銅イオン水の効果”「ただの水」の方がマシ…?【怪しすぎる除菌スプレー】を分析してみた ” | 名駅騎士面アーケード

名駅騎士面アーケード

名古屋駅の駅西銀座通り商店街の非公式ゆるキャラ(ご当地キャラ?)であります。鋼の頭と頑なな意志の「日本一固いゆるキャラ」として、昨今では新型コロナウイルス対策の為に活動中であります。
できるだけ科学を分かりやすく説明しているでありますよ。


 

Twitterで一時期バズってた除菌グッズ「ただの水」

 

何なのかと思っていたでありますが、どうやら銅イオン水溶液でありますか。(銅だけに)

リブログ元の記事にもありましたが、国内から発売されたAirAtom(エアアトム)という製品にも使われているようであります。

 

 

お馴染み銅イオン。同様に薄い青色。ちなみに塩化銅水溶液だともっと濃い青色であります。

中学校の理科とかで電気分解実験でやると思うでありますが。

 

これね。

一応、AirAtom(エアアトム)の方では『※一般的に作られる銅イオン水は硫酸銅を利用しておりますが、AirAtomは利用しておりません。』という注意事項が記載されているであります。

件の除菌スプレーは・・・不明でありますな。一番安価で容易に作るなら硫酸銅だとは思うでありますが。

ちなみにAirAtom(エアアトム)の方で「食品添加物」というのを安全性の売りに推しているでありますが、そもそも無機銅塩を含む無機塩類の多くは食品添加物だったりするであります。

https://products.kanto.co.jp/web/index.cgi?c=t_product_table&pk=434

それとまあ硫酸銅も、粉ミルクのミネラル強化剤として森永乳業製品などでも使われているであります。

https://ssl.hagukumi.ne.jp/products/hagukumi/

 

詳しく明らかになっていないので、エアアトムの方に使われているものが何なのかは不明でありますが。

まあイオン化しているなら強酸なのは確かでありましょう。酢酸銅?それとも炭酸銅か硝酸銅?

銅イオン水による殺菌・抗菌・抗ウイルスの仕組み

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000044459.html

 

これはエアアトムの紹介ページに載っていた図解であります。

 

>①銅イオン水を吹き付けた表面に銅イオンが付着。
>②付着した銅イオンが酸素と反応して活性酸素が発生。
>③銅イオンと活性酸素の2つのチカラで付着したウイルスや細菌を減少。
>④付着してからすぐに作用し始めるため、数分で効果を発揮。

 

この理論は過去に日本大学薬学部の研究と、日本微生物生態学会誌の成果報告がエビデンスと思われるであります。

研究者はいずれも日本大学薬学部薬学研究所の上席研究員理学博士、石田恒雄氏。

◇静菌・殺菌作用に基づく銅(II)イオン溶液による細菌細胞壁/細胞質膜/細胞質における溶菌・抗菌活性反応

http://www3.pha.nihon-u.ac.jp/~kenkyu-kiyo55/wordpress/wp-content/uploads/2016/08/ishida-2016.pdf

 

◇抗菌薬剤感受性試験結果に基づく銅イオン溶液の抗菌・殺菌作用過程

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmeja/31/2/31_45/_pdf

 

>■期待される効果について
>銅イオン水「AirAtom」を一般のスプレーボトルや加湿器で利用し、普段ご利用の衣類やマスク、普段触る場所に噴霧することで、抗菌抗ウイルス効果を発揮します。
>医療機関や介護施設、インフラを支えている方々の感染するリスクを下げる効果があると考えております。

 

要するに手指消毒用ではなく、光触媒などの酸化による抗ウイルス作用と同じく抗菌化コートを目的としたものという事でありましょうかね。

まあ確かに銀イオンや銅イオンにはそういう作用があると言えばあるでありますが。

 

