どちらが勝とうとも辺野古移設は不可能だ | 『月刊日本』編集部ブログ

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 今回の総選挙で注目すべきは、やはり沖縄の選挙区でしょう。全国的にはテクニカルな面で勝る自民党が優勢に進めると思われますが、沖縄だけは例外だと思います。


 先日行われた沖縄県知事選では、翁長雄志氏がおよそ10万票の差をつけて当選しました。また、同日に行われた那覇市長選でも、翁長氏の後継者として立候補した城間幹子氏が当選しました。沖縄県議補選でも翁長氏の支援した候補者たちが当選を果たしています。


 10万票もの差をつけられたというのは、自民党としては大敗と言うべきです。もっとも、事前の予想ではトリプルスコアとまで言われていたので、沖縄県民は必ずしも普天間基地の県外移設を求めているわけではないという声もあります。


 しかし、それは一面的な見方だと思います。仲井眞氏も最終的に辺野古移設に向けた埋め立て申請を承認したとはいえ、もともと県外移設を訴えていましたし、本音では今でも県外移設なのだろうと思います。沖縄県民からすれば、様々な事情により県外移設を訴えられなかった仲井眞氏と、県外移設を明言する翁長氏の対立は、いわば身内同士の対立のように見えるのではないでしょうか。


 それ故、「本当は翁長さんに投票したいけど、仲井眞さんの苦労もわかるので、今回は仲井眞さんに投票するよ」といった人も多かったのではないか。それがトリプルスコアではなく、10万票という差になって表れたのではないか。もちろんこれは推測に過ぎませんが、少なくとも、10万票差で済んだので辺野古移設でも何とかなるだろうと考えるべきではありません。


 もとより、選挙とは得てして同郷同士の戦いです。民主主義である以上、それは避けられません。しかし、米軍基地問題をめぐる県民同士の対立というのは、沖縄では特別な感情を抱かせてしまうと思います。


 自民党の國場幸之助議員は、著書『われ、沖縄の架け橋たらん』の中で次のように述べています。

 

 もし仮に辺野古移設が強行されれば、再び大規模なデモが行われる可能性があります。デモを取り締まるのは沖縄県警です。そうなると、沖縄の人間が沖縄の人間を取り締まり、場合によっては流血沙汰になる恐れもあるということです。

 これは考え得る限り最悪の事態です。沖縄には沖縄戦の記憶が根強く残っています。親が子供を手に掛け、友人・知人同士が殺し合ったという集団自決の記憶もあります。沖縄の人間同士がぶつかって血を流せば、かつての記憶が呼び覚まされてしまいます。(中略)

 同じように、「辺野古移設について沖縄選出の国会議員も沖縄県知事も容認したじゃないか。だから後は沖縄の中で解決しろ」といった態度では、基地問題の解決は難しいと思います。これではまた、かつて沖縄戦の中で沖縄県民同士がいがみ合ってしまった、あの嫌な記憶を思い出してしまうだけです。


 もし日本政府が県外移設を決定していれば、米軍基地問題をめぐって沖縄県民が対立することはなかったはずです。本土の人間の一人として、大変申し訳なく思っています。


 今回の選挙によって、沖縄の本土に対する不信感はさらに高まると思います。日本政府ならびに本土の人間は、どちらの陣営が勝利しようとも、辺野古移設はもはや不可能だということをしっかりと認識しなければなりません。(YN)








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