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【発明の名称】 金属の射出成形方法 【発明者】 【氏名】京谷 博 【氏名】常盤 雅文 【要約】 【課題】DLC膜の酸化を防止することで射出成形金型の耐久性を向上してメンテナンス性を高めることができるとともに、成形品の品質を向上できる金属の射出成形方法を提供する。 【解決手段】射出成形金型のコアブロック1,キャビティブロック2にはDLC膜が被覆されている。溶融金属(マグネシウム合金)のキャビティ3内への充填を開始する前に、キャビティ3内にチルベント16を介して乾燥窒素ガスを供給する。その後、キャビティ3内が乾燥窒素ガスにより置換された状態で、キャビティ3内に溶融金属を注入するとともに、キャビティ3内の乾燥窒素ガスを溶融金属の射出圧力によってチルベント20,チルベント16を介して射出成形金型外に排出する。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 ダイヤモンド状炭素膜をコアブロック,キャビティブロックに被覆した射出成形金型を用いて金属を成形する射出成形方法において、溶融金属のキャビティ内への充填を開始する前に、キャビティ内の雰囲気を不活性ガスに置換する工程と、キャビティ内が前記不活性ガスにより置換された状態で、キャビティ内に溶融金属を注入するとともに、キャビティ内の前記不活性ガスを溶融金属の射出圧力によって射出成形金型外に排出する工程と、を含むことを特徴とする金属の射出成形方法。 【請求項2】 請求項1に記載の金属の射出成形方法において、キャビティに対して溶融金属の注入側及びその反対側に設けた経路を通じて、前記不活性ガスを供給及び排出することを特徴とする金属の射出成形方法。 【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は金属の射出成形方法に関し、特に、成形品の品質向上と成形サイクルの短縮を実現できる射出成形方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、金属射出成形金型の耐久性の向上、合金の射出成形金型への焼き付き防止及び溶着防止を目的に、射出成形金型の表面を窒化させたり、射出成形金型の表面にTiN,TiC,CrNなどのコート膜をPVD,CVDにより形成することが実施されている。また、ダイヤモンド状炭素膜(DLC膜)の軟質金属に対する非凝着性、低摩擦特性に着目して、DLC膜を射出成形金型の表面にコーティングすることが検討されている。このDLC膜はAl合金や鉛合金マグネシウム合金などの軟質で凝着を起こし易い材料に対して低摩擦を示すため、軟質合金の成形用のダイカスト型,チクソ成形型へのコーティング材として期待されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上述のように射出成形金型表面を窒化させたり、TiN,TiC,CrN膜等をコーティングしたりすれば、射出成形金型の寿命の向上、焼き付き,摩耗の防止等に著しい効果が得られることが確認されているが、この方法では射出成形金型の軟質金属に対する離型性を十分に得ることができず、軟質金属を成形した場合に成形品の取り出しの際にそれに変形が生じる惧れがある。このため、通常、成形ショット毎に、射出成形金型の表面に各種液体や粉体の離型剤をスプレーコーティングすることがなされている。 【0004】このような射出成形金型表面への離型剤のコーティングには、1.成形品表面に湯皺などの表面欠陥が生じやすいこと2.成形サイクルが長くなること3.離型剤が金型摺動部や型分割面に付着し、射出成形金型の動作不良を起こすことから、頻繁に射出成形金型の分割、クリーニングなどのメンテナンスが必要といった問題がある。 【0005】また、上述のDLC膜をコーティングする方法によれば、DLC膜と軟質金属との摩擦係数が小さいため離型剤なしの成形が期待できるが、DLC膜には、1.400℃を越えて加熱されると徐々にグラファイト化し、摩耗が顕著に増加する、2.