多分、かなりの長編になりそうな今回。まあ、ゆるゆるとお付き合いください。私もいつ終わるか、心配になりつつあるこのごろ。

 

前回は、薄毛に関して知っておいたほうがいい「毛周期」について、けっこうくどくど書いています。

 

薄毛とはそもそも何なのかという話を、生じている現象を3つに分けて、それぞれ毛周期という観点からはどのように理解するか、という話を書いているわけです。
前回も書きましたが、実際に「薄毛」と表現されているのは、「頭皮が見えている状態」のことを指します。これには3種類あって
1.まったく毛が生えていない
2.毛穴から生えている毛の本数が少ない
3.生えている毛が細すぎて、頭皮が透けている

という感じで、前回は1で終わっていました。

 

ちなみに、「1.まったく毛が生えていない」という状態は、休止期に入った髪の毛が、再び生えるプロセスに入らない、ということなのですが、これにもいくつかのパターンがあるので、ややこしいのです、という話でした。

 

今回は2から。

2.毛穴から生えている毛の本数が少ない
通常は、一つの毛穴から数本の髪の毛が生えますが、その数が減ってしまうというケース。これも休止期から目覚めなくなったというケースの例ですが、実際にはこのケースはあまり多くないような印象を受けます。こちらのケースでは、薄毛対策の処置が1と同じになります。

3.生えている毛が細すぎて、頭皮が透けている
これが最も多いパターンのよう。毛周期の話はこのケースで最も必要な知識です。


前述の通り毛周期には「成長期」というものがあります。髪の毛は、休止期から目覚めて生え始める時は、産毛のような、細くて弱々しい毛です。これが、成長するにしたがって、太く、丈夫になってきます。生えかけの髪の毛を見ると、毛先が細いですが、これは成長するにしたがって太くなるからのよう。この太くなるプロセスを髪の毛の成熟という言い方をし、正しく育った髪の毛を「成熟毛」と呼ぶこともあります。


成熟毛があれば「未成熟毛」もあります。毛周期を理解することが必要なのはこのケースで、せっかく生えた髪の毛が、成熟しきれずに、成長期をすっ飛ばして「退行期」へ進んでしまう、もしくは進まないまでも、十分に成熟しない細い毛のまま成長し続けると、細い毛になり、結果として頭皮が透けて見えるようになってしまいます。これが、本来の「薄毛」という状態です。

ちなみに、よく相談されるお悩みに、抜け毛が多い、というものがあるのですが、毛周期の観点からいうと、髪が抜けるというのは、休止期に入り、次の発毛を待つ準備をしている状態で、毛周期が正常に動いていることを示しています。なので、ここで気にするべきは、以下の二つです。


・本当に抜け毛が多いのか:例えば、長かったり、太かったりすると抜け毛が多いように感じられます。髪が伸びてくると、同じ本数でも抜け毛が多いように感じられるもので、そこで心配しても仕方がありません。また、もともとの量が多いと、当然、休止期に入る髪も多いので、抜け毛は多いです。気になる場合は、シャンプーするときに、排水溝に網を置いて、抜け毛の数を計測するというやり方があります。定期的にチェックして、明らかに増えているようなら、要注意ですが、どちらかというと気にすべきは次のケース。


・抜け毛はどんな毛か:前述の通り、成長期が終わって休止期に以降する過程で抜けているのであれば、抜け毛は太く、元気な毛です。一方、抜けている毛が細く、弱々しい毛の場合は要注意。前述の3に該当する「未成熟毛」が増えているのであれば、薄毛に向かっている可能性大です。

これに、加えるとするなら、毛根がどうなっているかも調べておいたほうがいいかもしれません。シャンプーやブラッシングの際に抜けた毛に、毛根がついていたら、物理的に引き抜いている証拠。髪がもつれていたり、傷んでいる場合に起こる現象ですが、これは育毛とは別の問題として厄介です。洗い方を変えるか、髪の毛のお手入れ方法を変更するか、などの対策が必要となります。

説明が長くてすみません。

まあ、こんな感じで、一口に薄毛と言ってもいろんな種類があるのですが、種類がある以上対策も多岐にわたっています。最も一般的なのは育毛剤ですが、それにもいろんなメカニズムがあります。という話が次のトピック。

2)育毛剤と発毛剤は何が違うのか。お勧めは何か。

一般にはこの二つの区別が無いように思うのですが、実際には育毛剤は医薬部外品、発毛剤は医薬品という明確な区分があります。また、この二つのどちらにも属さない化粧品の育毛剤(この場合はスカルプローションという分類で販売されるケースが多いです)もあります。