■アルコールや消毒液との違い
>アルコールや消毒液はつけた時に殺菌効果があります。
>銅イオン水「AirAtom」は吹き付けたあと24時間程度の抗菌抗ウイルス効果が継続するため
>アルコールや消毒液のつけ忘れでの感染リスクの低減が見込まれます。

 

これもまあ、要するに「銅イオン水単体では殺菌できるわけではない」という事であります。

図解の『二つのチカラでウイルスや菌を減少』は誇張表現でありますな。

あくまでも使用した面に付着したウイルスが不活性化するまでの時間が短くなるという事。


>■安全性について
>・利用している原料は人体に安全な純銅、純水、食品添加物のみを利用している。
>・日本体育大学井川正治特任教授により安全性の検証を行ない問題ないことを確認している。

待て

なんでそこで日体大?井川正治教授は確かに医学博士でありますが、専門は環境生理学や運動生理学でありましょう?

https://researchmap.jp/read0029419

>開発リーダーの日本体育大学井川特任教授を中心に早急に商品化、販売をすることを決定しました。

第三者機関じゃないんかーい!

何がどう安全に問題ないのかがまったく不明であります!

 

そもそも銅に抗ウイルス効果があっても、それが持続的に付着し続けるとは限らないのではないでありますか?

例えばエーザイのイータック抗菌シートの場合、 接着剤の役割を果たす固定化成分の「シラン化合物」 が化学結合し、対象物表面に固定化されることで、抗菌作用が持続するであります。

https://www.eisai.co.jp/news/2019/news201964.html

 

対して銅イオン水は・・・

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000044459.html

>原料・濃度:純銅、純水、食品添加物 濃度:200ppm

これ多分、塗布箇所に手を付いたらそのまま剥がれて手に付着してしまうのでは?

 

銅のウイルス不活性化効果

>A型インフルエンザウイルスを銅表面に接触させ経時的に感染数を測定した結果、

1時間後に接種量の75%相当のウイルスが死滅し、6時間後は0.025%まで減少しました。

さらに最近はノロウイルス(ノロ代替ウイルスのネコカリシウイルスで実験)に対する不活化にも有効と判明しています。

 

うん、銅合金ではね?であります。

銅そのものと銅イオンは別物でありますよ?銅イオンでの検査結果はどこでありますか?

こっちのもっともらしいグラフも銅合金であります。

 

追記:5/19

公式サイトの説明とおかしな点

まず銅イオン水へ錯体化しているという点。この場合「アクア錯イオン」となるであります。

これは水溶液中に銅(II)イオンCu2+と水H2Oの錯イオンとなり、 [Cu(H2O)6]2+の状態となるであります。

銅(II)イオン水溶液による作用は恐らくこちらを参考にしたものと思われるであります。

銅(II)イオン溶液によるバクテリアの溶菌・殺菌過程とDNA塩基対損傷

https://www.jstage.jst.go.jp/article/brte/27/4/27_151/_pdf

 

一見するとちゃんとしたエビデンスがあるように見えるであります。

・・・が、よく読むとこれらは細菌の細胞膜や細胞壁に対して反応する事で細胞質膜を破壊し、殺菌・抗菌しているであります。

しかしウイルスの場合、そもそも細胞壁や細胞膜もなければ、細胞質や核等の構造すら持たないであります。

ウイルスは遺伝子である核酸(DNAかRNA)を中心にして、細胞外ではタンパク質の膜の殻を持った粒子構造を取るだけあります。

対して銅イオンの作用の起点は細胞のタンパク質の酵素を阻害し構造を維持できなくさせ、酸化させるであります。

しかしウイルスの場合、宿主細胞に取りつくまでは非常に単純なタンパク質でしかないので、そこに細胞に対する反応プロセスの酸化作用が起きるとは考えにくいでありますよ。

何よりイメージイラストで「酸素と反応して活性酸素が発生する」とあるでありますが、水が青くなるほどに銅イオンが含まれるケースと言うのは、約20mg/L以上の銅イオンが溶け出した、すでに銅の腐食(酸化)した状態であります。

画像だけでは判断しづらいでありますが、恐らくこの濃さなら500mg/L(ppm)以上あるのでは?

