プレミアリーグとその負債を考える | Japan Gooners~アーセナルニュースネットワーク

プレミアリーグとその負債を考える


フットボール界の最近の大きな懸念の一つに、イングランドプレミアリーグのクラブとその負債がある。
UEFAによって発行された財政報告によると、プレミアリーグ全体の負債は34億ポンド(約4540億円)にも上るという。その上、この数字には特に財政問題が深刻でUEFAの認可が下りなかったポーツマスとウェストハムは含まれていない。一番懸念されるのが、これらのクラブがこれだけの負債を増大させたその経緯にある。


実はこれらのプレミアリーグのクラブの多くは、所有者がクラブを買収するために借金をし、結果としてその負債をクラブの負担とする、“レバレッジ買収”によって、これだけの負債額を累積してきているのである。
例えば、Glazer family (グレイザー一族)は7億1600万ポンドもの負債をマンチェスターユナイテッドに背負わせたし、リヴァプールのTom Hicks (トム・ヒックス)とGeorge Gillett (ジョージ・ジレット)の2億3700万ポンドもの負債も同様の例だ。


しかし、経済学的に見て、負債は必ずしも悪者ではない。
ではなぜ、マンUやリヴァプールの負債が懸念対象となるのか?


皆さんご存知のように、健全な会社や組織は、負債を利用して資金調達をする。
負債を持つこと自体は決して悪いことではない。ごく簡単に言うと、負債返済にかかる利子額を超える額の利益を出せれば、負債はちゃんと管理されていることになる。

例えば、2007年のアーセナルの負債は、リヴァプールよりやや大きい2億6210万ポンドだったと報告されている。しかし、アーセナルはこの資金を新しいスタジアム建設のために利用した。つまり、これは”資産”として計算されることになる。
彼らは約1900万ポンドの純利息を払わなければならないが、これは新しいスタジアムによって増大した利益によって(*)何の問題もなく対処できるわけである。
(*備考:新スタジアムの収容人数は以前より大きいため、結果としてその収入も割増になる。)

それに反して、マンチェスターユナイテッドやリヴァプールの例を見ると、彼らの負債は将来の収入を生み出す資産のために使われたものではない。よって彼らは、例えばアーセナルと比べて、ずっと大きな債務負担を抱えていることになる。



さて、今度はプレミアリーグと他2つの世界最大フットボール界を比べてみたい。
スペインとイタリアだ。


 プレミアリーグラ・リーガセリエA
負債総額34億ポンド8億5800万ポンド4億4200万ポンド
総資産38億ポンド25億ポンド13億ポンド
総資産中の負債割合0.89%0.34%0.34%


備考:プレミアリーグがラ・リーガやセリエAより多額の資産を所有する理由は、スタジアムの所有権にある。プレミアリーグには、スタジアムがクラブによって所有されるケースが他リーグよりも多い。これが大きな資産所有額の違いを生む。


上の表を見て頂くと分かるように、3カ国のデータには大きな違いがある。
プレミアリーグの負債額がその資産額とほぼ同額である一方で、ラ・リーガとセリエAは総資産中の負債割合が0.34%と低い。その上、先に説明したように、プレミアリーグには負債がどう積み重ねられてきたかという意味での問題も抱えている。

これらの事実は、現在のイングランドフットボール経済が、以前信じられてきたよりも健全なものでないという明らかな警告を意味する。
そして、この状況が修正されなければ、プレミアリーグの多くのクラブの維持安定が危険にさらされることとなる。


最後に付け加えておくと、以前にこのブログでアップした記事の中に最高年棒選手トップ50がある。
ある読者の方にご指摘頂いたように、このリストはラ・リーガのチーム (バルサとレアル・マドリード)に所属する選手が大きな割合を占める。これを受けて、そのパフォーマンスレベルに反して選手に支払う金額が少ないということは、プレミアリーグのクラブの財政管理が上手いということだろうかという疑問が挙げられた。私はその反対ではないかと議論する。これは仮説に過ぎないが、プレミアリーグのクラブはその大きな負債義務によって、より高い年棒を選手たちに払うことができないのが現実なのではないかという推測が可能だと思う。


by レフティ



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