカニズムで、要するに髪が太く、しっかり成長するのを助けるというもの。発毛した後、成長しきれずに未成熟毛のまま抜け落ちてしまうのを防ぐ、というと、若干インパクト薄い感じですが(と思うのは私だけ?)、先の毛周期のことを考えると、これは非常に重要なポイント。アデノシンの場合は、こうした機能を細胞レベルで研究し、サイトカインとかいろいろ見ているので、信頼できるという点も評価高いです(上から目線ですみません)。実際には、毛母細胞を刺激するという点で、発毛にも寄与していると言われています。

 


実は、このコンセプトの成分は比較的昔からあって、最初に出したのはライオンのペンタデカンという製品と記憶しています(確か、80年台)。

 

ペンタデカン酸グリセリドという成分が、毛母細胞にエネルギーを与え、発毛・育毛を強力にサポートするというものでした。この製品、実際に本当に良く効いて、裏情報では当時の育毛剤の中では抜群だったらしいのですが、その後、申請ミスやら実験の不手際とかが見つかって、発売中止になったという歴史があります(L社の黒歴史)。現在は、これまた発毛系の成分である、サイトプリン(植物を生やすということで有名な成分)を追加して、イノベートという製品で販売されていますが、知名度はイマイチな感じ。惜しいことです。

 

 

実は、薬用成分であるミノキシジルも、ほぼ同様の作用。こちらは、強力な血管拡張作用もあり、毛母細胞に血液に乗せて栄養を届けるというのが主たるメカニズムとされていますが、毛包を育てることで成長期毛をサポートし、成熟させる役割もあります。

一般には、こうした「成長期毛のサポート/髪の毛の成熟化をサポート」が「育毛」なのですが、実際には、次の「発毛」との関連性が強く、このあたりが混ざってしまっていますね。

 

ミノキシジルは「発毛剤」ですが、どうもメカニズムを見ると育毛の機能も強そうだし、アデノシンやペンタデカンは「育毛剤」なのですが、発毛にも関与していたりと、なかなかに混乱しています。

 

ということで、長くなったので、実は本命でネタ豊富な「毛母への刺激」は次回で。