今回いただいたご質問は、「腸内環境を良くしたいので、どの市販のプロバイオティクスが良いか教えて欲しい」というものでした。実は特殊な症状改善以外の場合はどんなにお高いものでもそれほどの効果は期待できないのが現状です。お金を使う前に、まずはお家にあるもので腸内環境改善を目指してみませんか?

 

短鎖脂肪酸ってご存知ですか?人間の大腸内に住むバクテリアが発酵によって作り出す物質で、私たちの体に様々な影響を与えます。その中で特に健康作りに活躍するのが酪酸塩(Butyrate)と言う短鎖脂肪酸です。酪酸塩は免疫機能を高める、腸壁を強化する、過食を防ぐ、大腸癌を含む癌を防ぐ、糖尿病や肥満を予防するなど、慢性病予防には欠かせない物質なのです。

 

最近発表された科学論文で、日本のご家庭にはおそらく常備されている「ある食品」を毎日摂取することで酪酸塩が最も効率よく作られることが発見されました。その食品とは、生の片栗粉です。

 

これまでの研究でもレジスタントスターチ(難消化性デンプン)を餌にするバクテリアたちが共同作業で酪酸塩を生産することはわかっていました。レジスタントスターチには生の片栗粉、生の米粉、生のコーンスターチ、イヌリン(ゴボウの成分)などがあります。レジスタントスターチは加熱により消化できるデンプンに変わりますが、生のまま冷たい飲み物やヨーグルトに混ぜて摂取すると、私たちはあまり吸収できないためそのまま大腸へと移動してある腸内細菌群の餌となることができます。

 

今回の研究では健康な大学生174人に3種類のレジスタントスターチ(生の片栗粉、生のコーンスターチ、イヌリン)のいずれかを朝晩2回2週間続けて摂ってもらい、その結果片栗粉が最も効果的であることがわかったのです。量は片栗粉の場合は1日に大さじ2杯程度です。くれぐれも温かい飲み物には加えないでください。

 

片栗粉は安価な自然食品で確実に善玉菌を増やします。市販のプロバイオティクスは餌がなければ増えずにそのままトイレに流れていきます。効くかどうかわからないプロバイオティクスを購入する前にまずはレジスタントスターチを試してみてはいかがでしょうか?

 

* 余談ですが、この論文が出たと同時にジャガイモが良いと言うSNSが飛び交いましたが厳密には正しくありません。調理したジャガイモには数パーセントのレジスタントスターチしか含まれません。健康に良いからといってポテトサラダを大食いすると確実に太ります。