膜と射出成形金型母材との密着力が低下することから、大気中では450℃以下の温度で使用することが推奨されている、といった点から使用温度に制約がある。 【0006】実際に、イオンプレーティング法によって成膜したDLC膜の耐熱性に関しては、窒素ガス雰囲気中では600~700℃で始まる重量変化が、大気中では450~500℃から始まることが報告されている。 【0007】ところで、マグネシウム合金を射出成形(チクソ成形)する場合、加熱シリンダー内の溶湯の温度は550~580℃,金型温度は約200℃とされるが、瞬間的には溶湯に接する射出成形金型壁面の温度が450℃を越えることがある。DLC膜の構造変化(グラファイト化)は温度と時間との積で決まり、マグネシウム合金の射出成形等のための金型に使用した場合、短時間での成形には耐えることができても、耐久性が不足してしまうという問題がある。 【0008】本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、DLC膜の酸化を防止して、射出成形金型の耐久性を向上させるとともに、成形品表面の酸化を防ぐことのできる金属の射出成形方法を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載の金属の射出成形方法は、ダイヤモンド状炭素膜をコアブロック,キャビティブロックに被覆した射出成形金型を用いて金属を成形する射出成形方法において、溶融金属のキャビティ内への充填を開始する前に、キャビティ内の雰囲気を不活性ガスに置換する工程と、キャビティ内が前記不活性ガスにより置換された状態で、キャビティ内に溶融金属を注入するとともに、キャビティ内の前記不活性ガスを溶融金属の射出圧力によって射出成形金型外に排出する工程と、を含むことを特徴とする。 【0010】請求項2に記載の金属の射出成形方法は、請求項1に記載の金属の射出成形方法において、キャビティに対して溶融金属の注入側及びその反対側に設けた経路を通じて、前記不活性ガスを供給及び排出することを特徴とする。 【0011】 【発明の実施の形態】図1は本実施の形態で用いる射出成形金型の構成を示す断面図である。なお、ここではマグネシウムを主成分とする合金(以下、マグネシウム合金と記す)の成形について説明する。 【0012】図1において、1はキャビティブロック,2はコアブロックであり、それらによりキャビティ3を形成する。また、キャビティブロック1,コアブロック2,スプルブッシュコア12,スプルブッシュ10により湯道(スプル4,ランナー5,サイドゲート6)及び湯溜まり7を形成し、キャビティ3に接続している。 【0013】また、キャビティブロック1,コアブロック2,スプルブッシュコア12,スプルブッシュ10は、それらにより形成される金型分割面により、スプル4に接続する空隙17が形成されるように構成されている。この空隙17には、チルベント16が接続している。チルベント16は、金型分割面に多くの凹凸を付けることにより形成されたエアベントであり、一般に大量ガス抜き法として知られたもので、流動抵抗の大きな金属溶湯を通過させず気体のみを通過させる機能を有している。チルベント16に対しては、本射出成形金型の外部に設けた窒素ガス供給源から減圧弁14,方向制御弁15を介して窒素を供給できるように、供給ラインを接続している。また、チルベント16には方向制御弁19を有するラインを接続しており、チルベント16を介した排気を可能としている。 【0014】さらに、湯溜まり7には、チルベント20(チルベント16と同様に、金型分割面に多くの凹凸を付けることにより形成されたエアベント)を接続して、それを介したガス抜きを可能としている。 【0015】キャビティブロック1,コアブロック2,スプルブッシュ10,スプルブッシュコア12はSKD-61(熱間ダイス鋼)で構成している。また、キャビティブロック1、コアブロック2のキャビティ形成面8,9、スプルブッシュ10の内面11,スプルブッシュコア12の外周面13などマグネシウムとの離型面には低摩擦係数の離型膜であるDLC膜をコーティングしている。そのコーティング膜は平均厚さ約1μmとしている。 