霞が関で働く国家公務員の28%が過労死の危険を感じパワハラ被害は34%(1万1,500人) | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

(▲深夜も灯りが煌々とともる厚生労働省)

 

 

 11月28日(水)午後7時から午後10時まで「霞が関公務員相談ダイヤル」を実施します。

 



 私たちが実施したアンケート(国家公務員の残業実態アンケート2018等)によると、霞が関で働く国家公務員の28%(9,500人)が過労死の危険を感じ、パワハラ被害は34%(1万1,500人)、セクハラ被害は21%(7,100人)にのぼっています。「霞が関公務員相談ダイヤル」にあわせて「霞が関で働く国家公務員の座談会」を行いましたので、以下紹介します。(※座談会出席者=A省Aさん、B省Bさん、C省Cさん、司会・井上伸

  今回の残業実態アンケートの結果を見ると、過労死の危険ラインとされる月80時間以上残業した人は、前年より0.2ポイント減少して6.3%(2,142人)ですが、このアンケートに答えてくれている組合員は比較的残業が少ないというのが現場の実感です。

  そうですね。残業が多い人はアンケートに回答する時間もないというのが霞が関のリアルな実態ですから、アンケート結果に現れてこない「声なき声」の方に耳を傾けるべきだと思います。

霞が関の働き方ワースト1は厚生労働省
「過労死の危険を感じた」59%、「残業代不払い」84%


  省庁別のワースト3を見ると、厚生労働省(労働)は「過労死の危険を感じたことがある」58.9%(全体は28.0%)と、「残業手当に不払い部分がある」84.4%(全体は41.2%)と突出して多いですね。

  「働き方改革」を民間企業に対して進めなければいけない厚生労働省(労働)が「霞が関での働き方ワースト1」というのは深刻な問題です。

 



  「残業になる主な要因」を見ると、過労死ライン(月平均残業80時間以上)で働く人は、「業務量が多い」と「国会対応」がやはり突出しています。

  定員削減で係員なしの一人係長になってしまって、昔は数人で回していた仕事を補佐と係長だけで回す状況が広がっています。行政需要が増えて業務が複雑高度化しているので仕事は増大するばかりなのに、定員削減で職員は減らされ続けて欠員も補充されない。これでは過労死ラインで働く人が減らないのは当たり前です。

  休日出勤が前年より1.6ポイント増えて58.3%になっていますが、仕事が終わらないから実際休日の深夜でも霞が関不夜城になっていて庁舎の灯りが煌々とついています。

  職員が減らされ続ける中で、国会対応はますます大変になっていますね。

  私自身も国会対応で月の残業が120時間、140時間、160時間と3カ月続いたときは過労死の危険を感じました。毎月のように在職死亡や自殺などの報告がありますし、メンタル疾患に陥る職員も増え続けています。

  最近も過労死で亡くなった人がいて休憩室で倒れていました。3年前に政府が始めた「ゆう活」で生活リズムを崩してメンタル疾患に陥り最近退職に追い込まれた人もいます。業務量が増えているのに職員を減らしておいて「ゆう活」とか「プレミアムフライデー」とか政府主導の小手先の対策は問題だらけですね。

  業績評価に定時退庁や月1の有給休暇取得などが盛り込まれ、管理職は部下の残業が多いとマネジメントができていないと評価が下がる。職員も同様なので「隠れ残業」が増えています。有給休暇を取得したことにしておいて部下を働かせる管理職もいるなど酷いものです。

育休取り上げ、残業時間改ざんで残業なしに

  月の残業時間が40時間を超えないよう上司が厳命している職場では、早朝出勤したり、パソコンをシャットダウンして残業したり、挙句の果てに公文書改ざんならぬ残業時間改ざんで残業しても残業しなかったことに上司がしてしまうようなことも広がっています、

  残業代がきちんと出ないので、午前4時、5時まで働いて残業代を計算すると自給が400円になってしまう正規職員もいるのですが、最近は非常勤職員にまで終電がなくなるほど残業をさせておいて残業代をきちんと払わない酷い部署もあって許されないです。

  政府は「イクメンプロジェクト」を実施していますが、育児休暇中の女性職員に対して、「新年度の体制で職員が不足している」という理由で育児休暇を切り上げさせることも起きていたり、国会待機も家族的責任がある職員に配慮しないなど、子育ても困難な状況です。

 井上 ここで、全経済産業労働組合副委員長の飯塚盛康さんが最近寄せられた実態を送ってくれたので紹介しておきます。

 ◆現在うつ症状で病気休職中の職員
 「未経験の業務で勉強しようと思っても次から次に仕事が降ってくる。内容を理解できないし、周囲に聞いても自分で調べろと言われ、毎日終電で帰っていた。3か月でうつ病になって、今休んでいる。ひどくならないうちに労働組合が助けてくれたので、年内には復帰できそう。あの時、労働組合から声をかけてくれなかったらと思うとぞっとする」

 ◆20代女性職員
 「4月から10月開催のシンポジウムを準備していた。上司の了承を受けて課長に持っていくと全部やり直しを命じられた。その後、課長の了承をうけたものは部長に、部長の了承を受けたものは局長に、局長の了承を受けたものは大臣に全部ひっくり返された。こんなことを毎日終電までやらされていた。何が働き方改革だと思う」

