2005年に姉歯元一級建築士が構造計算書を偽造していたことが発覚しました。
耐震偽装問題(姉歯事件)とも呼ばれています。
当初、この一連の耐震偽装問題は、マンション分譲会社・建築会社及び経営コンサルタント会社による組織的犯行と報道されていました。
しかし、裁判では『元一級建築士による個人犯罪』と結論づけられ、東京地方裁判所は元建築士に『懲役5年』『罰金180万円』の実刑判決を言い渡したそうです。(ウキペディア)
元一級建築士が構造設計したマンションを分譲した不動産会社は倒産し、一定の強度以下のマンションは解体されました。
購入者の方々は、自己責任として2重ローンに陥っている方も居られると聞いています。
耐震偽装問題は、日本がパニックとなり、マスコミに大きく取り上げられ、建築基準法や建築士法などの法律の改正や建築確認申請制度の厳格化などに繋がりました。
構造耐力が『1』未満であれば、たいへんな事態となりました。
私もその当時、私が勤めていた不動産会社が分譲したマンションの構造計算書確認プロジェクトを主導しました。
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耐震偽装問題を受けて、2009年に住宅瑕疵担保履行法が施行されました。
この法律は、新築住宅を供給する事業者に対して、瑕疵の補修等が確実に行われるよう、保険や供託を義務付けるものです。
万が一、事業者が倒産した場合等でも、2000万円までの補修費用の支払いが保険法人から受けられるという内容です。
また、マンションなどの住宅建設請負では、一括丸投げが禁止されました。
「有名なゼネコンが施工をしたことにして、売り出そう」
というマンション分譲会社もそれができなくなりました。
実際は、地場のゼネコンが施工していたことが多かったのです。
耐震偽装問題から、10年後の2015年には、マンションの杭の施工不良でマンションが傾くという事象が社会問題化しました。
いわゆる、傾斜マンション問題です。
これも、大きくマスコミに報じられ、分譲会社は早々に建て替えを提案する事態になりました。
傾斜マンション問題で浮上したのは、建設業の重層下請問題です。
大手企業が2次下請になっていたという前代未聞のことと、元請会社よりも2次下請がマスコミの批判を受けているという不思議なことが起こりました。
最近では、超大手ゼネコンが建設し、完成引き渡し前のマンションに欠陥が見つかり、立て直すということがありました。
これは、ゼネコンの担当者の責任で済まされる問題ではありません。
次に、2017年1月には、マンション大規模修繕における不適切なコンサルタント問題が浮上しました。
国土交通省が不適切なコンサルタントの問題について、管理組合に向けて相談窓口の設置を通知したのです。
しかし、今だこの問題は、大きく社会問題化しているとは言えません。
『不適切なコンサルタント問題』は、『マンション大規模修繕に関わる業界全体』が管理組合の『修繕積立金』を『搾取』し続けている問題です。
不適切なコンサルタント問題は、耐震偽装問題や傾斜マンション問題と同様な重大な社会問題であるにも関わらず、一部のメデアは報道しましたが、大きくマスコミが報じないのは、明確な証拠が出てこないからでしょうか?
民間発注の工事であるからでしょうか?
この3つの問題に共通しているのは、技術者の職業倫理に基づいていた性善説が壊れてしまったことです。
自分の仕事に誇りを持ち、物造りにまい進していた日本人の技術者の誇りが、ことあるごとに壊されているような気がします。
もう一度、私たちは立ち止まって、
「仕事人としての誇りをもって事を処す」
ことを思い出さなければなりません。
『手抜き』という伝統的な行為? がありますが、すべての工程で手抜きがないかチェックしなければならない時代となっていくのでしょうか?
チェックする人をチェックしたりと、ダブルチェックやトリプルチェックをしなければならない時代とならないように願うばかりです!