 

また、この論文自体が怪しいというツッコミを入れている方もいるであります。

疑惑

あと調査中にこんなものを見つけたであります。

抗ウイルス抗菌技術Cufitec®(キュフィテック)|製品&サービス|NBCメッシュテック-世界最先端メッシュテクノロジー-

http://www.nbc-jp.com/product/cufitec/index.html

 

 

これは一価銅化合物を応用した抗ウイルス・抗菌技術のサイトであります。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・ん?

 

なんか、どこかで見覚えのあるイラストが出てきたであります・・・?

 

おや?

 

Oh・・・これは・・・

 

 

 

まさかとは思うでありますが

 

 

 

これ、自分達の都合のいい部分だけ解釈(文言も変えて)して

理解もせずパクってきたでありますか?

 

 

こちらは一価銅化合物を用いて、社内試験を出しているであります。

ただまあ、60分は接触時間を要するでありますな。

なお、こちらの会社は「株式会社 NBCメッシュテック」。
1934年(昭和9年)設立のあらゆるメッシュ技術に関わる会社でありますな。

ちなみにサイトの履歴を見るページがあるでありますが、そちらの2019年の初めの時点でこの画像は使われていたであります。

https://web.archive.org/web/20190109090412/http://www.nbc-jp.com/product/cufitec/index.html

 

追記:5/21

指摘した事がバレたからなのか、画像が差し替えられていたであります。

おまけに履歴を追えないようにrobots.txtによってWEBbackMachineからのアクセスまで制限するとは・・・

これはもう、分かってて隠しているということでありますね?

おーし、その挑戦受けたでありますよ。

まずGoogleキャッシュにて確認できるであります。

https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:https://airatom.tenkodo.life:443/

次に公式サイトをいじっていても、プレスリリースはいじれんであります。

WEBbackMachineをプレスリリースにかけて・・・確認できたでありますな。

https://web.archive.org/web/20200501212821/https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000044459.html

 

(6/16現在は差し替え後になってしまったであります)

まとめ

あ、例の謎の水は論じるまでもないでありますが、銅イオン水にウイルス不活性化効果はないであります。あくまでも放置した際の不活性化までの時間が短縮される可能性があるのみ。

抗菌化・・・できるか?不明。まあ無理じゃろ。安全性についても謎が多すぎであります。

エアアトムも抗菌化コートを目的としているでありますが、原料を見る限り付着した銅イオン成分を留める方法(成分)がないので、期待できるかどうかは怪しいところでありますな。

仮に持続的に付着させられたとしても、銅イオンのみの効果ではせいぜいウイルスが不活性化するまでの時間がちょっと短くなる程度でありましょう。

ウイルスではなく細菌であれば、細胞壁を損傷させることで殺菌することはできるかもしれないでありますが。

全体的に見て、単体塩化ベンザルコニウムの劣化版程度であります。

(※塩化ベンザルコニウムも消毒剤で抗菌効果が続くが、新型コロナには効かない。ただしエタノールと混ぜると消毒効果をアップさせる。)

塩化ベンザルコニウムも政府発表で新型コロナウイルスに有効と発表された

 

 

であります。

ぶっちゃけ北里大学の研究でウイルス不活性化が確認できているリセッシュでも使った方がまだ確実だと思うであります。

ちなみにこのリセッシュでのウイルス不活性は、界面活性剤の効果によるものであります。

アースのノンスメル清水香とかいう消臭スプレーも両性界面活性剤を使っているので、そっちでもいいでありましょう。

ちなみにファブリーズは同じくエンベロープウイルスであるインフルエンザウイルスの除去効果が、第三者機関(北里環境科学センター)によって確認されているそうであります。

https://kyodonewsprwire.jp/release/201401097430