2020年12月9日、チームからようやく発表されました。

 

佐藤万璃音、アブダビでのF1ルーキーテストにアルファタウリから参加!

RAMBLASとしては、今年一番のビッグニュースとなりました。

トーチュウさんにも掲載されました。ありがとうございます。

 

 

そもそも事の発端は、2019年の全日本スーパーフォーミュラ、8月のツインリンクもてぎ戦にさかのぼります。

そう、もてぎにレッドブルのヘルムート・マルコ博士が視察に来たのです。

 

 

B-Max with motoparkのテントに居場所を構えたマルコ博士といろいろ話をしたところ、「若い日本人ドライバーがF1には必要なんだ」と。

「次の日本人F1ドライバーは、ツノダだ」とその時点で彼は断言していました。

まぁレッドブル&ホンダの育成ドライバーとして角田裕毅選手がヨーロッパでF3を走っていたから、当然といえば当然のお言葉。

 

「マリノ・サトウはどうだ?」と聞いたところ、「誰だそれは?」と問われたので、「モトパークでツノダのチームメイト。ユーロフォーミュラ・オープンで現在、ポイントリーダーで、ツノダより好成績を出しているドライバーだ」と答えました。

 

「ふーん、速いのか?」と言われたので、「速い」と答えると、「でも次の日本人F1ドライバーはツノダだ」と再び断言されました(汗)。

 

その夜、レースが終わり東京に戻って、彼が宿泊していた新宿の高層ホテルのバーでお酒を飲みながら、モータースポーツ談義を楽しみました。

そこでもやや赤らんだ顔で、「次の日本人ドライバーは、ツノダだ」と復唱していました(笑)。

 

そして佐藤万璃音がベルギーでF2にスポット参戦した際、パドックでマルコ博士と再び出逢い、雑談。

さらにイタリアGPの際、「マチダ、お客さんだよ」とカンポスレーシングのトランスポーターの2階にいた僕に、チームオーナーのエイドリアン・カンポスさんが笑いながら声をかけてくれました。そこに姿を現したのは、なんとヘルムート・マルコ博士!!

 

この日、レッドブルF3ドライバーの角田祐毅選手がF3で初優勝して、満面の笑みでやってきたマルコ博士は、「エイドリアン・ニューウェイがマチダに会いたがってる」と伝言を伝えにきてくれたのです。さっぱり意味不明というか、俺、なんか悪いことしたかな?と不安になったのを覚えてます(汗)。

 

「自分はF1パドックに入れるパスがない」と伝えて自分の電話番号をマルコ博士に渡したところ、今度はエイドリアン・ニューウェイ氏が電話をしてきて、またしてもカンポス・レーシングのモーターホームまで足を運んでくれたのです。これがその時に撮影した写真です。

 

 

なんでカンポスのモーターホームにレッドブルの首脳陣が次々現れるんだ? と周囲のジャーナリストが騒然としていました。

ヘルムート・マルコ博士もエイドリアン・ニューウェイ氏も佐藤万璃音に興味を示していたのは事実ですが、むしろエイドリアンの息子(ハリソン・ニューウェイ)の将来を相談に来たのが本音だったように思います(笑)。当時はその程度の会話でした。

そういったところでレッドブルとのご縁が生まれ、ヘルムート・マルコ博士ともいろいろな形で接点を持つこととなりました。

 

2020年、佐藤万璃音はトライデント・レーシングチームからF2フル参戦。そして角田裕毅選手も一気にF2へステップアップし、カーリンから参戦。佐藤万璃音の苦戦を後目に、角田裕毅選手はランキング3位を獲得。見事、F1スーパーライセンスを取得したのです。! 

(遅ればせながら、おめでとう角田裕毅選手!)

 

僕たちマネジメントサイドは、F2というカテゴリーが、いかに難しい世界なのかを改めて見せつけられることになりました。

佐藤万璃音と共に、今年学んだことを来年以降に生かす決意をしました。

 

といったストーリーは別に、実は角田裕毅選手がF1テストをする、しないの噂が出た頃に、ホンダF1撤退の衝撃ニュースが流れました。

ここからは政治力の世界です。詳しいことは書けません。

 

レッドブルは、角田裕毅選手の速さを認めていました。

そしてF1で通用する才能だと、アルファタウリのフランツ・トスト監督も太鼓判を押しています。

それがホンダに対するアピールだと決めつけるジャーナリストもいました。

周囲からはホンダがお金を出さない限り、角田裕毅選手のF1昇格はないとネガティブな噂が立つようになりました。

FP1に参加するために必要な300kmの走行テストすら、なかなか正式発表がなされませんでした。

 

そのころ、ヘルムート・マルコ博士はまったく別のことを考えていました。

彼は酔った時もそうでしたが、純粋にモータースポーツが好きなのです。とりわけ速いドライバーが好きなのです。

お金で乗せるとか、乗せないとか、そういった話にうんざりしていたようです。

 

彼は、旧知の仲でもあるモトパークのティモ・ランプケイル監督に連絡を取り、「ツノダと同じマシンで走っていた時、サトウ・マリノは速かったのか?」と確認したところ、「同じマシンで走らせれば、マリノはとても速いドライバーだ」と断言されたのです。

 

ティモは嘘をつきません。ドライバーを見極める目もしっかりしています。

そこで、ヘルムート・マルコ博士は佐藤万璃音と角田裕毅選手をまったく同じ条件でF1テストをさせようと決意したのです(驚)。

 

しかし、ホンダは2年前のエンジンを引っ張り出し、2年前のF1マシンで角田裕毅選手にイモラで350kmのテストチャンスを与えました。

エンジンは1基しかなく、そのチャンスは佐藤万璃音には与えられませんでした。

 

不平等はこの世界では当たり前のことなので、それくらいではへこたれません。

12月8日、アルファタウリはアブダビF1ルーキーテストに角田裕毅選手の起用を発表しました。

そのリリースには、佐藤万璃音のマの字も出ませんでした。

 

しかし翌9日午前9時、アルファタウリは、佐藤万璃音にF1テストのチャンスを与えると正式発表してくれたのです。

Enjoy! Marino, Dream comes true!

2020年12月15日、F1を目指してずっと欧州で戦ってきた彼の、夢がひとつ叶います。

 

その事実を知った時、角田裕毅選手が佐藤万璃音に最初にかけた言葉..................。

 

「マリノ。また同じチームで走れて良かったね」

 

子供の頃からずっと一緒にレースをしてきたふたりです。

カートからF1を目指して、ずっと競い合ってきたふたりです。

その素直な一言は、彼らふたりの心に通じ合うものがあるから自然と出た言葉でしょう。

 

僕は来年、角田裕毅選手がアルファタウリF1で活躍してくれることを、切に願います。

そして佐藤万璃音の名前がF1ストーブリーグで噂されることを!

 

追伸.............(笑)。

 

14年前、カートを楽しんでいたふたりです。向かって左が角田裕毅選手、右が万璃音。

14年後、ふたりはまた同じチームでテストを走ります。アルファタウリF1チームで!