裁判官により逮捕状が出されていたのに,警察が被疑者を逮捕しなかったということが政治的圧力により捜査が枉げられたのではないかということが話題となっていますが,そもそも,逮捕状が発付されたのに逮捕しないことは許されるのかということは一応問題となります。

 

 

この点について,逮捕状の性質は,裁判官による命令ではなく(命令であるとすれば捜査機関としては命令に従って被疑者を逮捕すべき義務が生じます),あくまでも捜査機関の求めに応じて許可するという性質のものであるとされており,実務上は,逮捕状が出ても逮捕しないことやまた有効期限内であればいつ逮捕するかということについても捜査機関の裁量に委ねられるものとされています。

裁判例としては,公安絡みの事件において,余罪での起訴後勾留中に別件で逮捕状か出ていたのに逮捕状の期限最終日まで逮捕せずにその間余罪の取調べを行っていたという事案において,「逮捕状は,裁判官が捜査機関に対し,当該被疑事実につき被疑者を逮捕する権限を付与する裁判の裁判書であって,裁判の執行の観念をいれない,いわば許可状の性質を有するものと解すべきである。したがって逮捕状が発せられた場合にも捜査機関は,これによる逮捕を義務づけられているものではなく,その逮捕を実施すると否とは勿論,これを実施する場合でもその時期如何は,逮捕状に記載された有効期間内であるかぎり,本来捜査機関の裁量に委ねられ,その専権に属するものといわなければならない。」と述べているものがあります(京都地裁昭和45年3月3日決定)。

 

 

報じられている件について,政治的圧力があったかどうかということは分からないところですが,就職相談に来た女性と関係を持ってしまうということ自体が報道に携わる人間として問題だと言えるだろうなという感想は持っています。