それぞれ何が違うかというと、実は機能的にはさほど違いはありません。

育毛剤は、医薬部外品主剤の認証を得た成分が入っていて、かつ部外品の条件を満たしている場合に「育毛剤」という名称が使えます。部外品の条件というのは、部外品に使用できる成分のみで作られているということ、くらいに理解しておけばよいかなと。この辺は薬機法のややこしい部分で、説明すると美容にまったく関係ない話が延々続いてしまうのでここでは避けますが、とにかくある程度制限された条件で作られています。

発毛剤は、医薬品の発毛成分を含んでいるもので、最も有名なのは「ミノキシジル」。海外では「Rogaine」という名前で販売されていますが、日本では大正製薬の「リアップ」がこれに該当します。また、頭皮環境にフォーカスしたスカルプDシャンプーで有名なアンファーが、「メディカルミノキ」という製品を出していています。医薬品なので、ちょっと購入方法が面倒くさいのが、残念なところ。

 

 

 

発毛系の医薬品では、このほかに「プロペシア」が有名ですが、こちらは飲むほうで、塗るものではありません。実はミノキシジルも内服薬があり、当初はそちらで発毛剤として売られていました。もともとミノキシジルは血管拡張剤で、その副作用(!)として髪の毛が生えるとわかり、発毛剤への応用が決まった薬です。ただ、開発当初のデータを見たことがありますが、血管拡張剤というだけあって、高血圧の薬なのですが、まあまあの副作用(悪いほうの)率で、何人か亡くなっているはずです。

 

日本では、そのせいもあってだと思いますが、内服療法は無く、塗布するほうだけ使われているようです。プロペシアは男性ホルモンの方に作用するもの(ここのメカニズムは後述)なのですが、やっぱり副作用は結構あるみたい。有名なのは、勃起不全で、髪を生やしてモテたいという男性が、髪は増えたが夜の活躍ができないという矛盾に苦しまれるとか。切ない話や・・・

 

なぜか、プロペシアで検索したらこの製品が出てきて、調べたらノコギリヤシのサプリでした。これも、男性ホルモンに関与すると言われる成分ですね。


化粧品の場合は、医薬部外品の主剤が入っていないか、部外品に添加できない成分を使っているケースがほとんどです。「部外品に添加できない」と言われると、なんだか物騒な印象を受けますが、何のことはない、部外品の新規添加剤の申請がややこしく、かなりお金もかかるため、小さい化粧品会社や売り上げが望みずらい原料の場合は申請にお金をかけられない、人員を割けない、などの理由で承認を得ていないケースがほとんどです。そもそも、化粧品の原料になっている時点で、特に日本の化粧品会社が採用するものは、だいたい安全性確認されていますしね。逆にデータだけ見ると、かなり効き目のある成分が含まれていることも多いです。

例えば、先のミノキシジルと成分構造が似ていて、同じような働きをするという成分があります。ミノキシジルは、化学構造に2つの六角形の構造を持ちますが、似て非なる成分は、これの1つが五角形になっていいますが、その他は、ほぼ同じような作りをしていて、臨床データでは効能も近いとのこと。ただ、ミノキシジルとは異なる成分なので、医薬品にはならず、化粧品としての配合が可能ということです。

 

スカルプローションもいくつかありますが、まつげ美容液で多用されている様子。確かに、まつげ美容液なら、そもそも医薬部外品にならないので、配合しやすいなと(←開発担当目線)。

 

その他、ペプチドなどにも同様の成分があったと記憶しています。データを見ると、結構な効果が出ているので、もったいないなあと。そんな成分は結構たくさんあります(薬機法の関係で、あまり大っぴらに書けないけど)。

とまあ、ここまで制度の話をくどくど書いていたのは、ざっくり読んでいただけるとお分かりいただけてるかもしれませんが、この3者、つまり「化粧品」「医薬品」「医薬部外品」では、中身の機能性という点では、さほど差が無いのです。育毛剤も発毛剤も、主たる機能性、というかメカニズムは大きく4種類に分かれるように思います。この機能性とか効き方に、多少の効果の違いはありますが、基本的に差は無いんじゃないかなと思います。

主たるメカニズムとは以下の4つです。
1.血行促進
2.男性ホルモンの抑制
3.毛母へのエネルギーチャージ
4.毛母への刺激

ということで、続きます。次も盛沢山予定・・