毎日、東京は猛暑で、熱中症で病院に搬送される人が多いと報道されています(下に東京消防庁の熱中症患者の搬送数の推移を示しています。2018年は829日まで現在のものです)

 

出典:東京消防庁ホームページに掲載されたデータを素に作成。

 

 

確かに、今年(2018年)の東京の夏は去年よりずいぶんと暑いのです(2017、18両年の7~8月の日平均気温を下に示しています)。 

 

出典:気象庁ホームページに掲載されたデータを素に作成。

 

そしてそれは、地球の温暖化が進んで年々気温が上がっているからだと説明されます。さらに都会ではそれにヒートアイランド効果が上乗せされるので、それで年々日本の夏は過ごしにくいんだと。 

 

 

けれども、東京に限って言うと、違うと思う。

 

下に、東京の8月の平均気温と平均湿度の推移のグラフを示しています(2018年は828日までの平均値です)。

 

出典:気象庁ホームページに掲載されたデータを素に作成。

 

気温変化については、よく見せられる日本の年平均気温偏差のグラフと大きく違った印象は強く受けません。とは言え、5年間移動平均値(過去5年間の平均値をその年の値として表示した値)は、近年はむしろ下がり気味です。日本全体は暑くなっているのでしょうが、東京では決してそうではないことがわかります。

 

一方、びっくりするのは、近年8月の平均湿度が猛烈な勢いで上がっていることです。そもそも1950年代から東京の湿度が長期的に大きく下がっているということは知りませんでした。1940年代までの東京の8月の平均湿度は80パーセントほどであったのですが、2000年代には70パーセントを下回るほどまでに下がっていました。気温は少し上がっていますが、湿度は大きく下がっていたのです。その分、気温上昇の割には暑さを感じなくて済んだのではないでしょうか。

 

 

どうして、長期的に湿度が10パーセントポイント以上も下がったのか、何も報道されていませんのでわかりません。ネット記事を探しても、それに気づいた人はわずかにいるようですが、しかしその理由を説明したものは何もありません。

 

上のグラフは1890年からのもので少々長期過ぎるので、データの掲載期間を戦後に限ってみてみました。それが、下のグラフです。ここで、長期的な傾向がもう少しはっきりと見えてきました。

 

出典:気象庁のホームページに掲載されたデータを素に作成。長期傾向線は筆者が目算で追加。

 

東京の8月の気温上昇は、2010年頃をピークに落ち着いて、最近の数年間だけを見ると、むしろ低くなりつつあるような気配さえします。地球温暖化をいきなり否定するつもりはありませんが、しかし東京では温暖化はどんどんひどくなっているという具合では少なくともないように見えます。

 

しかし、一方、湿度の上昇はとても急なのです。2010年代に入って以降、70パーセント水準から80パーセントの水準へと10パーセントポイントもジャンプアップしています。ひょっとしたら、近年東京の夏がとても過ごしにくくなったのは、この湿度が大きな原因なんじゃないでしょうか?

 

 

ただ、今年(2018年)に限って言うと、湿度が前年より少し下がって一方で気温が高くなっています。だから今年熱中症の人が急増したのは、気温が高くなったかもしれません。しかし同時に、今年の8月の湿度は、10年前に比べればやっぱり10パーセントポイントほど高くなっています。

 

このあたりの東京の人の感じる暑さをどう言う指標で科学的に表されるのかよくわかりません。

 

昔よく耳にした不快指数というものを計算してみましたが、気温変化と同じような推移の様子が見とれるだけです(下のグラフを参照ください)。

 

出典:気象庁のホームページに掲載されたデータを素に計算式に当てはめて計算。

 

 

環境省が最近言い出した”暑さ指数“の8月の平均値を計算してみたら、今年(2018年)の8月は確かに”暑い“のですが(下のグラフを参照ください)、データ期間がわずか5年間ではこれがどういう意味を持つのかはよくわかりません。また指数の計算方式は、私のような気象学の門外漢にはさっぱりわかりません。つまり、このデータからは、私は意味ある情報を受け取ることはできませんでした。

 

出典:環境省のホームページに掲載されたデータを素に8/18/28の全日の平均値を計算して、その値を素に作成。

 

毎日、暑さの記録が書き替えられたと言って、地球温暖化のために今年の夏はとても“危険”なのだ、と説明されるのですが、少なくとも東京に限って言えば、気象データはその説明に整合はしていないのです。

 

誰か、一体東京という街の気候はどうなっているのか、納得できる科学的な説明をしてくれませんか?

 

最後になりましたが、残暑お見舞い申し上げます。皆様、すがすがしい秋を迎えられますように。

 

ラトヴィアの秋(Stanisław Masłowski画〈1902年〉)

【画像出展:Wikipedia File:Stanisław Masłowski (1853-1926), Autumn landscape in Rybiniszki, 1902.jpeg