ナス科の野菜には、ナス、トマト、ジャガイモ、シシトウ、ピーマン、パプリカなどがあります。どれもおなじみの野菜ですし、これから夏場にかけてはこれらの野菜のおいしい季節ですよね。
でも、これらの野菜を「乾癬」というキーワードとともにインターネット検索すると、かなりの確率で「好ましくない食材」として紹介されています。何か科学的な根拠があるのかどうか調べてみましょう。
ナス科の野菜には、他の野菜と同じように、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれています[1]。
一方、ナス科の野菜に含まれる成分には毒性を示すものもあります。主にジャガイモの芽や皮(特に緑色に変色した部分)に含まれるソラニンとチャコニン(カコニン)や、トマトの葉や未熟な実に含まれるトマチンです。また、ジャガイモから作られるポテトチップスやフライドポテトにも毒性を示すアクリルアミドが含まれます[2]。
ナス科の野菜が「好ましくない食材」とされているのは、このような毒性成分が含まれるからなのでしょうか?しかし、わざわざジャガイモの芽や皮、トマトの葉を食べることはないと思いますし、これらの成分は乾癬患者に特異的に毒性を示すものでもありません。また、ナス科の野菜以外にも毒性成分を含む食材は存在します。
どのくらいの乾癬患者がナス科の野菜を避けているのでしょうか?
アメリカ人乾癬患者を対象とした調査研究では、調査に参加した1,206名のうち、1,037名が乾癬のための食生活改善として何らかの食べ物を避けたり減らしたりしたことがあると回答しており、そのうちナス科の野菜(トマト、ナス、ピーマン、パプリカ、ジャガイモ)を避けたり減らしたりしたことがあると回答したのは28.8%でした[3]。
実際にナス科の野菜が乾癬に悪影響を及ぼすのかどうか、科学的な根拠を探ってみると、それらに対するアレルギーと症状の増強との間に関連があったという報告はありましたが[4]、それ以外には特に見出せませんでした。
視点を変えて、ナス科の野菜の利点について考えてみましょう。
ナス科の野菜には、前述の栄養素に加えて、ファイトケミカルという機能性成分も含まれています。ナスに含まれるナスニン(アントシアニンの一種)、トマトに含まれるリコペン(リコピン)、シシトウに含まれるカプサイシンなどです[5]。
乾癬の病変部における炎症プロセスは活性酸素の産生を誘発し、乾癬患者では全身性に酸化ストレスの兆候が見られると言われています。ナス科の野菜に含まれるファイトケミカルの多くは抗酸化作用を持っており、これらを摂取することで酸化ストレスを軽減し、抗炎症効果につながると考えられています[6, 7]。
ナス科の野菜は、乾癬に「好ましくない食材」として実際にそれらを避けている人もいるようですが、栄養が豊富で抗炎症効果も期待できる機能性成分も含まれていることを考えれば、むしろ「好ましい食材」なのではないでしょうか。
もちろん、ナス科の野菜に対するアレルギーがある場合には避けるべきでしょうし、苦手な方は無理して食べる必要はないと思いますが、ナス科の野菜がおいしくなるこれからの季節、毎日の献立に上手に取り入れて、食事を楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事を書くにあたって参照した文献:
1. 日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2017年.文部科学省
2. Laurie C, et al. Naturally Occurring Food Toxins. Toxins. 2010;2(9):2289–2332
3. Afifi L, et al. Dietary behaviors in psoriasis: patient-reported outcomes from a U.S. national survey. Dermatol Ther. 2017;7:227-242
4. Weryńska-Kalemba M, et al. Analysis of selected allergic reactions among psoriatic patients. Adv Dermatol Allergol. 2016;33(1):18–22
5. 野澤義則,他.東海学院大学紀要.2016;9:67-79
6. Alvim F, et al. Antioxidants in dermatology. An Bras Dermatol. 2017;92(3):356–362
7. Działo M, et al. The Potential of Plant Phenolics in Prevention and Therapy of Skin Disorders. Int J Mol Sci. 2016;7(2):160