※この記事は過去記事の再構成です
諸君、ご壮健かな。
以前、オデッサ(大阪)で手に入れた、モビルスーツの教本。
(何のことかわからないひとは → ここ )
この本、読めば読むほど興味深い。当時のサンライズのスタッフたちが、純粋にガンダムに夢を見ていたのがよくわかる。
その中から、私の心をぐっと震わせたモビルスーツがいた。
それは、形式MS-06W。
通称・一般作業型ザク。
そのプロフィールを見てみよう。
大戦中期から、アジア西部を中心とする地域で、確認されているMS。
一般作業型ザクは、破壊されたモビルスーツの部品で、再利用したもので作られている。
MS-05ザク(旧ザク)やMS-06ザクⅡの部品がほとんどだったが、中にはMS-07グフの部品も使われていたようだ。
正式なナンバーはなく、一般作業にしか使用できなかった。しかしモビルスーツ不足を補うために、武装を施された機体もあったようだ。
破壊された部品で寄せ集めの機体を作るあたり、ジオン軍の地球方面での困窮ぶりがよくわかる。
文献によると、右手にスコップ、左腕にウインチ、背中には荷物デッキという、寄せ集めの中にも定番の機能もあったようだ。
これだけでも、ジオンでは作業用の車両すら不足していたのが読み取れる。
しかしそんな、アメリカの巨大ダンプにすら勝てなそうな機体すら!
後半では戦いの場につぎ込まれていったらしい。
死んでいった兵士たちの魂が宿る各パーツが絶組み立てられ、再び望的な戦場に戻っていく。そこに私は、そこはかとないカタルシスを感じる。
このようなモビルスーツは、他にもある。聞いたことあるだろう。
形式MS-06V。
通称・ザクタンク。
モビルスーツの性能は戦闘時だけではなく、作戦終了後の施設占拠、建設作業などにも人型であることを十分に活用できるよう考えられていた。
ところが大戦がはじまり激化すると、モビルスーツは戦闘にすべて振り分けられ、作業に回す余裕がなくなった。
そこで戦闘能力を失ったザクとマゼラベースを組み合わせて、大型の作業車両が製造された。
廃物利用であるものの、十分実用に耐えられるとして、のちにVタイプとして承認された。
この滅びゆく哀愁は、なんとも表現できない。なんと言っても、すでに合体する相手がモビルスーツですらない。
それはあたかも、F1マシンがピットインしたら、タイヤの代わりに洗面器を付けられたくらいの哀しさだ。
しかしこのような死力を尽くして制作したモビルスーツに、妙な生々しさを感じ、アニメを超えたリアリティを感じてしまうのも確かだ。