本日2回目の更新です。
私がパーソナリティを務めさせていただいている
エフエムあまがさきの番組
「昭和通二丁目ラジオ」木曜日。

昭和の歌をお送りする番組です。
今年度から、昭和歌謡のちょっと不思議な歌詞を掘り下げたり、
その曲の思い出を語る時間を設けています。

子ども時代にはよくわかっていなかったけど、
今この歳になって聞くと面白い「昭和の歌詞」を
番組内で深堀りするコーナー。


昨日は高田みづえさんでヒットした『硝子坂』を深掘りしました。

日本の歌、特に昭和の歌は、
四季折々の風物を詠みこんであるものが多いのですが、
『硝子坂』には現実の風景は全く出てきません。
最初から最後まで主人公の心象風景のみ。
季節感も全くない珍しい歌だと思います。
歌詞を見てみましょう。

『硝子坂』
(作詞:島武実  作曲:宇崎竜童)

悲しいのでしょうと 夢の中
見知らぬ人の問いかけに
声も出せずにうなずいて
それはあなたがやっぱり好きだから
いじわるなあなたは
いつでも坂の上から
手招きだけをくりかえす
私の前には硝子坂
きらきら光る硝子坂


この歌は主人公の夢の中のお話なのです。
見知らぬ人が「悲しいのでしょう?」と
問いかけてくる。
出だしからして不思議。
見知らぬ人がそんな立ち入ったことを言うのか?
もしかしたら「見知らぬ人」とは、
もう一人の自分なのかもしれません。
深層心理ってやつです。
そしてその問いの答えは「悲しい」なんですね。
悲しみの理由は「あなたが好きだから」。
主人公が好きな相手は、
いつも一人先に坂の上にいて、
手招きするだけ。
一緒に坂を登るのではなくて、
頑張って登ってこいというわけです。
その人が立っている坂は、
きらきら光る硝子の坂……。

好きな相手とのこの距離感。
しかも遠いだけではなく、高い位置に相手はいる。
家がらなど身分の差でしょうか、
教養などの差でしょうか、
金銭的な差?
それともこちらが思うほど
相手は思ってくれていないという、想いの強さの差?
ともかく、手が届かないような場所にいるひとを
ずっと好きでいる主人公の悲しみが伺えます。

行けるのでしょうかと 夢の中
見知らぬ人に尋ねては
涙こぼして横向いて
それもあなたがやっぱり好きだから
いじわるなあなたは
いつでも坂の上から
手招きだけをくりかえす
私の前には硝子坂
きらきら光る硝子坂


夢の中で、見知らぬ人はまだ隣にいるんですね。
私はやっぱりこれはもう一人の自分だと思うですが。
大好きなあの人のいる坂の上まで、
自分が登っていけるのか自問自答。
だって坂は硝子ですもん。
普通は登れませんよ、ツルツル滑っちゃって。
現実を見つめられず泣いて横を向いている主人公。
恋しているのに全然幸せそうじゃない!
そんな相手、諦めてしまえ!
「あなたを愛してくれる他の男性との出会いを
 待ったほうがいいよ」
と私なら勧めますわ。

とうとう来たねと 夢の中
うれしいはずの問いかけに
何故かすなおになれなくて
それはあなたのせいだと言えないわ
いじわるなあなたが
たたずむ坂に向かって
さよならの手を振るつもり
きらきら飛び散る硝子坂
きらきら消えた硝子坂


夢の中でついに彼女は坂の上に行けたんですね。
それにたいして彼は
「とうとう来たね」って、
他に言いようはないのか!
なんでこういう人を好きになるんだかナァ。
不満に思ったけれど、次の展開に興味津々。
坂の下で悲しんだり涙を流していた主人公。
身分違いだか、教養の違いだか、
なんの「坂」を登ったのかは知らないけど、
やっと彼と同じ立場に立って、
それをねぎらってもらったのに、
「あら、私、今そんなに嬉しくないわ」と
気がつくんですよ。
そしてそれは相手のせいではなくて、
自分に原因があると言っているのですね。

ちょっと話が飛躍するのですが、
私はここでマーガレット・ミッチェルの
『風と共に去りぬ』を思い出すのです。
主人公スカーレットがずっと憧れ、恋していた
貴公子アシュレ・ウィルクス。
にっくき恋敵メラニーが亡くなって、
もしかしたらアシュレと近しくなれるかもしれない、
という事態になって初めて
「あら?アシュレってこんな人だったの?」と
失望する、あの場面を。

登ろうにも登れそうになかった硝子の坂を登って、
彼と同じ場所に立った時に、
自分の想いは本物だったんだろうか、
もしかしたら手が届かない人だったから
好きだと勘違いして焦がれていたのだろうか、
と考え込む主人公。

いずれにしてもそんな私に、
あなたって何もしてくれなかったわよね。
ただ手招きするだけだったわよね。
今度は私が、あなたに手を振るつもりよ。
「サヨナラ」ってね……
ってことでしょうか。
目が醒めると女って強いわぁ!
彼のプライドの象徴だったであろう硝子の坂は
きらきら飛び散り、消えて行きましたとさ。


しかし、忘れてはならないのは、
この歌はすべて主人公の夢の話なんですよ。
彼が本当に「ここまで上がってこいよ」と
坂の上で手招きしているだけの人だったかどうか、
誰にもわからないのです。
むしろこういう夢を見る人ってどういう心理状態なのか、
歌詞深掘りしている場合じゃないかも。
心理学者さんに分析していただきたいワ。

読めば読むほど不思議な歌詞です。
作曲は宇崎竜童さん。
「いじわるなあなたは」
のメロディーがどこか
山口百恵ちゃんの『Playback Part2』
「ばかにしないでよ」
の部分と似ている気がします。


高田みづえさんのデビュー曲『硝子坂』は
1977年3月25日に発表され、
2ヶ月足らずでオリコン10位入りする大ヒットとなりました。
高田みづえさんにとっては『私はピアノ』につぐヒットだそう。

それではYouTubeからお借りしたものをご覧ください。
アップ主さまありがとうございます。



ところでこの歌はもともとは、
高田みづえさんデビューの1ヶ月前、
1977年2月に、
木之内みどりさんのアルバムタイトル曲として、
発表されましたものだったそう。
アレンジが大幅に違うのですが、
木之内さんバージョンのファンも多いようです。
とてもサラッとした『硝子坂』。
聞き比べてみてください。
アップ主様、お借りします。
ありがとうございます。



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