【0016】DLC膜の製造には、公知の成膜方法、すなわち、1高周波あるいは直流電力によるグロー放電プラズマを用いたP-CVD(化学気相成長法)2固体炭素の昇華,析出を利用したイオンプレーティング等のPVD(物理的気相析出)等が使用できる。 【0017】なお、DLC膜と金型母材(SKD-61)との硬度差及び熱膨張係数の差によるDLC膜の剥離または膜の変形を防止するため、DLC膜の下地膜として、TiN,TiC等を設けても構わない。 【0018】以下に、以上のように構成した射出成形金型を用いた本発明の射出成形方法について説明する。 【0019】(ステップ1)まず、キャビティブロック1を備えた固定型31と可動型30を閉じた状態で、外部の窒素ガス供給源から減圧弁14,方向制御弁15を介して乾燥窒素ガスを金型内部に供給する。具体的には、減圧弁14により1~2kg/cm2に減圧した乾燥窒素ガスを、通電状態とした方向制御弁15から、チルベント16を経由し、金型分割面の空隙17を介してキャビティ3に導入する。このとき、方向制御弁は非通電の状態、すなわち閉じた状態としておく。 【0020】本ステップ1により、乾燥窒素ガスがキャビティ3に充満し始めると同時に、チルベント20を経由してキャビティ3(及びスプル4,ランナー5,サイドゲート6)内の大気を射出成形金型外に排出されることになり、キャビティ3(及びスプル4,ランナー5,サイドゲート6)内部を乾燥窒素ガスで置換することができる。 【0021】(ステップ2)ステップ1によりキャビティ3等の内部は乾燥窒素ガスが充填された状態となり、ここで、湯道を介して、キャビティ6内部にマグネシウム合金の溶湯を射出成形機から高速で注入し充填する。この際、方向制御弁19を通電状態(開いた状態)としておき、ステップ1において充填されていた乾燥窒素ガスを、マグネシウム合金の射出圧力により、チルベント20から及びチルベント16を経由して方向制御弁19から射出成形金型外に排出する。 【0022】なお、この際、乾燥窒素ガスを減圧弁14,方向制御弁15を介して射出成形金型内部に供給し続けていても構わない。但し、この場合、乾燥窒素ガスの供給圧力(減圧弁14の出口側)は、マグネシウム合金の射出圧力よりも小さくしておかなければならない。 【0023】(ステップ3)溶湯充填後、キャビティ3内の溶湯が固化したら、可動型30を開く。 【0024】(ステップ4)そして、例えば、押し出しピン(図示せず)により成形品をコアブロック2から離型させる。これにより、1ショットの成形が終了する。 【0025】以上のように、本発明の射出成形方法では、金型壁面にDLC膜をコーティングした射出成形金型を用い、溶湯の充填前にキャビティ内の雰囲気を窒素で置換するため、DLC膜の高温酸化によるグラファイト化を防止できる。また、成形品(本実施の形態ではマグネシウム合金)の酸化をも防止できる。 【0026】また、キャビティ3に対して溶融金属の注入側とその反対側に設けた経路を通じて、乾燥窒素ガスの供給,排気を行うため、キャビティ3内の雰囲気の置換を速やかに行うことができる。 【0027】なお、ここでは乾燥窒素ガスを用いたが、Arガス等の不活性ガスであればそれに代えて使用することができる。 【0028】 【発明の効果】本発明によれば、射出成形を酸素を含有しない雰囲気で行えるため、金型壁面にDLC膜をコーティングした場合において、その高温酸化によるグラファイト化を防止できる。よって、射出成形金型の耐久性を向上でき、メンテナンス性を高めることができる。 【0029】また、DLC膜を用いることが可能となるため、離型剤を使用する必要がなくなり、離型剤による成形品表面の湯皺等の表面欠陥をなくすことができ、また頻繁に必要であった金型のクリーニングが不必要になると共に、離型剤スプレー作業を省略できたことによる成形サイクルの短縮が実現できる。 【0030】また、成形品表面の酸化マグネシウムの生成を抑制することが可能となり、成形後の2次加工工数並びに塗装工数の削減が実現できる。 【0031】さらに、キャビティ3に対して溶融金属の注入側とその反対側に設けた経路を通じて、乾燥窒素ガスの供給,排気を行えば、キャビティ3内の雰囲気の置換を速やかに行うことができる