Efficacy, Acceptability, and Tolerability of Antipsychotics in Treatment-Resistant Schizophrenia A Network Meta-analysis
Myrto T. Samara, MD; Markus Dold, MD; Myrsini Gianatsi, MSc; Adriani Nikolakopoulou, MSc;
Bartosz Helfer, MSc; Georgia Salanti, PhD; Stefan Leucht,MD
JAMA Psychiatry. 2016;73(3):199-210. doi:10.1001/jamapsychiatry.2015.2955
治療抵抗性の統合失調症に対する抗精神病薬の効果、受容性、忍容性、:ネットワークメタアナリシス
初のネットワークメタアナリシスの批判的吟味です。
GRADEには正確には沿っておらず、ランキングも今回は扱いませんでした。
臨床疑問
非定型の抗精神病薬を一通り(十分量・十分期間)使用して改善の不十分な統合失調症の患者さんにクロザピンを導入するべきだろうか、またはこれまでに試されていない定型抗精神病薬のハロペリドールを試してみるべきだろうか。
PICO
P:治療抵抗性の中年の統合失調症患者
I: クロザピン(CLO)
C:ハロペリドール(HAL)
O1(益): 統合失調症の症状の改善
O2(害): あらゆる理由による処方中断
論文のサマリ
P: 治療抵抗性の統合失調症(schizophrenia, schizophreniform disorder, or schizoaffective disorder.)
I: 世界中で使用可能な抗精神病薬(投与容量、投与法は問わず)を3週間以上投与
C: 他の精神病薬かプラセボ
O1(益): 治療開始前後の統合失調症の症状の変化量(PANSSかBPRS)
O2(害): すべての理由による脱落
Pの治療抵抗性の定義はRCTによって異なる。操作的診断基準を求めていない
論文の結論
CLOが非定型の抗精神病薬に勝るというエビデンスは十分ではなく、わずかなエビデンスがえられた。
HALとCLOに関してCLOがHALよりも症状の改善に効果があったがSMDにして-0.22(-0.38 to -0.07)、受容性については差があるというエビデンスは得られなかった。ORにして0.61(0.41 to 1.04)
エビデンスの妥当性はOK?
1. RCTの系統的レビューか
評価 ( ○ )
留意点:ランダム化が明記されていなくてもdouble bindならRCTと考え入れている。
sequence generation or allocation concealmentができていないものは最初から外されている。
中国本土の研究は外されている。
2.該当する研究を検索するのに,包括的で詳細な検索を行った記載はあるか
評価 ( ○ )
3.個々の研究の妥当性は評価されていたか
評価 ( ○ )
4.(平均値や標準偏差のようなサマリーデータではなく)患者個々のデータが分析で使用されていたか
評価 ( ×)
コメント:コメント:個人データはなし。
5.各比較においてバイアスのリスクはどの程度重大か
評価 ( ○)
一番の問題は、各比較に各比較がどれくらい(直接比較も、間接比較も)寄与しているか、の表がない。
各研究のROBは評価されている(supple p37-39)。
各比較のROBを評価した表は載っていない。
HAL vs CLO直接比較の研究(Fig 5)では一番サンプルが多くてCLOの有効性を示したRosenheckのselective outcome reportingにhighがついているが、allocation concealment とblindingができているのでよいだろう。
6. 直接比較を行った研究において結果は一貫していたか
評価 ( 益について○ 害について△)
Figure 5でCLOとHALの比較については異質性はなさそう。
害については直接比較のForest plotの提示はない
7. 直接比較と間接比較の結果は一貫していたか
【背景知識】
Inconsistencyの評価
Global inconsistency(Design-by-treatment model)と
Local inconsistency(各ループでのIF:直接比較と間接比較の差)で行う
評価(×という意見もあったが結局○)
(疑問)ループにInconsistencyがあったために、本研究ではCLO-CPZを比較した2試験、HAL-FULを比較した研究1試験、HAL-PBOを比較した1試験とHAL-Thiothixen-PBOを比較した1試験を除外している。この除外はCLO-HALの効果の違いの批判的吟味に影響するのか?
またネットワークの中にInconsistencyがあったという理由でpost hocに解析に含める研究を除外した結果をプライマリアウトカムとしてよいものか?
(意見)除外はpost hocではあるがInconsistencyの源泉が納得できる内容(90年以前の古い研究)だったので、除外後にInconsistencyがなくなったらそれでよいのではないか。
Triangle、Quadrangleのうち10%くらいは経験的にincosistentなもの。なぜなら各RCTの各アウトカムのαレベルが5%だから自然な話だろう。
(疑問)例えばCLO vs HALの比較に興味があるときに、どの三角形、四角形あるいはそれ以上の多角形まで考慮するべきか?
(意見)各比較に各比較がどれくらい(直接比較も、間接比較も)寄与しているかの表があれば、それを参照する。しかし、今回は載っていないので以下の方法がある。
実際上はindirect estimateに大きく貢献するのは最もdominantな三角形ループまでなので、CLO vs HALの直接比較試験とdominantな三角形ループに関連する試験を評価すればよい。たとえばCLO - OLA - HALの三角形がdominantであればCLO - HAL、OLA - HAL、CLO - OLAの比較試験を中心にバイアスの評価をすればよいだろう。
8. 結果はどのくらい精確か
評価(益は○、害も○)
益: Figure 3 HAL vs CLO -0.22(-0.38 to -0.07) 小さい効果があるだろう、といえそう
害: All- cause discontinuation (p106)は 0.61(0.41 to 1.04)
(疑問)害のアウトカムについて、これは精確といえるのか?またどれくらいのCI幅であれば許容範囲といえるのか?
(意見)臨床的な判断による。0.41から1.04のORの分布を想像したときに、普通はCLOの方がそのアウトカムは起こりにくいだろう、acceptableだろうと判断されると思うので、十分に精確と考えてよいだろう。
9. 報告バイアスに関する懸念はあるか
評価(結局△)
SupplementaryにFunnel plotが出ているが全比較をいっぺんに出ていて、判断できない。
(疑問)Funnel Plotは自分の興味があるCLO-
(意見)難しい。普通は直接比較毎にpublication biasをみて評価する。
治療効果は臨床的に重要?
益
反応割合(PANSSかBPRSで20%以上の低下、またはClinical Global Impression Scaleでのminimal improvement)
Fig4から計算
OR 2.09 (1.26~3.28)
PEER 0.2とした場合
NNT 7(3~24)
CLOがHALよりよい
害
全ての理由による脱落
eTable3(p109)から計算
OR 0.61 (0.41~1.04)
PEER 0.6とした場合
NNT -8 (-5以下、又は107以上)
CLOとHALに有意差なし
自分の患者さんへの適用はOK?
1.自分の患者さんはRCTの患者さんと比較して,RCTの結果を適用できないぐらい異なっているか
同じだろう。
CLOとHALの直接比較の一番サンプルサイズの大きい研究がほとんど男性。しかし、反応に性差はたぶんないだろう。
2.RCTの治療は自分の状況で実施可能か
HALの容量は、日本で今から処方するならもっと低いのでは?
3.自分の患者さんが治療から得られるであろう,益と害はどうなりそうか(ft・fhとNNT・NNH(自分の患者))
コメント:計算を参照
4.自分がこれから提供する治療の益と害の両方について,患者さんの価値観や期待はどうか(LHH)
コメント:
意見が分かれました。
CLOを飲むことによって生じる負担を考えるとNNT7でも十分大きいとは言えないかも。。。という意見もあれば、できるなら早く試してほしい、とか。
その他の意見:
疑問: