Corigliano/Long/Saariaho

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 ジョン・コリリアーノを知ったのは、New Worldレーベルのクラリネット協奏曲のディスクでだった。メータ指揮ニューヨーク・フィル、首席奏者ドラッカーのソロだった(いまでも主席を張っているらしい)。なぜかカップリングは甘ったるいバーバーの「エッセイ」だったが、辛口のコリリアーノのクラリネット協奏曲にはしびれた。LPで聴いていて、CD時代になってから買い直したほど。その後、コリリアーノはオペラ「ヴェルサイユの幽霊」がメットで上演されるまでにメジャーとなり、それにつれて音楽もネオロマンティックな傾向を強めていったが、1977年のクラリネット協奏曲はまだまだ硬骨だ。

 ここに紹介するのは、しかし2004年のプロムスのライヴで、多分ドラッカー盤以来2つめの同曲録音であろう。スラトキン指揮のBBC響、クラリネットはイギリスの名手マイケル・コリンズ。第1楽章から「カデンツァ」と題されていて、あらゆる音域を駆け回るクラリネットに無調的なオーケストラがからむ。クラリネットの騒ぎようといったらフリージャズのようだ。しかし、第2楽章「エレジー」では乾いた抒情を聴かせてくれ、ネオロマンティックな傾向を先取りしている。第3楽章「交唱的トッカータ」もまた、第1楽章に比肩するダイナミックな音楽で、クラリネットの暴れぶりも小気味いいが、ティンパニの連打などオーケストラも負けていない。いまだ、前衛運動の流れが強く、ネオロマンティックな傾向が主流化していない時代に、前衛とロマン的傾向をうまく折衷して、ゲンダイオンガクなど聴いたことのない人もすれっからしのリスナーも唸らせるような曲を書いたところがコリリアーノの凄いところだ。プロムスのお客さんもかなり熱狂しているのがわかる。

 フィルアップは、1953年北京生まれ、アメリカ在住の周龍(Zhou Long)の「不死」で、これはプロムスの委嘱作。彼自身、文化大革命の時代には苦しい目にあったようだが、文化大革命を堪え忍んだ音楽家や文化人へのトリビュートだという。さらにもう1曲、カイヤ・サーリアホの「オリオン」、3楽章24分ほどの、彼女の交響管弦楽のみのための作品としては最大規模のものという。これらも聴き映えのするゲンダイオンガクである。サーリアホだけ指揮者がサラステに替わる。

 実は、前述のNew World盤もまだ生きている。

John Corigliano: Concerto for Clarinet; Samuel Barber: Third Essay for Orchestra

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