 ◆今年入省の職員
 「入ってすぐに8時半出勤、最終電車の生活。他省庁にも合格したが、親も親戚も経済産業省を勧めたので入省したが、もう辞めたい。後輩には絶対に経済産業省には入るなと言う」(※その後、労働組合が対応して9時半出勤で遅くとも21時には退勤する体制をとらせたので、なんとか辞職は思いとどまっている)

 ◆30代男性職員
 「国会待機が本当にきつい。朝まで仕事をして家に風呂と着替えに帰るだけで、また午前9時半から勤務など、インターバル時間の確保どころか寝る時間も確保できない。霞が関はブラックである」

 ◆40代女性職員
 「質問主意書の答弁作成は、スケジュールが短いため、必ず深夜残業を伴う業務になっている。定員削減で対応できる職員が少なくなるばかりなのだから、質問主意書の答弁作成スケジュールにきちんと余裕を持たせるべきだ」

 ◆40代男性職員
 「国会の会期中は朝方まで働くので睡眠不足から仕事中に意識を失ったこともある。政府は働き方改革と言うならお膝元の霞が関職場をまともな労働環境にすべきだ」

 ◆30代男性職員
 「国会対応のことばかりが取り上げられるが、通常業務をこなすだけで終電になるのが実際で、国会が始まると朝方まで仕事ととなる。毎日仕事を辞めるかどうか考えながら仕事をする生活に疲れている」

 ◆20代女性職員
 「パワハラによる病気休職者が後を絶たない。根本的にパワハラを止める仕組みが作りが必要だと思う。パワハラの横行による精神的な負担に加えて、長時間過密労働で家に帰れないことも多く、私は女性ですが、こんな仕事をしていると将来子どもを生めなくなる体になるのでは、と怖くなるときがある」

 ◆30代男性職員
 「パワハラを受けてうつ病になり休職したが、労働組合の支援で現在は復帰。当時は国会対応で午前4~5時まで仕事することが当たり前だった。体調を崩す人が出ないように労働組合に頑張ってほしい」

 ◆30代男性職員
 「財務省の決裁文書改ざん後、全部の決裁は電子決裁システムで行うことになったが、電子決裁後の決裁文書を変更しないように、あらがじめ紙の書類で決裁をして修正がないようにしてから電子決裁システムで回すので二度手間になっている。こんなことで残業しているのが馬鹿馬鹿しい」

 井上 以上が経済産業省の最近の実態ですが、どう思われますか?

首相官邸のパワハラが霞が関クラッシャー上司のパワハラに拍車かける

  確かに森友学園問題での財務省の公文書改ざんの余波で、文書管理の実務を担う職員は益々仕事が増えていますね。そして、とりわけ官邸対応の仕事が増えています。土日深夜に官邸に呼び出されることが最近頻発しています。

  キャリア官僚はプライベートの携帯番号も官邸におさえられていて、24時間いつでも連絡がある。突然、官邸から「あと2時間で資料を作って持って来い!」などということが安倍政権になって劇的に増えています。首相官邸の言うことを聞かないとキャリアの出世の道は閉ざされる仕組みになっているわけですから、出世を望むキャリアは従わざるを得ない。首相官邸のパワハラでキャリア官僚が倒れていっています。

  内閣人事局による幹部職員人事一元化の弊害ですよね。官邸から言われた通りに仕事するキャリア官僚はどんどん偉くなっていって、モノ申す人は飛ばされる。モリカケや裁量労働制データ、直近では外国人の受け入れ拡大に向けた入管法改定案をめぐっての審議の基礎となるデータの偽装など、まさに私たちが危惧した通りの状況になっているわけです。

  首相官邸の圧力で仕事をするキャリア官僚は下へ向かってパワハラを発動することが多くなるわけです。昔から霞が関の職場にはクラッシャー上司と呼ばれるノンキャリ職員をパワハラで潰して回るキャリア官僚がいたのですが、安倍政権下では首相官邸という政治的権力も加えて部下を怒鳴り散らす。その結果、一人倒れ、二人倒れということになる。首相官邸の強権発動が霞が関のクラッシャー上司のパワハラ行為に拍車をかけているのがここ数年の特徴でもあります。

  そうした状況で、私たち労働組合へのパワハラ相談が増えていますが、労働組合としてきちんと取り組んでパワハラの問題は解決する事例も増えています。

 井上 霞が関の長時間労働をなくすにはどうすればいいでしょうか?

  定員削減をストップして職員を増やすことが根本的には必要です。加えて、国会対応を改善する必要があって、よく野党の質問通告が遅いから霞が関の国家公務員が大変なんだと指摘する方がいますが――実際深夜12時を過ぎて質問通告が来ることなどが多くて、そこから仕事をするので朝までかかるわけです――しかし、もとはと言えば与党の強引な国会運営等で野党は時間がない中で質問準備をせざるを得ないという側面も強いわけで、これは与野党両方の問題だと思うわけです。脱線しますが、与党議員の質問は政府へのおべんちゃらのような質問が多いので準備にそれほど時間がかからないというのもあったりします。

  そう思いますが、枝葉末節の問題にまで乱発する野党の質問主意書については、もう少しルールをつくっていかないと、質問主意書が出されて1週間で対応しなければいけない霞が関の現場にとっては大変ですね。

  現場の工夫としては、国会対応を当番制にするのと、人数を絞って、できるだけ国会待機を少なくする。そして、与野党の国会ルールをきちんとつくる。地方議会などでは質問通告は2日前に必ず締め切るというようなこともできているわけですから、国権の最高機関である国会が人間らしいルールをつくることは可能だと思います。

 

(井上伸)