最新のiOSアプリストアランキングを見て、いくつかの音楽アプリに注目した。その全てには無料ダウンロードとストリーミングの記述がある。気になったのは現在1位の「Music FM」という名前のアプリである。

 

 

 気になった理由も、以前「Music FM」という人気の無料ダウンロードアプリがあったことは知っているが、著作権侵害のため、すでにアプリストアから姿を消したはずなのだ。興味津々に調べていくと、とんでもない事実が分かった。これはスマホアプリ史上最大の著作権侵害のニュースになるかもしれない。

 

http://www.imusics.net/

 

 周知のように、アップルミュージックでは有料ダウンロードのサービスを提供し、版権保護のために大金まで支払った。当時騒ぎになったテイラースウィフトの抗議により、アップルミュージックは3ヶ月無料登録期間中にも、ミュージシャンに著作権料を支払ったという話は有名である。

 

 このような無料ダウンロードアプリはアプリストアに堂々と載っていれば、僕のような一般ユーザーは「無料で音楽が聞ける」ことに必ず興味を持つ。AOS100のようなデータ検索サイトから調べると、2017年4月20日時点での総合ランキング50位以内には、無料ダウンロードできる音楽アプリは合計5個、10位以内には、2席を占めていた。音楽のカテゴリだけで見ると、合計13個ランクインしている。「無料ダウンロード」という言葉に誘惑されるのは当たり前のことだろう。

 

 

 面白いことに、「Music FM」をキーワードとして検索すると、無料ダウンロードアプリがいっぱい出てきた。ぱっと見たところ、これらのアプリはアイコンも名前も違うもののようだが、実はドメイン名検索サイトで調べると、すべてのアプリは「Music FM」と関係性があり、同じドメインで繋がっていることが分かる。

 

 上記から分かる様にこれらのアプリは、すべて「Music FM」の替え玉である。また、既にアプリストアから姿を消した初期の「Music FM」はインストールできないが、サブ的なアプリを利用してユーザーを続々と初期のアプリへ誘導している。

これらの替え玉アプリはどうやってアプリストアに存在し続けるのか。数日観察してみると、どうやらストアの審査時間を抜けて、深夜の監視の薄い時間にアップされているようだ。深夜三時にアプリストアにアップし、朝九時には降ろす巧みな手を使い、まるで幽霊のようだ。さらに、審査に引っかかる場合は、アプリ内部のダウンロード機能を一旦停止して、審査通過をしてからダウンロード機能を再開するような操作をしていると推測できる。

 驚くべきことに、以前から初期の「Music FM」アプリをインストール済みのユーザーは、今でもこのアプリを使うことができ、もちろん曲も無料ダウンロードできる。なぜそんなことが出来るかと言えば、アップル社が発行するアプリの署名証明書(アプリ自体のID)を廃止されなかったことが原因である。アプリストアから姿を消して以降も、ダウンロードされた曲は全て著作権料を払われていない。

 

 

 この「Music FM」が、一日のアクティブユーザー数は300万人と判断できる。これは少し考えても凄い数ということが分かる。「Music FM」アプリ内のルールによると、一日最大20曲を無料ダウンロードができる。一曲約1ドルとして計算すると、一日の平均ユーザー数は300万人であることから一か月使うと300万⋇30⋇20⋇1=約18億ドルの売上が発生する。これはスマホアプリ史上最大の著作権侵害問題である。またその金額の大きさも前代未聞である。

そして、以前と同じようにグーグルの広告サービスを利用して、広告収入がもらえるようになっている。日々広告の更新があり、停止する気配は一切ない。

 

 

 以前に初期の「Music FM」アプリが著作権侵害でネット上で非難され、アプリストアから姿を消したが、今もなおその侵害活動は水面下で続いている。これは確実に著作権を侵害する問題であるにもかかわらず続いているのだ。どうして責任者は今まで無事なのであろう。ドメイン名から調べると、中国で開設された会社であることが分かり、本社と責任者は北京のようだ。道理で日本国内で検索しても情報があまりなく、中国のaliyun (https://www.aliyun.com/)というドメイン情報を提供するWHIOSサービスを利用して、ようやく情報が見つかった。中国語の部分はよく分からないが、英語の登録情報から以下の事実が判明した。

 

https://whois.aliyun.com/whois/domain/imusics.net?spm=5176.8076989.339865.10.zA9JPq&file=imusics.net

 

 このような日本の法律違反の外国に拠点を置く会社に対してはどのように処置されるのであろうか。僕個人の意見としては、日本のアプリストアからは永遠に現れないようになってほしい。なぜなら、ダウンロードをして被害を受けるのはユーザー個人だけでなく、ミュージシャン、音楽会社、及び日本音楽著作権協会(JASRAC)などから大量の版権費用を盗んでいた。

 専門的なことは分からないが、一般ユーザーの視点から見ると、アップル社は以上の事実を知ればこのアプリをストアから無くすだけではなく、署名証明書も廃止するはずである。そして、グーグルも「Music FM」及びその関連アプリの広告サービスの提供を中止するはずだ。著作権を侵害されたミュージシャン、音楽会社、及び日本音楽著作権協会(JASRAC)から賠償金を要求されるのも合理的である。

 ミュージシャンが「Music FM」の違法行為を知れば容赦しないはずであり、このような違法アプリは日本から無くなって欲しい。